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まえがき
 大型船舶に使用される大人用及び小児用救命胴衣にたいしては、胴衣着用者が無意識で海上に浮遊していても、容易に呼吸できるよう、胴衣の浮遊・復正性能等が規則で決められ、人体被験者による性能評価試験が実施されている。
 今般、小型船舶に搭載される小型船舶用救命胴衣の中で、従来の小児用より小さい幼児用救命胴衣についても、復正機能等を備えたものが新たに規定された。
 幼児用救命胴衣の水中における性能を評価するには、その救命胴衣が対象とする幼児被験者による性能評価試験が必要であるが、水中飛び込み試験においては、被験者の安全上の問題、また水中での復正試験等においては、被験者が水に慣れていないため、自然・リラックス状態で試験することが困難で、正確な評価ができないなどの問題がある。
 このため、幼児被験者の代わりに幼児ダミーを使って、幼児用救命胴衣の性能を評価する方法を確立し、この種の救命胴衣を普及させる必要がある。
 
 本事業は、(社)日本船舶品質管理協会に学識経験者、その他関係者からなる「幼児用救命胴衣の浮遊性能評価に関する調査研究」委員会を設け、2年計画で実施することとなり、試験の実施等のため、作業部会を設けて検討を進めた。
 本年度は、2年計画の初年度として、つぎにより調査研究を実施した。
 救命胴衣の水中性能を評価する幼児ダミーは、各部位の寸法、形状、体積、質量、及び頭部等の動きをできるだけ人体に類似させる必要がある。そのため、幼児の人体計測値の文献調査と、幼児各部位の寸法、体積、全体の重心等の計測を実施し、幼児用標準ダミーの詳細仕様を決め、これにより、本年度は、まず、日本人の3〜4歳に相当する14.5kgの幼児ダミーを設計・試作することとした。
 幼児ダミーによる救命胴衣の評価方法を確立するため、幼児ダミーと被験者による試験を実施し、問題点、両試験結果の一致の程度等を調査することとした。また、試験には、意図的に性能の異なる幾つかの試験用胴衣を製作し、それぞれの胴衣に対して、被験者と幼児ダミーによる結果に同様の値、傾向が得られるかどうかを検討し、ダミーによる試験の有効性とそれによる性能評価方法(案)を検討した。
 
 本事業完了後には、幼児被験者を使うことなく、幼児ダミーにて、幼児用救命胴衣の性能を安全かつ正しく評価できるようになり、小型船舶用幼児用救命胴衣の普及が可能になると思われる。また、同時に、ISO 等、国際的要件に適合する幼児用救命胴衣の普及にも役立つと思われる。
 
 なお、本調査研究は、日本財団の助成事業で行われたものである。







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