テーマ2について
今回フィールドワークフェローシップで見せてもらった様々な国際協力の実際を整理する目的で、WHO、JICA、NGOそれぞれの長所と短所をまとめてみることにした。
主に以下の9つのポイントについて比較検討を行った。
1. |
プロジェクト立案の時、政治的影響を受けやすいか |
2. |
資金源 |
3. |
求められる専門性 |
4. |
社会に対する影響力、プロジェクト実行力の有無 |
5. |
オフィスワークが主体か、フィールドワークが主体か |
6. |
雇用形態 |
7. |
やりたいことを選択できるか |
[WHO]
1. |
政治的影響を多少受ける。スポンサーの意向も関わる |
2. |
各国の分担金、拠出金、世界銀行などからの拠出金 |
3. |
ほとんどが医者、修士以上の学位が必要 |
4. |
大きな立案ができるが、実行力はあまりなく結果がでるのに時間がかかる |
5. |
オフィスワークが主体 |
6. |
国際公務員、2年契約 |
7. |
専門家として契約するのであれぱ、やりたいことができるがそうでないプロジェクトを任されることもある。任されたプロジェクトに関しては好きなようにやれる場合が多い |
[JICA]
1. |
外交により決まる |
2. |
日本の税金 |
3. |
ある程度の専門性が求められる。医療以外の分野がある |
4. |
立案から実行までできる |
5. |
フィールドワークが主体 |
6. |
専門家はプロジェクトの期間、オフィスは終身雇用、青年海外協力隊は2年 |
7. |
プロジェクトに合わせての求人なので、ある程度の制限があるが、そのプロジェクトの中では自由にできる |
[NGO]
1. |
政治的影響を受けにくい。誰のどんな問題を解決したいのかを、自分たちで決められる |
2. |
寄付、会費など。日本では国から援助がある場合も。自分で集める必要あり |
3. |
プロジェクトによる |
4. |
大きなことではなくても現地に根付いて少しずつやっていく。政策提言も |
5. |
フィールドワークが主体 |
6. |
団体によって異なる。暮らすのに十分な給与を得られない場合もある |
7. |
選択の幅は大きいが、資金面での制約はある |
テーマ3について
フェローシップに参加し、総括ミーティングを経た今、どのように国際保健と関わって行きたいと考えているのかを、それぞれがまとめた。当日発表した順に記載する。
馬場
私は日本にいたときから興味のあった母子保健に関わりたい。国際保健に関わるとするならば、今回JICAの母子保健プロジェクトを見学してreproductive ageの女性や乳幼児の健康増進と死亡率の減少に貢献したいと思った。そのための手段というか働く場所はどこでもいいと思うが、責任者の裁量が一番大きいように感じられたWHOに一番魅力を感じている。
斎藤
WHOで働いてみたい。今回話を聞いていておもしろそうだと感じたし、ゼロから作りだすおもしろさを具体的にみることができた。大きいことができるというのも魅力だと思う。
長崎
私が国際保健に関心を持ったのは、いろいろな人と交流を持ちたいという気持ちからだ。 また、私は阪神大震災を経験したが、あの時には実にいろいろな人に助けてもらった記憶がある。もし困った人がいるのなら、そして、自分がその人の助けになることができるのならば、ぜひお役に立ちたい。同時に、「情けはひとのためならず」という考えを私は大切にしている。この考えは日本の経済は途上国が発展してのものという考えに通ずるかもしれない。
さて、私は阪神大震災の際にはボランティア活動を行ったが、その時には相手との関係を対等に保つことがとても難しいと思った。私が国際協力に関わる際には、『させてもらう』や『してあげる』といった立場ではなく、自然体、でありたいと思っている。その際に、ある程度の距離を保つことが私にとっては必要になる。そういった意味で、JICAのプロジェクトチームという立場は、私にとって、近すぎず、また、遠すぎず、で丁度よいものである。
JICAがとっている要請主義もとてもいいものだと思う。「人の幸せ」は他人がはかるものではなく、その人自身の問題である。もし自分が不幸と考えるなら援助を要請をするだろうし、援助を必要としないならば求めないだろう。
JICAは自助努力の支援を行っている。『もの』よりも『方法』を与えることは、長期的でいて効果的なやり方だと思う。中国には次のような格言があるという。『一日楽しむ人は花を活けよ、一年後を楽しむ人は花の種を植えよ、十年後を楽しむ人は木の苗を植えよ。百年後を楽しむ人は人を育てよ』。この、人を育てるという考えを私は大切にしたい。
また、WHOの仕事が大きなものを対象としているだけに効果が現れにくいことに対して、JICAの仕事は結果が見えやすい仕事のように思える。結果があると自分をふり返りやすい。税金を使っているJICAは納税者に説明する義務があり、これも自己を批判する助けになる。
以上のような理由で、現段階において、私はJICAで働きたいと考えている。
千田
フェローシップに参加してWHO、JICA、そしてNGOの活動を間近で見ることが出来ました。それらについてたくさんのことを学びましたが、それでは自分のやりたいことは何だろう?となると、基本的にフェローシップに参加する前と、ほとんど変わっていません。
その土地に住み着き、その土地の人たちと一緒に仲良く暮らしているうちに、たまたま病人や怪我人がでたら「は〜い、私、医者の技術を持っているから、あなたの病気(怪我)を治すことができますよ!」と、ちょこちょこっとお手伝いするのが、私の夢です。
でも、その土地に住む人たちが自力で何とかしていける状態に持っていくのが本当の理想的なかたちだと思うので、そのためのお手伝いが出来るのであれば、どのような組織でもいいから参加したいと思います。
WHO・JICA・NGOの中から無理やり選ぶのであれば、ターラック州でのプロジェクトの素晴らしさに惹かれたことや、資金面を考えてJICAかな、と思います。でも、自分で組織を一から作りあげていく方がやりやすいかも。あれ、じゃあNGO?
高田
フィールドワークを経験した後も、国際保健の分野で、女性をエンパワメントする仕事がしたいという気持ちに変化はなかった。働く組織としては、専門性を持って働きたいという希望があるので、JICAはそれが可能なことがわかった。しかし、実際にどの組織で働きたいという明確な答えは出なかった。
卒業までには、フィールドワークで得た経験と知識を生かして、答えが出せるように、これからも国際保健について学んでいきたい。
瀧村
私が国際保健に興味を持つ理由は、現在豊かになった日本が、発展中の国を援助するのは「光栄な義務」であるという考えに共感しているからだ。さて、日本人の医師としての国際保健へのかかわり方には様々な形態があると思うが、中でも私はWHOに一番の関心を持っている。国際保健の分野に限らないが、国際機関が途上国に対して「指導」や「介入」をする場合、そこには「指導」する側の価値観が影に日向に影響してくると思う。私は、WHOも含め現在の国際機関は欧米系の価値観で動かされることが多いと感じているので、アジア的価値観の存在感を少しでも増やすために、自分もWHOにかかわることができたらと願っている。
鳥羽
基本的には作業療法という仕事をして、人々のQOL(生活の質)を向上させる仕事をするつもり。国際保健については、海外青年協力隊や専門家として発展途上国に派遣されて、活動したいと思う。将来は会社を起こして、スポンサーとしてNGOや、国際的に活動する団体を応援したいとも思う。しかし、まずは生活基盤がないといけないとも思う。
大森
僕は地域医療と呼ばれる分野がおもしろそうだと思っている。今回見た中では、地域に根ざして働いているmidwifeの仕事をいいなあ、と思った。地域医療に携わる一つの方法として、保健所長という仕事があると思う。それは外国でも日本でも同じ。日本の方が自分らしい気がするのと、やっぱり生活習慣や地域の歴史を理解しながら地域医療を展開できるのは日本だと思うので、今は日本で保健所長として地域医療に携わるのが自分に合っているんじゃないかなと思っている。
井上
私はこのフエローシップに参加するまで、この分野にはあまり触れたことがなく、全てが新鮮で、魅力的に感じた。公衆衛生、国際保健、というのは、こんなことができるんだと初めて知ったように思う。かといって、臨床医として日本で働く、ということを選択肢から外したわけでもない。結論を言うと、どういう風にしたいか、まだ分らない。今回のフェローの経験を一つの糧として、これからもっと自分探しをしたいと思う。
河合
私は以前はNGOならば援助国側の政策に振り回されず、JICAよりも良いかなと思っていた。だが今回JICAのプログラムを見て、専門の知識を用いて効果的なプロジェクトを行っていると感じイメージがアップした。そこで、私が実際に働くことを考えたときには、まずJICAで実地的にフィールドワークを学びたいと思う。資金力も規模も大きく、自分でプロジェクトを進めながら被援助者との関係から、日本政府への働きかけなど様々なことを学べると思う。
その後、世界への働きかけに関わりたいと考えているのでWHOで仕事をしたい。より広範囲への働きかけと、より大きな責任が伴うと思う。その役を果たすには、援助の現場経験が豊富であることや、様々なことに対する影響を熟考できる人になっている必要があると思う。
また、この他に私にとって国際保健への魅力的な関わり方というのは、臨床医として、つまり医学の専門家として関わるというものだ。WHOの高島先生もこれからはそういった医者のニーズが増えるとおっしゃっていた。10年ほど臨床医として、しっかりと勤め、日本においてもその道の専門家になってから世界の舞台へ出向いてみたいとも考えている。
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