日本財団 図書館


8月16日(金)
本日のスケジュール・内容
1)Angelesへ出発
2)EPZA Feeding Activity見学
3)LUZNNET and Nutrilinc
4)Cuayan Barangay Health Center訪問
 
1)Angelesへ出発
 朝7時にホテルを出発。小雨の降る中、車通りの多い道を村に向かった。道路はよく舗装されているが、中央分離帯がないのがやや不安になる。道路わきの草むらでは牛が草を食んでおり、トウモロコシ畑には帽子を被ったおじいさんの姿が見える。6日目にしてようやく、来る前に持っていた自分のイメージに近いフィリピンの様子をみることができた。7時20分頃ハイスクールの前を通ると、そこにはもう沢山の制服姿が見えた。どうやらフィリピンの朝は早いようだ。
 
2)EPZA Feeding Activity見学
 私たちが訪問したのはPampanga Provinceの1つのbarangayのhealth stationである。汚れてはいるが、コンクリート建てのしっかりとした建物には、既に多くの母親や子供たちが玄関にいた。中に入っていくと、何やら美味しそうな匂いがする。そこには、スープを入れた大きな鍋が、炭火で炊かれていた。2人の女性がかきまぜているそのスープには、鶏肉、玉葱、人参、キャベツ、ヌードル、牛乳などが入っているらしい。これを集まってくる子供たちに与えるのが、今回のプロジェクトである。
 
[施設]
Barangay Health Center(このbarangayは7つのdistrictから成る)
 1990年にMPC(Mount Pinatubo Commission=government office)によって建てられた。1994年に病院としての機能を開始したときにはdoctor、nurse、midwifeがいた。1998年からlocal governmentの管轄下に入ってからはdoctorはいなくなり、midwifeのみとなった。doctors stationやdentist roomなど、現在は使われていない部屋が多くある。<スタッフ>17人(rural health midwife:1、barangay service point officer:1、BNS:2、barangay health worker:6、supplementally feeding volunteer(SFV):7)
 
[施設の役割]
(1)病院 (2)子供への栄養供与 (3)母親への栄養教育
(1) 当施設にはdoctorは月に1回しか来ないので、基本的には近くのrural health centerに患者を紹介する(そこにはdoctor、dentist、nurseがいる)。薬は不十分。診察代は無料。
(2) 毎週月曜〜金曜に栄養不良の子供たちに食事(1日1食)を与える。メニューは様々。材料はSWDO(Social Welfare Development Organization=city government)やNutrilinc(Nutrition and Livelihood Resource Center, Inc.=NGO)からの提供による。
(3) 週1回、1つのdistrictに出掛けて行う。教育内容は多岐にわたり、栄養、歯磨き、入浴、育児などに加え、下痢、寄生虫などに関するものまである。カラーの紙芝居を用いて行う。
 
[施設のカバー範囲]
 12,513人(2,034家族) ※うち6才以下の子供は、3,000人
 
[プロジェクト]
 家族の分布は2001年に調べられた。栄養不良の子供たちは、1月〜3月の間、月1回1つのdistrictに2人のスタッフ(BNSとSFV)が尋ねていき、家々を回ることによって探される。栄養失調の程度は1degree=mild、2=moderate、3=severeに分けられる。現時点では90人の栄養失調の子供(6才以下)がおり、うち5人はsevereの程度である。見つけられた子供たちは前述の方法によって栄養を与えられ、normalな状態に戻ってから、さらに1ヶ月間栄養供与を受け、卒業となる。障害を持った子供たちの所にはnurseが訪ねて行き、生活指導を行う。
 この日はざっと見渡すと40人〜50人程の子供たちがいるように見えた。来ていない子供たちは病気の子供たちだと説明してもらったが、雨が降っていることも影響しているらしい。大抵の母親は2人くらいの子供を連れてきていたが、中に姉と思しき子供が兄弟を連れてきているようなケースもあった。足元は靴ではなくサンダルが主流だった。今まで見た子供や母親たちよりも切羽詰った雰囲気を感じたのは気のせいだろうか。
 
[今後の展望]
 SWDOはこの栄養供与を今後も行う予定のようである。Nutrilincは2001年10月から2004年3月までの期間、このbarangayでの活動を行う。Nutrilincの目的としては、「栄養不良からの立ち直りを評価する」ことのようだ。目につく問題点としては、薬が足りないことである。これは、政府からの供与のみでは不十分だということである。15日に見学したようなbarangayごとの薬ファンドのシステムの導入などの対策が必要だろう。
 母親が太っているという指摘に対しては、母親が怠け者であるという答えがあった。また、日本でもこのような母親同士会合の機会が持たれれば、母親のノイローゼ解消などの効果があるという指摘もあった(日本でも実際、保健所などで行われているらしいが)。
(担当:安藤 俊太郎)
 
栄養プログラムで食事を摂る子供たち
診察の様子
母親への指導
 
3)LUZNNET and Nutrilinc
 LUZNNETとNutrilincのスタッフの皆さんと一緒に昼食をとった後、両代表による組織とその活動についての説明があった。
 
LUZNNET(Luzon Non-Governmental Organization Network)
 LUZNNETについて、代表のMr.Elmer A. Palacioによる説明が行なわれた。LUZNNETはルソン島で活動していた15のNGOによって2000年3月21日に設立されたNGOである。”21世紀における生活の質の向上を目指した、地域住民の力づけ”をビジョンとして掲げ、Region3を活動地域とし、地域の健康発展プロジェクトを行なっている。
 LUZNNETの果たす役割は、(1)持続可能な地域発展 (2)参加しているNGO間での専門技術やサービスの共有 (3)他のNGO、政府、個人組織との地域・国家・国際レベルでの連携、である。最終的な目標を(1)持続可能な地域発展プロジェクトの運営におけるNGOの能力向上 (2)計画の発展と運営の分野における専門家要員の育成 (3)参加NGO間及び他の組織とのネットワーク作りによる効果的なコミュニケーション経路の形成 (4)持続可能な生活と地域に適切な環境の継続的な主張として活動を続けている。
 
Nutrilinc
 Nutrilincについて、代表のDr. Rosemarie Herreraによる説明が行なわれた。
 Nutrilincは1995年に設立されたNGOで、barangay(村)レベルでの栄養に関する幅広い健康促進のための活動を行なっている。
 具体的な例として、以下の3つが挙げられた。
(1)LUZNNETにおけるコーディネーターとしての役割
 LUZNNETは、まだ新しい組織なので、プロジェクトの実行やNGO間のコミュニケーションにおいて、Nutrilincがコーディネーターとして支援している。
(2)barangayにおける地域のパートナーシップ作り
 地域でプロジェクトを実行する時、いつも問題になるのは十分な予算がないことである。そこでNutrilincは、地方自治体の代表者やロータリークラブのような市民組織の代表を招いて、プロジェクトの内容を説明し、資金援助を取りつけている。
(3)健康・栄養委員会の形成
 政府の政策として、provinceからbarangayまで、それぞれが健康・栄養委員会を組織し、健康と栄養問題の改善のための政策を実施することになっている。しかし、barangayレベルでは書類上委員会があるだけで、実質的に運営されていないことが多い。そこでNutrilincのスタッフが委員たちに委員会の意義を説明し、プロジェクトの実施方法や予算の分配方法をトレーニングし、地域独自の発展のプランを実行できるように支援している。
 
−感想−
 LUZNNETやNutrilincの職員には、JICAやAMDAの人材育成トレーニングを受けた方がおり、日本のソフト面での国際協力も実を結んでいると感じた。
 
4)Cuayan Barangay Health Center訪問
 午後2時頃、Pampanga Province Angel City Cuayan BarangayにあるCuayan Barangay Health Centerを訪ねた。ここは、LUZNNETとNutrilincの活動施設のひとつでありNutrilincは5年前からここでの活動を行っている。
 以前はこの地域にごみ捨て場があり貧しい地域であったが、3年前にごみ捨て場を3km遠い場所に移した。このヘルスセンターでは、以下の三つの栄養プログラムが行なわれていた。
1. 低体重児の母親に対する栄養教室
週7回の教室が開かれ、平均30人の母親が参加している。ヘルスセンターで作成した小児に適した料理のレシピを母親たちに配布している。
2. ヘルスワーカーに対する教育
市の保健局から栄養士を招いて行なわれている。
3. 栄養補助給食の実施
月〜金曜日の週5日、3ヶ月間に亘って1日1回の栄養補助給食を低体重児に対して提供している。給食の前には、母親に対する栄養教育が行なわれている。
 小児に対して、体重測定を20日に1回行い、低体重児を調査している。栄養補助給食は、収穫期前の5〜8月の時期に行なわれている。収穫期は食べ物があるので栄養失調になりにくいが、収穫期前は食べ物が絶対的に不足して小児にまで回らないため、収穫期以外の時期に実施することが大切であるとのことだった。小児の栄養失調の理由は、母親が子供に必要な栄養や調理法を考えず、ある食べ物を何でも与えているためだと説明された。
 これらはLUZNNETのプロジェクトで、NutrilincがコーディネートをしJICAの援助が行なわれていた。
 また、SAMAKAという地域住民が組織したヘルスケアのためのグループがあり、ヘルスセンターのパートナーとして活動していた。
 
−感想−
 母親に対する栄養教室や小児に適した料理のレシピの作成は、栄養学の知識に基づいたものではなく、これまでの活動の中で得た経験的な知識によって作成されているとのことだった。このように情報や物質といった様々な面において、フィリピンの地方地域ではヘルスケア・サービスが十分に行き渡っていないことがわかった。その原因は、公的機関の機能が不十分なため政策が地方まで徹底されていないことや、資金不足のため地方にお金が回ってこないことが考えられる。現在、地方分権を進めているフィリピンにおいては、この傾向は更に強まっていくと考えられ、LUZNNETやNutrilincといったNGOの活動やSAMAKAや前出のbotika binhiのような地域住民自身による健康促進活動が、地方地域の健康水準の向上において、益々重要な役割を担うようになると思われた。
(担当:高田幸子)
 
8月16日 今日のひとこと
伊藤:このホテル、設備充実してます。プールでは思わずリゾート気分に浸ったりして。終わりも近づいてきた。まだまだ語り足らないなあ。
安藤:プールで泳いだ。とても楽しかった1日。
大森:Babie's lecture、とっても勉強になったよ。
千田:1+1=∞。
瀧村:蒸し暑さで多少ばて気味でしたが、おばさまたちに歓迎していただき復活。夜更けまで続くミーティング・・・女性の強さに脱帽。
長崎:訪問の際に自分たちを紹介する役をリーダーだけでなく、皆で持ちまわりにすればよかった。
江崎:LUZNNETの理念は素晴らしいと思った。
河合:健康教育紙芝居はなかなかおもしろかった。おばちゃんたちからいろいろ教えてもらえて良かった。
馬場:夜更けにいい話をきくことができました。
井上:現地の人たちの活動のネットワーク作りや立案実行力に驚き、尊敬した。おばさまたちは誇りをもって仕事していて、とても素敵だった。
斎藤:ゆっくりと過ごせた1日であった
須貝:栄養失調のこどもたちは、にこにこはしゃいでいたけれど、抱いてみたらふわっと軽くてはっとした。
高田:現地の人たち自身による活動のネットワークが出来ているところが、素晴らしい。
鳥羽:EPZAでの子供たちの可愛いこと、そのまま健やかに育ってね〜。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION