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日中笹川医学奨学金制度
 この制度は、日中両国民の友好と協力を医学分野で推進させようと1996年に設立されました。当時の当財団会長笹川良一氏、日中医学協会理事長石館守三博士、中国衛生部副部長陳敏章氏の三者の強い思いが結実したもので、20年計画で中国の保健医療の向上のために努力する専門家2000名をわが国に招聘し、日本の医療機関等でそれぞれ研鑚を積んでもらおうというものです。
 
 この共同事業は、中国衛生部が来日研究生の選考をし、(財)日中医学協会が現地における日本語研修時の講師派遣および日本での研究先の選定など研究者の来日から帰国までの研究・生活に関する受け入れ業務を行ない、そしてそれらの一切の資金を当財団が日本財団の助成金を受けて提供する、という役割で実行されています。
 
 スタート以来この制度には、来日前の語学研修(日本語・英語)、特別研究者招聰制度(優秀な成果をあげた研究生の再招聘制度)、同窓会組織(「同学会」と呼ばれ、北京に事務所を置き帰国研究者・来日研究者の情報交換を行なう新聞の発行や会員によるボランティア医療活動などを行なっている)等が追加され、年々その内容も充実してきています。
 
 これまで1385名の研究生が来日しましたが、その内訳は男性65%、女性35%、平均年齢は33.3歳で、15年間では、女性研究者の増加傾向と若年化がみられます。分野別では医学が1152名で圧倒的多数を占め、薬学105名、歯学59名、看護学44名、その他医学医療分野における管理・出版・教育関係の研究生が25名となっています。受け入れ機関別では国立の大学・研究機関781名、私立の大学・研究機関462名、公立の大学・研究機関142名で、個別機関でみますと、東京大学の80名を筆頭に、京都大学57名、東北大学53名、大阪大学48名、東京女子医科大学35名の順になっています。(以上2002年4月現在)
 
1986年8月、合意書に署名した笹川良一氏(中央)、石館守三博士(左)、陳敏章氏
 
 また、中国側では北京市の他、東北地区の遼寧省や吉林省からの派遣生が多いものの、中国全土の省・自治区から来日しており、日本側の受け入れ地も北海道から沖縄まで全都道府県にわたっており、文字通リ日中両国の国を挙げての大事業となりました。
 
 研究生のほとんどは日本滞在中に自分の研究成果を学会や学術専門誌を通して発表する機会を得ています。また、研究生は帰国後、中国の各医療機関で活躍していますが、日本での研究が契機となって、日本や欧米の学位を取得する人や、中国医学界において教授など指導的立場に立つ人も多くでてきています。このように、この奨学金制度は、医療水準の向上を通じて知日派の医師や医学・医療のリーダーを育成し、この分野における日中の人的・学術的交流の基礎を築く事業としても重要な意味をもつといえるでしょう。
 
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