(4)需要予測モデル
a)本調査モデルの全体構造
本調査における需要予測モデルは四段階推定法をベースとするモデル構造である。本モデルは、各段階における効用値を上位の段階における説明変数とすることで、路線別交通量の予測に用いられる説明変数が、交通手段別交通量、分布交通量、発生集中交通量の予測にフィードバックされるモデル構造となっている。したがって、鉄道や道路ネットワークの変更などの交通サービス条件が交通手段・目的地選択・発生交通の各段階において整合の取れた形で反映出来るモデルと言える。
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表 10−3−3 需要予測モデルの全体構造モデル内容
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モデル内容 |
《対象交通量》 |
◇全目的(通勤・通学・自由・業務・帰宅) |
《生成交通量》
《発生・集中交通量》 |
〔考え方〕 |
◇圏域全体の生成交通量を算出(原単位法
◇発生交通量はゾーン別原単位と分布交通量から定まる効用値により推計 |
〔入力データ〕 |
◇2000年パーソントリップ |
《分布交通量》 |
〔考え方〕 |
◇目的地選択モデル |
〔入力データ〕 |
◇2000年パーソントリップ
◇2000年国勢調査 |
《交通機関別交通量》 |
〔考え方〕 |
◇徒歩・二輪→距離変数の関数式から推計
◇自動車・マストラ(→鉄道・バス)の入れ子構造のネスティッドロジットモデルによる推計 |
〔入力データ〕 |
◇2000年パーソントリップ |
〔説明変数〕 |
◇性・年齢・自動車保有台数・65歳以上ダミー・時間・費用・バス停端末時間および、鉄道については、経路選択モデルにおける合成効用値 |
《鉄道経路別交通量》 |
〔考え方〕 |
◇OD間の選択可能駅の組合せによる経路のうち効用値の高い上位10経路について経路選択ロジットモデルによる配分 |
〔入力データ〕 |
◇2000年パーソントリップ |
〔説明変数〕 |
◇所要時間・運賃・乗換抵抗指標・ピーク時運行間隔・終日運行間隔・始発駅ダミー・端末所要時間・端末費用・移動円滑化指標(5m以上の段差・ESEVの設置) |
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b)需要予測結果
■ 近畿2府4県の人口は、2005年をピークに減少を始める。また、高齢者層の増加及び生産年齢人口の減少に伴い、就業人口は大きく減少する。
■ 就学人口は少子化に伴い急激な減少となる。
■ 生成交通量については、自由目的は横這い、通勤・通学登校・業務目的で大きく減少する。
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c)ネットワーク整備による効果
表 10−3−4 近畿圏における将来手段別需要量の動向(代表交通手段による集計)
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現況
(2000年) |
(1)
事業中のみ |
(2)
A |
(3)
A+B |
(4)
A+B+C |
(5)
A+B+C+D |
交通量千人/日 |
鉄道 |
8089 |
7596 |
7671 |
7743 |
7788 |
7803 |
バス |
1256 |
1057 |
1033 |
1009 |
1002 |
1000 |
自動車 |
15624 |
15486 |
15459 |
15438 |
15416 |
15406 |
徒歩等 |
19340 |
18212 |
18188 |
18161 |
18144 |
18141 |
手段計 |
44309 |
42351 |
42351 |
42351 |
42351 |
42351 |
分担率 |
鉄道 |
18.3% |
17.9% |
18.1% |
18.3% |
18.4% |
18.4% |
バス |
2.8% |
2.5% |
2.4% |
2.4% |
2.4% |
2.4% |
自動車 |
35.3% |
36.6% |
36.5% |
36.5% |
36.4% |
36.4% |
徒歩等 |
43.6% |
43.0% |
42.9% |
42.9% |
42.8% |
42.8% |
手段計 |
100.0% |
100.0 |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
交通量現況比 |
鉄道 |
|
93.9% |
94.8% |
95.7% |
96.3% |
96.5% |
バス |
|
84.2% |
82.3% |
80.4% |
79.8% |
79.6% |
自動車 |
|
99.1% |
98.9% |
98.8% |
98.7% |
98.6% |
徒歩等 |
|
94.2% |
94.0% |
93.9% |
93.8% |
93.8% |
手段計 |
|
95.6% |
95.6% |
95.6% |
95.6% |
95.6% |
交通量(1)との比 |
鉄道 |
|
|
101.0% |
101.9% |
102.5% |
102.7% |
バス |
|
|
97.7% |
95.4% |
94.8% |
94.6% |
自動車 |
|
|
99.8% |
99.7% |
99.6% |
99.5% |
徒歩等 |
|
|
99.9% |
99.7% |
99.6% |
99.6% |
手段計 |
|
|
100.0% |
100.0% |
100.0% |
100.0% |
路線長(km) |
2227 |
2302 |
2330 |
2390 |
2527 |
2586 |
現況からの増 |
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75 |
103 |
163 |
300 |
359 |
(1)からの増 |
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29 |
88 |
226 |
284 |
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※ |
ケースA〜Dは、個別路線のそれぞれについて、政策目標に照らして設定された5つの指標に基づいて分類しグループ化したものである |
■ 段階的なネットワーク化によりアクセス時間及び乗換回数が大幅に減少し、鉄道分担率も増加している。また、利用者便益も増加することとなる。
■ 自動車交通から鉄道への交通手段転換が進み、NOxやCO2の削減を通じた大気環境改善が図られる。
表 10−3−5 提案路線整備による定量的効果
(基本ケースにおける指標を100とした比)
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表 10−3−6 提案路線整備による定量的効果
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ケース(2)
A整備 |
ケース(3)
A+B整備 |
ケース(4)
A+B+C整備 |
ケース(5)
A〜D整備 |
利用者便益(億円/年) |
885 |
2,083 |
2,988 |
3,271 |
環境改善便益(NOx,C02削減)(百万円/年) |
251 |
420 |
580 |
643 |
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d)既存ストック活用による政策シミュレーション結果
新線整備と同様に、ダイヤ調整や急行運転化等既存ストックの有効活用による乗り継ぎ利便性向上等シームレス化や高速化等の施策実施により、相応の利用者便益の発生が確認された。
表 10−3−7 分析対象施策とネットワークの組合せ
施策 |
分析対象施策 |
ネットワーク |
事業中 |
A |
A+B |
A+B+C |
A〜D |
I |
・ダイヤ調整
・乗り継ぎ連絡通路等設置
・バリアフリー化 |
◎ |
◎ |
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II |
・急行運転化
・優等列車停車
・貨物線旅客化 |
◎ |
◎ |
◎ |
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III |
・既設路線延伸
・路線再編
・相互直通運転化 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
IV |
・乗り継ぎ運賃制度拡充 |
◎ |
◎ |
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V |
・速度向上(主要路線) |
◎ |
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※◎印の箇所が今回検討を行った組合せ |
(5)近畿圏における高速鉄道を中心とする新たな交通ネットワークのあり方
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図 10−3−15 |
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公共交通の利用促進意義の基本的考え方 |
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(6)高速鉄道を中心とする新たな公共交通を目指して
a)計画の具体化に向けての課題
近畿圏の鉄道ネットワークは、輸送需要増大に伴う混雑緩和や速達性向上等輸送力増強による利便性向上や都市機能強化等に大きな役割を果たしてきたが、経済の低成長・人口減少時代を間近に控え、新たな投資は困難な状況となる一方、高齢化の進展に伴うバリアフリー化の要請や地球環境問題への関心が高まりをみせるなど、交通を取り巻く社会・経済状況は構造的・質的に大きく変容している。
このような中で、今後は、近畿圏の経済活力向上に資する路線整備に重点を置く中で、整備・運営主体のあり方や上下分離方式によるインフラ公有化も視野に入れた検討が必要である。このためには、今後の社会・経済構造を見据えつつ、国民的合意に基づく総合的な交通体系ビジョンを早期に策定することが必要である。
b)関係機関が取り組むべき方向
近畿圏の公共交通に特に求められる「シームレス化の実現」のため、関係機関においては、今後とも上下分離方式等による路線延伸や他モードとの連携強化等を引き続き促進するとともに、合わせて「ICカード」の早期導入及び利用者利便の向上に繋げるための効果的活用方策の早急確立を図ることが必要である。
国及び地方公共団体の財政状況や各交通事業者の経営環境は厳しい現状にあるが、公共交通の利便性向上策の実現が地球環境問題の改善や地域経済の発展に繋がると確信される
そのため、国及び地方自治体は、補助制度の拡充等の公的支援、各交通事業者については、運営コストの削減や既存ストックの高度利用や輸送サービスの競争を通じた新たな利便性向上策の開拓に鋭意努力することが重要である。
また、輸送需要の顕在化等のためには、徹底した利用者主体の視点に立った良質な輸送サービスを提供することが重要であり、国、地方自治体、各交通事業者は、情報発信等による利用環境の整備、最小のインフラ整備で最大の利用者利便を挙げ得るような事業性の高い様々な利用促進方策について、引き続いて関係者が手を携え、意欲的に取り組むことが必要である。
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