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海をひらくI
人類は、これまで快適な生活を営むために、さまざまな分野において近代化を進め、地球上の資源をその目的のために利用してきました。しかし、この生活を支えてきた石炭や石油などの資源をはじめ、広い土地を必要とする飛行場などの大きな物を建てる場所までもが無くなりつつあります。そこで新しく注目され始めたのが「海」の利用です。その用途は、エネルギー源の開発や魚の養殖、飛行場の建設などさまざまな分野におよんでいます。
1. 海洋発電の展望
さて今日では、新しいエネルギー源として、世界各国で海洋発電の研究が進められています。海洋エネルギーによる発電システムで利用されるのは、波や潮汐(ちょうせき)・海洋の表面と深海の温度差などがありますが、一番簡単なのが波を利用した波力発電(はりょくはつでん)システムで、実用化に向けて実験が行われています。現在日本では、マイティーホエールという装置を使って実験を行っています。
マイティーホエール図
全長 |
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50.0m |
幅 |
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30.0m |
喫水(きっすい) |
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8.0m |
排水量 |
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4,380トン |
最大発電量 |
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110キロワット |
2. マイティーホエール
マイティーホエールとは、科学技術庁と海洋科学技術センターが開発した波力発電実験装置(建造:石川島播磨重工業(株)相生工場)のことで、全長50メートル・幅30メートル・排水量4,380トンの鋼鉄製の「クジラ」の型をしています。この波力発電装置は、十年以上に渡り研究されてきた波の力を利用して電気を生み出すクジラです。まだ実用化はされていませんが、将来有望とされている新システムといえるでしょう。波の力で発生した空気圧でタービンを回し発電するシステムで、生み出される電力は、最大時で110キロワット、凪(なぎ)の時も含めて計算すると年間平均で約14キロワットと一般家庭4〜5軒分の電力程度と、驚くほどの少量ですが、それでも従来のシステムに比べると波のエネルギーを電力に転換する効率は3倍以上です。また、発電能力だけでなく、消波堤(しょうはてい)や圧縮機を利用した水質浄化機能(すいしつじょうかきのう)もあわせ持っています。
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3. 新しい水面の利用
海に四方を囲まれた日本には、200海里水域面積(かいりすいいきめんせき)が約451万平方キロメートルあります。これは日本の陸地総面積の約12倍もの広さです。さらに日本では、海岸線が長いこと、水深20メートル以下の海域が多いことなどから、江戸時代から埋め立てが行われてきました。近代に入り工業化が一段と進み、埋め立ての速度は急激に加速しました。そして今世紀末には、飽和状態(ほうわじょうたい)になることが予想されています。現在埋め立てに代わる新しい海洋の利用方法として、海面を利用する浮体構造物(ふたいこうぞうぶつ)・メガフロートが注目をあびています。将来的にはメガフロートは空港やヘリポート・避難所・レジャー観光施設・エネルギー関連施設など幅広い分野での利用が期待されています。
4. メガフロート
メガフロートは、ギリシャ語で「巨大」という意味のMEGAと、英語の「浮体」という意味のFLAOTを組み合わせた造語で、巨大浮体構造物という意味です。実は、メガフロートは小さな(といっても、長さ100メートル×幅20メートル×深さ2メートルの大きな箱です。)浮体ユニットと呼ばれる部品をいくつもつなぎ合わせて、ひとつの大きなフロートになっています。そして、現在実験で使われている浮体構造物・メガフロートは、長さ300メートル、幅60メートル、深さ2メートルもの大きさになっていて、その重さはなんと8,000トンもあります。なぜこの様な鉄でできた大きな箱が海の上に浮かび、その上に空港やゴミ処理場などの大きな建物を乗せられるのでしょうか。この一つ一つの浮体ユニットの中は空洞になっていて、そこに空気がたくさんあるので浮力が働くためです。
それでは、浮体構造物は埋め立てなどに比べて生態系への影響が少ないとか、海の潮の流れをじゃましないというようなことで期待されていますが、この様な大きな鉄の箱を海に浮かべても、鉄が溶けだしたりして生物への影響は出ないのでしょうか。これには浮体ユニットにチタンクラッド鋼薄板を採用することで対応しています。チタンは飛行機や潜水調査船(せんすいちょうさせん)にも使われる程丈夫で、海水を使った発電所や海水を真水に変えるプラントでも使われていますが腐食(ふしょく)は全く認められていません。現在、神奈川県横須賀市沖の海上で、耐久性や潮の流れ・生物系などへの影響など、さまざまな計測・実験が行われています。
また、メガフロートの特徴として、(1)水深に関係なく海域を利用できる、(2)地震による影響がほとんどない、(3)地盤沈下による影響を生じない、(4)拡張や移動が容易であるなどがあげられます。陸上からの交通手段としては、船舶やヘリコプターの利用の他橋や道路、海中トンネルなどが考えられています。
洋上接合実験(9個の浮体ユニットが接合された様子)
メガフロート空港予想図 写真提供:メガフロート技術研究組合
資料提供:メガフロート技術研究組合
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