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No.5/36
船のしくみII
1. 浮力(ふりょく)の話
 鋼鉄(こうてつ)でてきた巨大な船が水に浮く!ふしぎですね。
 これは、「浮力(ふりょく)」という力がはたらいて船を持ち上げているからです。「浮力」についてお話しましょう。
 ここに、同じ重さの鉄のかたまりと薄く延ばして船のかたちをした器(うつわ)にしたものがあります。2つは同じ重さですが、水槽(すいそう)の中に入れると・・・、鉄のかたまりは沈んで、船の形をした器は水に浮きます。〈図1〉
 ここで、鉄のかたまりと器を水に入れる前と後の、水槽の水面の位置に注目してください。水面が少し上昇したのが分かると思います。この少し高くなった水は、鉄のかたまりや器が押しのけた水と同じ量になり、器を押し上げる力、つまり「浮力」の元(もと)となるのです。〈図2〉
 じつは、「浮力」は小さな鉄のかたまりにも働いています。ただ、押しのける水の量が少ないため、上向きに働く「浮力」の力が小さく、浮くことはできないのです。
 こうした「浮力」の原理は、今から2300年以上前のギリシヤ人アルキメデスによって発見されたとされ「アルキメデスの原理」と呼ばれています。
 このように、船は鋼鉄でてきていても、中が空になった巨大な器の形をしていて、その体積もとても大きいので、水に浮くだけでなく多くの荷物を積んでも十分な浮力が働いて、浮いていることができるというわけです。
 
原油を満載した巨大オイルタンカー(白い線が水の中に入っている、船体です。)
 
(拡大画面:39KB)
 
2. 船の安定と復元力(ふくげんりょく)
 水に浮かんでいる船が安定していることは、船にとって必要な性能です。船は普通、まっすぐに浮いていますが、これを少しでも傾けると、まっすぐな状態にもどろうとする力が起こる性質があります。この性質を復元性といい、その復元する力を復元力といいます。船をさらに傾けて、ある角度まで傾けると復元力がなくなり、ひっくりかえるようになります。この状態の角度を復元力の限度といい、この限度の大きい船ほどひっくりかえりにくいということになります。復元力の限度を大きくするには、船の重心を低くすることが必要です。しかし復元力の限度をあまり大きくすると、船はすこし傾いただけですぐもどろうとする力が働くことになり、乗り心地が悪くなり、積荷の荷くずれも心配になります。
 
復元力の原理
 
3. 船の揺れ(ゆれ)と防止装置(ぼうしそうち)
 船の揺れには色々な種類がありますが、船が左右にかたむく“横揺れ”をローリングといい、波の上で最も起こりやすい揺れです。また、船首と船尾がシーソのように上がったり下がったりする縦揺れをピッチングといいます。
 現代の船には、船の揺れを防止する装置として、これまで使われてきたビルジキールの他にローリング防止機能としてアンチローリングタンクやフィンスタビライザーが取り付けられています。この二つのうち主に客船に使用されているのがフィンスタビライザーで、発明は日本の元良信太郎(もとらしんたろう)博士によるものです。フィンスタビライザーは、船の両舷(りょうげん)の船底近くに小さな翼を張り出し、揺れの大きさに合わせて翼の角度を変えることによって船体の横揺れをおさえる装置です。大正12年(1923)に対馬商船の“睦丸(むつまる)”に世界で最初に装備されて以来、現在のクルーズ客船などの乗り心地を大切にする船には、全てといってよいほど積極的に取り入られています。
 
フィンスタビライザー
 
ビルジキール
ビルジキールの実験模型
 ビルジキールは船舶のローリング(横揺れ)を防止するために考案したものです。
 船底と舷側のさかいのビルジに、板を前後方向に長く取り付けることによって、ローリングを防止することができます。







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