日本財団 図書館


3. 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験
3.1 実験目的
 処理能力100トン/時間レベルの小型装置の各種水生生物に対する機械的損傷効果を確認するとともに、大量の海水を処理する上で重要な検討課題である閉塞対策の作動要件と損傷効果への影響及び長時間連続運転による機械的問題点に関する実験を行い、改良点の検討と実船搭載試作機の設計・製作に対する各種データを取得することを目的とした。また、通常の処理能力よりも高速の処理を行い、本システムの損傷効果向上の可能性を検討した。
 
3.2 実験時期及び場所
 実験は、平成14年8月5日から9月13日の間に、佐賀県伊万里市の臨海実験施設で行った。
 
3.3 実験項目
 実験項目は、次のとおりである。
(1)小型装置の水生生物損傷基本効果
(2)高速処理による損傷効果向上の検討
(3)閉塞対策の作動要件と水生生物損傷効果への影響
(4)長時間連続運転による機械的問題点の検討
 
3.4 実験構成
 図II.3.4-1には「小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験」の構成を示した。
(拡大画面:37KB)
図II.3.4-1 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験の構成フロー
 
3.5 実験装置
 写真II.3.5-1には、「小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験」の実験装置全景、図II.3.5-1には、装置構成図を示した。
 実験装置は、自然海水を取水して小型装置に通水するポンプ、小型装置本体、小型装置を通過した処理水を貯める処理後タンク、小型装置を通過させない処理前水を貯めるコントロールタンク、それに1度処理(1pass処理)した海水を貯めて2度目の処理(2pass処理)に通水する貯水タンクで構成した。
 
(拡大画面:36KB)
写真II.3.5-1 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験装置の全景
 
(拡大画面:36KB)
図II.3.5-1 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験装置の構成図
 
3.6 物理条件観測方法
 観測した物理条件は、流量、装置上流側圧力と下流側圧力である。流量は超音波式流量計、圧力はひずみゲージ式圧力計を用いた。観測は各種実験中において常時行った。なお、剪断応力とキャビテーションの発生に直接的な関係があるスリット部流速は流量とスリット部の開口面積、船舶への適応条件となる圧損(圧力損失)は装置上流側圧力と下流側圧力からの計算で求めた。
 
3.7 実験対象生物
 実験対象生物は、表II.3.7-1に示す自然海水中の生物とした。
 
表II.3-7-1 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験の実験対象生物
生物区分 観測項目 対象生物分類群
細菌類 一般従属栄養細菌数 一般従属栄養細菌
大腸菌群数 大腸菌群
植物プランクトン クロロフィルa量 (全植物プランクトン量の指標)
植物プランクトンの種別細胞数 渦鞭毛藻綱、珪藻綱等の各種分類群
動物プランクトン 動物プランクトンの種別個体数 多膜類繊毛虫綱、カイアシ類等の終生動物プランクトンの各種分類群、多毛綱、二枚貝綱、蔓脚類等の一時的(幼生時等)の各種分類群
魚卵稚仔 魚卵稚仔の種別個体数 魚類
 
3.8 効果判定方法(分析方法)
 表II.3.8-1には、実験対象生物毎の分析方法を示した。また、表II.3.8-2には、各実験対象生物の効果判定方法を示した。写真II.3.8-1には、動植物プランクトンの効果判定基準を示した。
 
表II.3.8-1 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験における実験対象生物の分析方法
生物区分 観測項目 分析方法
細菌類 一般従属栄養細菌数 沿岸環境調査マニュアルII(培養法)
大腸菌群数 環境庁告示第59号別表2(培養法)
植物プランクトン クロロフィルa量 海洋観測指針9.6.1(1990)(蛍光法.20μm以下.20〜50μm、50〜100μm、100μm以上のサイズ別)
植物プランクトンの種別細胞数 生物顕微鏡による直接計数法(無固定、20μm以下.20〜50μm、50〜100μm、100μm以上のサイズ別計数)
動物プランクトン 動物プランクトンの種別個体数 生物顕微鏡及び実体顕微鏡による直接計数法(無固定、20μm以下、20〜50μm、50〜100μm、100μm以上のサイズ別計数)
魚卵稚仔 魚卵稚仔の種別個体数 実体顕微鏡による直接計数法(無固定、100μm以上)
 
表II.3.8-2 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験における各実験対象生物の効果判定方法
生物区分 観測項目 効果判定方法
細菌類 一般従属栄養細菌数 処理前後の生細胞数の変化
大腸菌群数 処理前後の生細胞数の変化
植物プランクトン クロロフィルa量 処理前後のクロロフィルa量(サイズ別)の変化
植物プランクトンの種別細胞数 処理前後の各種正常細胞数(サイズ別)の変化
動物プランクトン 動物プランクトンの種別個体数 処理前後の各種正常個体数(サイズ別)の変化
魚卵稚仔 魚卵稚仔の種別個体数 処理前後の各種正常個体数の変化
 
(拡大画面:75KB)
写真II.3.8-1 小型装置による水生生物処理効果確認陸上実験における植物プランクトン及び動物プランクトンの効果判定基準







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION