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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆金正日の三つの決断
 金正日総書記が小泉首相を平壌に招待し、日朝交渉の再開を促したのも、同じような考慮に基づくものである。軍事危機を回避し、米国との対話を再開するために、金正日はブッシュ大統領の盟友である小泉の協力を必要としたのである。盧泰愚大統領が展開した「北方外交」との対比で言えば、金正日が推進しているのは、「東京を経由してワシントンに到達する」という「南方外交」であるといってよい。拉致事実を認めて、謝罪するとの第一の政治的決断は、そのための「高価な代償」であった。
 しかし、金正日総書記は、それを巧みにやってのけた。拉致被害者八人の死亡という事実を最後まで秘匿し、局長会談で共同宣言案に合意し、小泉首相の平壌訪問を実現した後に、最高機密を明らかにして、拉致問題を一挙に処理しようとしたのである。これが今回の首脳外交における最大の外交的演出であった。もし小泉首相が席を蹴って帰国すれば、そのような交渉戦術は破綻せざるをえなかった。日本国内は強硬な対応で一致団結し、国交正常化交渉は無期延期されたに違いない。大きなリスクを冒して、不安におののいていたのは、小泉首相ではなく、金正日総書記だったのである。
 しかし、そうなれば日朝関係が再び敵対的な状態に復帰するだけではすまないだろう。それを見たブッシュ大統領は北朝鮮との対話再開を拒絶し、やがて「ならず者国家」にさまざまな圧力を加重しつつ、イラク攻撃以後、日本に北朝鮮攻撃への同調を求めるに違いない。要するに、ブッシュ政権と肩を並べて、日本は北朝鮮との対決の最前線に立たざるをえなくなるのである。しかし、それこそが、金正日総書記も、小泉首相も絶対に避けたい事態であった。
 したがって、現在、金正日総書記に要求されているのは、真相究明を含む拉致問題の完全解決だけではない。長距離ミサイルの開発、配備、輸出の中止、IAEA(国際原子力機関)の核査察への協力などについて、第二の政治的決断を下さなければならない。なぜならば、米朝交渉の最終的な妥結なしには、日朝国交正常化は達成されないし、軍事危機も回避されないからである。とりわけ核査察を早期に受け入れるという決断なしに、北朝鮮がイラクとの違いを証明することは不可能である。賢明な金正日が、そのことを知らないはずはない。
 対日、対米譲歩を余儀なくされる金正日総書記を窮地から救出できるのは、金大中大統領の韓国だけである。全面的な外交的退勢を挽回するために、金正日に残されるのは、第三の政治的決断、すなわち来年二月に金大中大統領の任期が終了する以前に、ソウルを答礼訪問することだけである。核兵器とミサイルを規制された北朝鮮は、韓国の新しい政権と平和的に共存し、日本から提供される経済協力によって破綻した経済を再建する道を歩まざるをえないのである。
 
 
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