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◆質的に変化した「日米韓の緊密な協調」
 九月一一日に同時多発テロ事件が発生して以来、「テロリズムとの戦い」が米国の対外政策の最大の目標として浮上し、そのための国際的な反テロ連合が世界の各地域で形成された。ブッシュ大統領が延期された東アジア訪問を早期に実現し、「テロリズムとの戦い」に最も協力的な同盟国の一つである日本を最初の訪問国に選んだのも、そのような努力を強化するためであった。事実、日本に滞在する問、ブッシュ大統領は小泉首相に対する信頼感を驚くほど率直に表明し続けた。
 ブッシュ政権のこのような外交戦略は、同じ共和党政権であるレーガン政権初期の戦略を踏襲している。カーター時代の失地を回復するために、レーガン大統領がソ連を「悪の帝国」と非難し、それに対抗するための「新冷戦連合」を構築したように、現在、ブッシュ大統領は国際テロリズム、すなわち「悪の枢軸」と戦うための「反テロ連合」を結成しようとしているのである。東アジアも、その例外ではない。
 また、レーガンと同じく、ブッシュ大統領はあらゆる選択肢を残したまま、「対話と抑止の境界」を曖昧(あいまい)にしつつ、「抑止力を背景とする交渉」を企図している。北朝鮮を含む「ならず者国家」と対決するためであれば、一般教書演説で指摘したように、MD(ミサイル防衛)計画の推進をためらわない。これも、レーガン政権のSDI(戦略防衛構想)に範を求めたものである。最大の相違点はレーガンが韓国に全斗煥大統領という盟友を持っていたのに対して、ブッシュ大統領がそれを持たないことである。
 しかし、そうだとすば、同じように「日米韓の緊密な協調」を掲げながらも、その内容はクリントン時代と相当に異なるはずである。要するに、北朝鮮を国際社会に積極的に参加させるための日米韓協調が、北朝鮮に大量殺傷兵器を放棄させることを最優先する日米韓協調に変化しつつあるのである。今回のブッシュ訪韓で試されたのは、韓国がどこまで同調できるかであった。
 事実、分断国家であり、戦争回避を最優先する韓国の立場は米国のグローバルな目標と必ずしも一致しない。ブッシュ訪韓の直前に韓昇洙外交通商部長官が更迭されるという異例の事態は、そのような米韓両国の立場の相違が表面化したものである。一月一四日の年頭記者会見で、金大中大統領が「(米国にも)北朝鮮の体面を立てる姿勢が必要なのではないか」と言明したのに対して、ハバード駐韓米大使は「(米国人の思考には)体面を立てるというものはない」と反論した。
 もちろん、韓国を訪問したブッシュ大統領は金大中大統領と韓国政府の立場に十分配慮して行動した。二月二〇日の米韓首脳会談や記者会見などで、ブッシュ大統領は米韓同盟の重要性を再確認しただけでなく、韓国政府が推進する「太陽(包容)政策」に明確な支持を表明し、「米国も北朝鮮と無条件で対話する用意がある」と言明したのである。しかし、それと同時に、北朝鮮が太陽政策を受け入れないことに失望を表明し、「世界で最も危険な政権」が「国民を飢えさせて、大量殺傷兵器を開発している」と指摘することも忘れなかった。
 
 
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