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 率直に言って、このような提案を受け止める条件が現在の日本の政治家と官僚の中にあるのかどうか、はなはだこころもとない。では知識人と国民はどうか、と言えば、こちらも同じである。だが、われわれが今日の世界的な危機を自分の問題として考え抜けば、そして、あの教科書問題の危機の中で、あらためて韓国人との関係の意味を国民的に再確認したことを思えば、最後にワールドカップ二〇〇二の成功を本当に期待するなら、この提案を考え、検討し、実現する方向に進む他ないと考える。
 二〇〇二年二月一六日は、金正日国防委員会委員長の六〇歳の誕生日であり、四月一五日は故金日成主席の生誕九〇年の記念日である。北朝鮮ではこの間は国家的な祝賀行事が行われる。ワールドカップの開幕はそのあと、五月三一日のことである。日朝国交交渉の再開を四月二五日までに果たして、五月のワールドカップ開催前に三者会談を開くことが必要である。日本がアフガニスタンの復興のために国際会議を主催して、努力するのはよいことである。しかし、朝鮮半島と日本の関係をめぐって、怨をとき、和解をもたらし、問題を解決し、協力の保障を確実にすることは東北アジアに生きる日本にとってついに逃れることのできない課題である。
著者プロフィール
和田春樹(わだ はるき)
1938年生まれ。
東京大学文学部卒業。
同大社会科学研究所長を経て、東京大学名誉教授。
専攻はロシア・ソ連史・現代朝鮮研究。
著書に『金日成と満州抗日戦争』『朝鮮戦争』『北朝鮮―遊撃隊国家の現在』ほか。
 
 
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