◆同一パターンの慰安婦問題
ところが、一九九二年一月宮沢首相訪韓に当って、過去の慰安婦問題がまたまた日韓のマスコミで大きく取り上げられることになった。この慰安婦問題は、元をただせば、仕掛けたのは、「反日日本人」である。一九八九年暮、ある日本人女性(主婦)が韓国を訪問、韓国人戦争犠牲者のなかから日本政府を相手どって「公式陳謝と賠償」を求める裁判を起こす原告の募集を行ったのだ(詳細は西岡力著『日韓誤解の深淵』亜紀書房刊)。
その日本人女性と韓国内で日本に補償を要求している運動体が結びついた。その運動体の幹部の娘が朝日新聞の記者と結婚した。その記者が慰安婦の経歴などを歪曲して朝日新聞に書くなどして、日本のマスコミが煽りだした。すると教科書問題とまったく同じパターンで韓国のメディアが日本の報道を東京から送信、韓国内の「反日感情」を高めていった。その過程で、韓国のマスコミは、日本が十二歳の少女を慰安婦にしたという事実無根の報道をなし、韓国民の「反日感情」に更に火をつけた。
以上みれば明らかのように、教科書問題は日本の誤報と「反日日本人」と韓国メディアの癒着、韓国メディアの歪曲報道。政治家や官僚たちの保身による日本教科書の改訂の約束という信じ難い「政治結着」を行ったのだ。
慰安婦問題も「反日日本人」が火を付け、日本のマスコミがきわめて一方的な報道をなし、韓国のメディアが「反日日本人」と手を組み、意図的と思われる事実無根の報道で韓国民の「反日感情」を煽動した。
そして、八月四日宮沢内閣は、官房長官談話を発表し、慰安婦問題の政治結着を図った。その中身たるや、従軍慰安婦の募集に当って「官憲が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」とし、「政府はこの機会に、改めて“従軍慰安婦”の方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」というものだ。
そこでわが現代コリア研究所が政府に「官憲が募集に直接加担したという根拠は何か」と問いただしてみた。答えは「韓国で発刊された元慰安婦たちの証言集と彼女たちからの聞き取りである」というものであった。
宮沢政権は、彼女たちの「証言」の裏付けをとらないまま、それが歴史の「真実」だとして採用し、「お詫びと反省」をし、それを教科書にまで記述するという。これは立派な犯罪ではないか。
政権は消えてなくなる。しかし、日韓関係は永遠に消えてなくならないのである。一政権のデタラメな外交のつけを払わされるのは国民だ。冗談ではない。
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