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◆低技術で原子炉もてあそぶ危険
 核査察問題と同程度に見逃すことのできないのが原子炉の事故である。米国は、日本政府に対し「放射能漏れ事故を引き起こす可能性が十分あり、その場合、日本を含めた近隣諸国への影響が大きい」との懸念を表明している。
 日本の原子力専門家は「冷却の場合でも軽水、重水、液体金属、炭酸ガスの四種類があり、炉をみていないのでなんともいえないが、図に示されている(2)(3)の原子炉は、ソ連のチェルノブイリで大事故を起こした黒鉛減速軽水冷却炉ではないかと思われる」といっている。
 筆者だけではないと思うが、北朝鮮の科学技術の水準に多少なりと関心のある人間なら、核開発よりも何よりも咄嗟に考えることは、「事故を起こすのでは」という不安である。
 まずソ連の黒鉛減速軽水冷却炉は、日本の使用している原子炉に比べ、事故の発生率は、二百〜二千倍だという(朝日新聞四月十五日付)。北朝鮮の原子力の技術者のほとんどはソ連で勉強してきた人たちで、北朝鮮の技術は、ソ連より更に低いことは周知のことである。
 その北朝鮮に、現在判明しているだけで二基の原子炉が稼働しており、まもなく一基も稼動し出す状況にある。これとは別に、北朝鮮東海岸新浦(咸鏡南道)地区に秘密裏に原子力発電所を建設していると、ソ連の『ウラジオストク』紙が報道したと伝えられている。同紙は「第二のチェルノブイリが準備されているのか?」と題し、研究や事業計画がズサンだと強い不安を表明している。
 改めて指摘するまでもないことであるが、北朝鮮で原発事故が発生すれば、日本を含む東アジア全域が放射能汚染にさらされることは避けられない。
 こうしてみると金丸・田辺訪朝団が、北朝鮮という国をいかに知ろうとしていないか。「無知と我欲は、アジアを滅ぼす」の典型ということができる。あのような途方もない共同宣言は、間違いなく「歴史に残る」であろう。
 さて、この度の時事通信社の報道は、大スクープだったと思う。これを全文使って報道したのは、地方紙はみていないので知らないが、東京では『世界日報』一紙だけだった。週刊誌では、『週刊文春』一誌のみ。他の新聞は、ほとんどベタ記事程度の扱いだった。
 どんな判断や配慮(北朝鮮への)があったのか知らないが、北朝鮮の核問題のような重要なニュースは、報道機関は、何をおいても国民に知らせる義務があるのではなかろうか。なぜ、今回の時事通信の記事が使用されなかったのか、各マスコミは、読者や聴取者に納得のゆく説明をしなければならない。『世界日報』と『週刊文春』が取り上げなかったなら、時事通信のスクープは、スクープした記者が、雑誌にでも書かなければ闇に葬られてしまうことになる。信じられないことだ。
 筆者のこのような疑問に、(1)平和ボケしていて、ニュースの軽重の判断ができなくなっているのではないか。(2)ピョンヤン政府が嫌がることを紙面で大きく扱うと、将来ピョンヤン支局開設のとき支障が出ることを恐れているのではないか、との声がきかれた。(1)の方も考えられないわけではないが、しかし、全部が全部そうだとは思われない。いま一つよくわからない。
 (2)の方だとすれば、わが国やアジアの安全保障より自社のピョンヤン支局開設の方が大切だということだ。人間だれしもわが身わが社が可愛い。だけど北朝鮮が核兵器を所有したり、原子力発電所の事故でも起こしたら、ピョンヤン支局の開設どころの騒ぎではない。明白にその可能性が高まっている、その具体的ニュースを報道しないというマスコミは、理由がなんであれ、自殺行為ではなかろうか。
 
 
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