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◆94年から核兵器製造可能
 専門家を取材してわかったことは、核開発の施設であるかどうかの決め手は、(5)の使用済み核燃料再処理施設の存在である。
 北朝鮮には天然ウランがあるから、原子炉の燃料は、これを使用していると考えてよい(北朝鮮が外国から原子炉の燃料を輸入している形跡はない)。
 天然ウランをそのまま原子炉の燃料に使用すると、中性子と融合し、核分裂を起こすウラン二三五は、わずか〇・三%。残りの九九・七%は核分裂を起こさないウラン二三八で効率が非常によくない。そこで効率を高めるため天然ウランを濃縮工場で濃縮する。そうすると核分裂を起こすウラン二三五の濃度は、三%まで高まり、核分裂を起こさないウラン二三八は、九七%と低くなる。
 発電用の原子炉ならここまで、あとは使用済み燃料を廃棄処分にするだけだ。核兵器を開発するためには、この後の工程が必要となってくる。核分裂を起こさないウラン二三八は、原子炉の中で中性子と融合し、プルトニウム二三九に変化する。この二三九を使用済み核燃料再処理施設で分離抽出する。そしてプルトニウム爆弾、つまり長崎に投下されたものと同じ原子爆弾が製造されることになる。
 以上のように、核兵器を製造するためには、核燃料再処理工場が必要不可欠であり、原子力発電には、全く不必要な施設なのである。さきに米の核専門家が日本政府に説明したなかで「3、大型原子炉(※五〇―二〇〇メガワット)」という記述がみられたが、専門家の話によるとここでいう「メガワット」は、多分熱出力を指していると思われる。そうすると原子力発電に使用する原子炉なら非常に小さなもの(日本各地にある原発でこんな小さな炉は使用していない)で、研究用原子炉としてなら大変大きなものであるという。
 米国は、既述のように、この炉から出るプルトニウムは、年間で核兵器二―五個分作れる量と推定している。人口二千万の国家で、一年間に長崎型原爆が二―五個も生産される施設が一九九四年頃、つまり三年後に完成し、核兵器の生産を開始するという状況にある。冒頭でしるしたように、そうなれば、アジアの安全保障問題は、根底から崩壊してしまうことを再度指摘しておきたい。
 
 
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