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産経新聞朝刊 2002年10月5日
北工作船と政府が断定 重武装、ハイテク化
 
 ◆地対空ミサイル/ロケットランチャー/対戦車用無反動砲 
 鹿児島県奄美大島沖の工作船事件で、海上保安庁は四日、海底や船体から携帯型地対空ミサイルなど百点以上の武器・弾薬類を含む証拠物約七百点を回収したとする中間報告をまとめ、公表した。日本製のレーダーや無線機、携帯電話などのほか、新たに日本製ポケットコンピューターも見つかり、ハイテク化も進んでいた。
 扇千景国土交通相は記者会見で「北朝鮮の工作船」と公式に断定。今後の日朝交渉の中で、工作船の航行目的の解明や再発防止を議題にするとしている。
 回収されたのは、ハングルで「自爆」と書かれたスイッチ▽「テソンソンネたばこ工場」とハングルで書かれた北朝鮮製のたばこ▽「ああ党よ、この子は永遠にあなたの忠臣になろう」と、朝鮮労働党への忠誠心を示す内容が書かれた木片−など。いずれも工作船を北朝鮮のものと断定する物証となった。
 遺体や遺骨は計七人分が回収された。二遺体は歯の鑑定から朝鮮人のものとみられ、死因は水死という。武器類は、旧ソ連製とみられる携帯型地対空ミサイルのほか、ロケットランチャー、対戦車用82ミリ無反動砲、対空機関銃、軽機関銃、自動小銃、手榴(しゆりゆう)弾。工作船の重武装化をうかがわせ、その中には北朝鮮製を示す星印が刻印されたものもあった。
 赤飯と鳥飯の缶詰、船橋の窓など多くの日本製品も搭載されていた。
 工作船の機関室と、その後ろの小型船の格納庫の間の隔壁には、縦横最大約一メートルにわたって機関室側から穴が開いており、同庁は機関室側で何かが爆発し、船の沈没につながった可能性があるとみて調べている。
 一方、小型船に三基搭載されていたエンジンはスウェーデンのボルボ社製、船体は繊維強化プラスチック(FRP)でコーティングされるなど、これまでに確認された小型船と比べて大幅な機能強化が図られていた。
 政府は今後、工作船の目的や行動について引き続き調査を続け、今後の日朝交渉のなかで北朝鮮に対し、事実関係や再発防止を求めていく方針だ。工作船は六日に陸揚げされる予定。(2面に「主張」、4面に調査結果要旨、9面にグラフ、3、31面に関連記事)
【写真説明】
工作船から回収された14・5ミリ対空機関銃。船橋構造物の後部から甲板に敷かれたレール上を引き出して攻撃できるような構造で戦闘能力は高いとみられている(海上保安庁提供)
 
 
 
 
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