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産経新聞朝刊 2000年8月25日
国交正常化交渉 本会談要旨 日朝激しい応酬
 
 24日行われた日本と北朝鮮との国交正常化交渉本会談の要旨は次の通り。
 
 【過去の清算】
 鄭泰和北朝鮮大使 過去の植民地支配に対する謝罪と補償、流出文化財の返還、在日朝鮮人の法的地位確立を要求する。流出文化財などの問題は、分科会を設置して協議を進めるべきだ。
 高野幸二郎日本大使 平成七年の村山富市首相談話が、日朝交渉でも基本となる。補償には応じられない。朝鮮統治していた期間の問題は、分離、独立した地域の財産・請求権として処理しなければならない。双方の立場に対立はあっても、日韓国交正常化交渉のように知恵を出し、合意に達した過去の例はある。次回以降、接点を見いだす作業を行いたい。分科会設置は(交渉の)方向性が出てからならあり得るが、時期尚早だ。
 鄭大使 村山首相談話はアジア全般に対するものであり、物足りない。大局的見地から、より受け入れやすいのではないかと考え、「補償」と言っている。過去の物質的、精神的、人的被害への補償は当然だ。
 【ミサイル問題】
 高野大使 米朝協議の中で、北朝鮮がモラトリアム(発射凍結)を発表し、再確認していることを歓迎する。既に開発・配備されたもの、第三国への輸出についても、議論が進展するよう期待する。これは北東アジアの安定と、日朝関係改善に大きな意味を持つ。プーチン・ロシア大統領訪朝の際の、金正日総書記のミサイルに関する発言について、説明してほしい。
 鄭大使 ミサイル開発・輸出は、どの国でも認められた自主権だ。しかし、米国との協議が行われており、それを見守ってほしい。金総書記発言については、今の説明で理解してもらえると思う。
 【日本人拉致疑惑】
 高野大使 日本政府として避けて通れない。その上で、行方不明者の調査が着実に行われ、納得いく結果が得られるよう強く期待する。
 鄭大使 拉致はあり得ない。ありもしない問題は議論されるべきでない。行方不明者については、赤十字主体に調査している。
 【工作船事件】
 高野大使 国民に大きな衝撃を与え、北朝鮮への不信感をもたらした。再発しないよう期待する。
 鄭大使 (工作船事件と言われることを)断固として否認する。
 【日本人妻里帰り】
 高野大使 九月に第三回訪問が行われることを歓迎する。今後も継続してほしい。
 鄭大使 誠意を持って行う。継続実施したい。
 【コメ支援】
 高野大使 日本政府として誠意を示した以上、北朝鮮も日本側の関心事項に誠意を示してほしい。
 鄭大使 コメ十万トンの支援はありがたい。今後とも人道援助を適切に行ってほしいというのが、われわれの希望だ。
 
 
 
 
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