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産経新聞朝刊 2000年4月6日
日朝国交正常化交渉再開 日本「拉致、誠実対応を」 北朝鮮「過去の清算優先」
 
 【平壌5日=近藤真史】日本と北朝鮮との国交正常化交渉は五日、平成四年十一月の中断以来、約七年五カ月ぶりに平壌市の人民文化宮殿で再開された。五日は双方の首席代表による冒頭発言が行われ、北朝鮮の鄭泰和大使(元外務次官)は第二次大戦中の謝罪と補償を中心とした“過去の清算”を優先して協議、解決するよう要求。これに対して、日本側は日本人拉致(らち)問題や弾道ミサイル開発問題などについても同時に協議を行うよう求め、双方の立場の違いが改めて明確になった。
 鄭大使は会談で、「“過去の清算”を進めることで他の問題も容易に解決できる」として優先処理を主張。具体的には(1)過去の侵略と占領に対する謝罪(2)人的、物的損失に対する補償(3)破壊、略奪された文化財に対する補償(4)在日朝鮮人の法的地位に対する補償−を列挙し、「どれも切り離せないワンパッケージの問題」として一括処理を求めた。謝罪については条約など法的文書で明確化するよう求めたが、交戦国としての賠償や戦後補償については言及しなかった。
 これに対して日本政府代表の高野幸二郎大使は、“過去の清算”の重要性については同意したものの、「現実に存在するいろいろな懸案について解決に向けて前進することが重要だ」と主張。拉致問題について「日朝関係改善のうえで避けて通れない問題であり、赤十字会談の進展も踏まえてさらに誠実な対応をとってほしい」と述べたほか、弾道ミサイル開発問題や日本人配偶者の一時帰国、工作船による領海侵犯事件などに言及した。
 日朝双方は、交渉を継続することで国交正常化を目指すとの基本方針で一致。今後、分科会の設置など交渉の進め方についても検討していくことになった。代表団は五日夜から六日夕まで一泊二日の日程で平壌市郊外の景勝地、妙香山を視察。七日午前に会談を再開する。(4面に関連記事)
 
 
 
 
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