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2.一時保育
 一時保育は、横浜市では各区1か所ずつ整備されていたので、最初は市からの要望の中にはありませんでした。でも、厚木のみどり保育園での経験から一時保育のニーズの高さは感じていましたので、機会があれば行いたいと考えていました。図面を提出するにあたり、延長保育のために作った部屋の名前がなかったので「一時保育室」と明記しておきました。それがちょうど、一時保育が指定園ではなく希望すればできるようになったことと重なって補助金が出るようになり、開園当初からできるようになりました。
 そのようないきさつから始まった一時保育、最初の部屋の構想が延長保育室をイメージしていたので普通の保育室とは違いロッカーや広い空間がありません。ただただ家庭に近い雰囲気の部屋があるだけです。
 最初の頃は積極的に宣伝を行っていませんでした。何しろ保育園自体がはじまったばかりで落ち着いていませんでしたので余裕がなかったというのが実情です。保育園に入園できることができなかった3人兄弟が開園当初から登録して利用しているくらいでした。
 4月中旬になり「そういえば外の掲示板が淋しいね」という話になり、一時保育のポスターを作り貼っておくことにしました。それだけで、どんどん希望者が増えてきました。ほとんど口コミです。
 
利用理由
 当初から来ている兄弟のように、就労のために週3回以内で利用する「非定型」の方。
 兄弟の入院や出産等の入院時に利用する「緊急」の方。
 そして、何より喜ばれたのは特に利用の理由を問わない「リフレッシュ」です。お母さんが通院したり、美容院やバーゲンに行くこともあるようです。また、上のお子さんのPTAや遠足の付き添い等、利用の理由もそれぞれです。どんな場合でも連絡先は、朝お聞きしています。
 
登録制と面接について
 最初の頃は利用者もそれほど多くなく、事前面接も希望に応じて行い、リフレッシュの利用も多く受け入れることができました。しかし、数が増えてくるにつれて面接をする時間が保育時間に食い込んでしまったりして十分な面接ができなくなってきました。そこで、現在では昼寝の時間を利用して一日一人予約制で行っています。その予約をとるのも2週間以上待っていただいている状態です。
 登録の際には、健康保険証の写しと子どもとお迎えに来る方の写真をお預かりしています。また、母子健康手帳もお持ちいただいて、必要に応じて見せていただいたりお話を伺ったりしています。
 
保育料について
 保育料は3歳未満児と3歳以上児で料金が異なります。半日(4時間)を単位としてチケットを購入していただき、利用日の朝、担当の職員に渡してもらいます。担当者は直接、お金を扱うことはしていません。
 
利用予約について
 利用日の予約については、当初は次週分を前の週の月曜日以降電話で受けるようにしていました。ところが、そうなると月曜日は朝から電話が鳴りっぱなしで通常の電話業務にも支障が出るようになったので、もう一度要綱を読み直し、対策を考えました。「非定型」の方は週3日以内。特に就労をしている人は電話がつながらなくて預けることができないと仕事に行けなくなってしまうという苦情がありました。そこで、非定型の方は優先的に希望を入れておき、休む時には知らせてもらうという方法に変えました。念のため利用日の帰りに次の利用日の確認をしています。
 「緊急」は14日以内で一度更新ができるということで、最長28日4週間の利用ができます。これは必要なときに個別に対応することになります。
 「リフレッシュ」については利用は「1回」ということになっていますので、予約は1回のみ可能で、次の予約は利用してからお願いすることにしました。
 そのようにしてから、電話での混乱はなくなりました。ところが、リフレッシュが1回のみの予約なので、非定型、緊急の方が優先されて大変利用しにくくなってしまいました。タイミングが悪いとほとんど利用できないという状態になってしまっています。
 そのように予約がしにくくなったのにもかかわらず、当日になると体調を崩したり、急に予定が変わったりでのキャンセルが結構あることがあります。特に天気が悪いと出席率が下がるのは他のクラスに比べて多いようです。そこで最近では「キャンセルが当日出ることがありますので、朝、電話してください」というようにしました。電話で確認してから支度をしてくるので時間的にも余裕がなく大変だと思いますが、最近はその問い合わせも増えているようです。
 
職員体制
 常勤職員1名、非常勤職員1名で対応しています。時間は午前8時30分から午後4時30分までです。異年齢の子どもが同じお部屋で過ごすことになりますので、1歳を過ぎて一人で歩けるようになってからとお願いしています。一日の利用人数はその時の年齢によって変わってきます。2人の保育士で対応できる人数が限度になりますので、多い日で12人くらいでしょうか。
 
利用者について
 「非定型」を利用している中には潜在待機児が多くいます。本来は保育園に入りたいけれども、入れないので仕事を押さえていたり、おじいちゃん、おばあちゃんの協力で補っていたり、認可外保育園との併用で乗り切っている方もいます。また、保育園が決まらないと仕事が決まらない現実にもかかわらず、福祉事務所では仕事が決まっていなければ保育園に入れないということになるので、その狭間で苦しんでいる人もいます。でも、どちらにしても、パートでは保育園入所が難しくなっているので、短時間で毎日の一時保育という枠も母親側からの要求ではあるようです。
 「緊急」の利用は母親の入院だとお父さんの送り迎えになることが多いので、そうなると保育時間が不足します。原則的には対応ができないので断っていますが、通常の保育時間はもっと長く行っていますので緊急度に応じ、対応できる場合はクラス保育する場合もあります。また、年齢が高く非定型で定期的に来ている場合、0歳児で余裕がある場合はやはりクラスで受け入れています。しかし、どのクラスも定員以上の編成になってしまいますので特に0歳児は年度後半は無理になるのが現状です。
 最近は、保健所の保健婦さんからの相談が増えてきました。内容はお母さんの病気、うつ病やそれに伴う虐待、ネグレクトなどです。子どもが心配な場合は時々様子を見にきてくださることもあり、その時に他の心配のケースについてもご相談に応じてもらうこともあります。このような連携が取れるのはとても心強いことです。
 難しかったのはネグレクトのケースでした。母親に自覚がない場合も多く、一時保育にも抵抗を示し、面接をしても来ないこともあります。最終的には児童相談所と相談して対応を考えているそうですが、本当に母親と一緒にいること自体がその子にとって酷だということもあるのだと実感されるケースでした。
 近頃はそのようなケースはますます多くなる傾向で、保健所の検診等で把握できることがあるそうです。保健所でも親子教室に誘ったりしているそうですが、一時的に預かってくれる保育園の数がもっと増えてほしいと話されていました。
 
保育内容
 一時保育室で受け入れます。2歳までの方には、園で使っている連絡帳を記入してきてもらいます。また、帰りにはその日の様子をお知らせします。
 やはり、初めて来る子どもが多い日は、特に朝、泣き声がやまないことがあります。でも、どうにかおやつの時間くらいになると落ち着いてきます。
 泣いていると、お母さま方も心配そうで、子どもから離れられません。そんなときは「大丈夫ですからお出かけください。泣いていればお母さんはいてくれると思ってずっと泣いています。もし、泣き続けるようでしたら連絡をします」とお話して帰ってもらいます。子どもは、しばらくすると泣き止んで遊びだすことがほとんどです。
 保育室は狭いので、園庭、となりの公園へ散歩、ホールや他の保育室などに遊びにいきます。「非定型」で来ている子どもは慣れていて、他の子どもをリードしてくれます。その日の年齢層により保育内容を工夫していきます。
 また、季節にちなんだ製作や園の行事への参加も行っています。
 
今後の課題
 こんなにニーズがあるのかと思うほど登録者は多く、希望に応じることができません。特にリフレッシュの方はなかなか予約を取ることができないのです。また、緊急の方の長時間や延長の受け入れが難しく、お断りするケースも少なくありません。
 一時保育をしている園がまだまだ少なく、遠距離からの希望もあり、一時保育をする園がもっと増えてくれればというお母さま方からの声があります。








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