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生涯の師に剣道を
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石川県剣道道場連盟会長
衆議院議員 
森喜朗 
 禅宗では雲水が専門の修業を修める場所を「道場」と称します。
 禅との係りが深かった剣道では稽古修練の場所を明治時代から「道場」と統一して呼称するようになったと聞いています。 
 「礼に始まり 礼に終わる」大会に参加された少年剣士諸君の皆さんは、きっと道場の先生や監督から道場への出入りの際の一礼や神 師 同輩に対する三節の礼を厳しくしつけられたと思います。
 剣道は激しく直接的な闘争性を要求されます。それだけに相手を尊敬し、同時に自らを高める精神力が要求されます。それを「礼」という形に込めていることをきっちりと理解しておいて下さい。 
 山岡鉄舟という人がいました。父から一刀流を学びました。青年期から千葉周作の門に入り北辰一刀流を極めた最後の剣豪です。山岡鉄舟はまた禅にも精通した人物で京都の嵯峨天竜寺から印可を得ています。 
 西郷隆盛は武人として誉れ高い人物ですが、子供のころに西郷に接した柴山海軍大将は「子供たちと接している間を膝をくずさず丁寧に和やかに対話し、辞去する子供たちを玄関まで見送り正座して別れを述べられた」と述懐しています。 
 強い志を持ち、しかも穏やかだった西郷隆盛と禅と剣道を極めた山岡鉄舟が会談して幕末の江戸を戦火から守ったことは有名な事実です。
 大会に参加された剣士諸君には剣道が教える心を生涯の伴侶とし、志を持った人間として大きく成長されんことを心から期待してご挨拶とします。








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