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優良賞 東北地区代表
「感謝の気持を忘れずに」
新潟県新潟市・成思館道場
佐藤綾乃(さとう・あやの)・中学2年生
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 中学校生活の中盤を過ぎた今、私の剣道生活を振り返ってみました。
 私が今通っている中学校への入学。それは決して安易なものではありませんでした。以前住んでいた家からは校区外のため、今の中学校へは入学することができなかったからです。しかし剣道部の活躍や、先生方が剣道を通して人間形成を第一に指導されていることを聞き、そして何よりも私の気持ちを強く動かしたことは、小学校の時から同じ道場で一緒に笑い、汗と涙を流し、つらい時は励まし合い、ただひたすらに稽古に闘志を燃やしてきた1年生下の「後輩」ではなく、「親友」と同じ中学校に行き、精一杯剣道に打ち込みたい! それが本当の理由でした。
 でも、小学校の友達と別れなければならない淋しさや、誰一人知っている人のいない中学校に溶け込むことができるだろうか? と、複雑な日々が続き、悩んだ末、やはり生涯親友でいたい友と同じ夢を追い続けてみたい!そう決心し、私の正直な気持ちを両親と道場の先生に伝えました。しかしそれから先は、私が思うほど希望する中学校への入学は、簡単ではありませんでした。親としてできる全てを私の気持ちに応えてくれるため、幾度となく教育委員会に足を運び努力している両親の姿が、こんな私でさえ愛情をひしひしと感じることができました。
 そして、最終的に両親が出した結論は、私が生まれた記念にと建ててくれた家を手離し、希望する中学校へ入学することができる校区に家を新築するということでした。
 今私は、両親が数多くの犠牲をはらいながら建ててくれた家から中学校に通い、1年間待っていた親友が今年の4月に入学してからは、「必ず一緒に県のトップに立ちたい」という思いで、部活が終わった後のきびしい道場の練習を一日も休むことなく続けてきました。しかし、大事な試合に勝てなかったり、練習も思うようにいかず、あせればあせるほど気持ちと体がばらばらになってしまい、逃げ出したくなった時もありました。そんな時、道場の先生の一言を思い出したのです。
 「剣道は勝つことだけが目的ではない。どれだけ自分のできる事を、どこまで続ける事ができるかが大切だ。いつかは必ず結果がついてくる」という言葉でした。自分の弱い心に負けてしまい、「負けたくない」「勝ちたい」という気持ちが先に立ち、剣道を心から楽しむということを忘れかけていた自分に、気が付いたのでした。
 私は今、後ろを振り返らず前に向かって一歩ずつ歩き始めました。今まで壁にぶつかり立ち止まってしまった時、後ろから力強く背中を押してくれ、中学入学の時、両親と同じように悩んでくれた道場の先生。いつも励ましてくれた先輩達。そして剣道をしている私から「生きがい、そしてパワー、感動をもらっている」と言ってくれる両親。私の周りの全ての人達に感謝し、それに応えるために、今まで以上に稽古に打ち込み、心、技術、全てを磨き、いつの日か必ず、「剣道を続けさせてくれて、ありがとう」と一日も早く心から言える日を目標とし、努力しようと決心しました。
 この1年半というわずかな時間の中で、いろいろな事を経験し、学ぶことができました。それは、「立ち向かって行ける強い心」「今まで感じることのできなかった、両親、そして周りの全ての人への感謝の心」。だからこそ、剣道を前向きに取り組めるのだと思います。これから先も自分には「自己啓発」、この四文字を忘れず、人には「感謝」という気持ちを忘れず、一生剣道と共に歩んで行きます。








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