木造船に関する基礎調査について
本調査は、日本財団海洋船舶部により、日本各地域の漁連、漁協にアンケート調査を実施し、その結果を取りまとめたものです。
日本財団は、創立以来今日まで30年以上の間、海洋船舶の分野において、先進的な船の技術開発を支援してまいりましたが、日本の木造船を見直し、先人の知恵を後世に残し、社会に開き、共有していくことも海洋国家日本にとって欠かすことができない重要な課題であると考えています。
日本は四方を海に囲まれていることから、昔から船は漁業、物資輸送等の手段として重要であり、日本の自然や用途に合わせ、さまざまな木造船(和船)が建造されてきました。しかし、日本の近代化が進むにつれ、木造船は鉄船やFRP船に取って替わられ次第に建造されなくなり、わずかに漁船の建造において残っていた木造船も消えつつあります。また、木造船を建造できる船大工の人数の減少、後継者難、高齢化の進行などにより、技術が伝承されることなく消えつつあり、「和船」、「船大工」、「漁労習俗」等の社会的な資産と、それに関する貴重な資料が失われつつあります。
そこで、日本財団では和船文化・技術研究会を設置し、各漁協における木造船の残存状況や船大工に関して調査を行い、これらを社会遺産として後世に残すための方策を検討してまいりました。
今般、その実態が把握されていない木造の小型漁船について、全国の漁業協同組合を通じ現状を調査し、基礎資料を作成しました。
本調査結果は、貴重な日本の木造船技術の資料の保存・管理と次世代への文化的な遺産継承のため、個性豊かな地域の振興や活性化を図るため、さらには2002年から実施されている「総合的な学習の時間」に、小中学生が自分達の地域の歴史や文化を調べるための基礎資料として活用されれば幸いです。
末筆になりましたが、貴重な時間をさいて調査にご回答頂きました方々にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。
2002年5月20日
日本財団 常務理事
寺島 紘士