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おわりに 〜今後の研究と、ケアコーチの提案〜

 2001年度の調査研究としては、当初「ケアコーチ」の提案を考えていた。しかし、「セルフケアとは何か」を充分に議論し、「セルフケアができるための具体的なプログラム」について調査と試行を行うことに先に取り組む必要があったため、ケアコーチについては、別紙のとおり、途中経過を報告するにとどまる。(別紙参照)
 「ケアする人のケア」は、着実に社会のなかで急速に着目されはじめている。2002年4月初めにNHK教育テレビ「にんげんゆうゆう」で取り上げられたことをはじめとし、福祉系のさまざまな雑誌に取り上げられたり、インターネットをとおして問いあわせがあるなど、徐々に概念が広まりつつあり、その必要性が認識されつつある。
 また、「ケア」という概念の捉え直しも、さまざまな雑誌や著書で取り上げられはじめ、そのフィールドは、福祉や看護、心理学にとどまらず、哲学や倫理学、社会学等、あらゆる分野にわたっている。
 さらに、「ケアする人のケア」のための具体的なプログラムについては、欧米でも着手されはじめており、2002年は、アメリカ・アーツ・イン・ヘルスケア学会から、財団法人たんぽぽの家に「ケアする人のケア」についての共同研究と情報交換のプロジェクトが持ちかけられている。アメリカにおいては、日本と比較して、芸術的・文化的な手法をもちいたプログラムの実践がすすんでおり、そのための資金源について、あるいは、効果測定などの研究手法について、先駆的に取り組まれている。
 今後は、こうした海外の動きなどとも連携して、「ケアする人のケア」の必要性を広く発信していきながら、芸術的・文化的な活動が、ケアの現場でより広範に実践されていくための情報収集、情報発信をしていく。また、現在、検討中の「ケアコーチ」についても、その理念や手法についての検討をすすめる一方で、実践例を積み重ね、ケアする人のケアのための、働きかけの一つの手法として発表できるものに仕上げることが急がれる。さらに、2002年度は、ケア・サポートセンター(仮称)の開設を企画している。これまで積み重ねてきた、調査研究をもとに、実際にケアする人の相談を受ける相談窓口を開設し、啓発や情報発信、プログラム提供を行う拠点として、恒常的に事業が行える基盤を確立していきたいと考えている。
 
 最後に、「ケア」とは、ともすれば、日常の繰り返しのなかで埋もれてしまいがちな個別の営みである。その営みがケアに関わる人にとって肉体的、精神的に厳しければ厳しいほど、ケアする人が自分自身の行いの意味や価値を確認することが大切になる。本研究によって、これらの個別の「ケア」が、社会の大きな流れにつながっているということを、一人ひとりが感じ取ることで、これから必要になっていく新しい文化「ケアの文化」の構築にむけたムーブメントを創りだす主体となっていくことをめざしていきたい。








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