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(3)エル・ニーニョ現象の解明
 エル・ニーニョ現象についてはP2で述べたとおりですが、そのメカニズムを解明するために、トライトンブイなどを設置して、西部熱帯太平洋における暖水の集積と散逸の過程およびそれに関連した大気・海洋の相互作用に関する種々の情報を人手し、コンピューターによる解析を行っています。

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a)1995年12月 ラニーニャ時(エルニーニョと逆の現象で、東太平洋で水温が通常より低くなる)
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b)1997年12月 今世紀最大のエルニーニョ時
アトラスブイにより得られた海面水温と海上風の分布
(4) 海洋物質循環
 海洋における物質循環、特に炭素及びそれに関連した物質の循環は、気候変動と密接な関係があることが分かっているため、今まで多くの海域で集中的かつ系統的な観測研究が行われてきました。特に北西部北太平洋は、年間通しての海水温度が低く、しかも冬季には、荒天時が多いため、この海域では、二酸化炭素をはじめとする物質が大気・海洋間で活発にガス交換*1を行っていると考えられています。しかしながら当海域における冬季のガス交換の測定は、荒天のために極めて困難であるため、ほとんどデータが得られていないのが現状です。また、同海域は、栄養塩の蓄積された深層水(詳細はP55参照のこと)の湧昇海域でもあることから、植物プランクトンによる基礎生産力が年間を通して高くなっています。特にこの海域では、数多い植物プランクトンの中でも大型で、しかも効率よく二酸化炭素を固定するケイ藻類が優占種となっているため、表層で固定された二酸化炭素は、他の多くの物質とともに、中・深層へ活発に効率よく運ばれていくと考えられています。さらに、この海域には、北太平洋全域に広がる低塩分の中層水が存在することが確認されており、その移動・混合過程は、北太平洋の物質循環に重要な役割を果たしているといわれていますが、これについての総合的かつ長期的な調査は、未だ行われていません。そこで、海洋科学技術技術センターでは、1997年より、海洋地球船「みらい」を使い、同海域での本格的な海洋物質循環に関する調査に着手しました。
 
*1 ここでは、文字通り大気と海水との間で行き来するガス、特に二酸化炭素の出入りについて指します。大気中にはおおむね360ppm(ppmは濃度のを表す記号で、百万分の1の意味)の二酸化炭素が存在しますが、海水中には280ppm〜400ppm程度存在するといわれます。大気から海水中への取り込みは、ほとんどが波によって行われますが、この時、大気中と海水中の濃度差が大きいぼど、多く取り込まれます。
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図1時系列式セジメントトラップ(McLaneMark 7G−21)
1:チタンフレーム.2:イエローコーン.
3:コントローラー.4:ステッピングモーター.
5:捕集カップ.6:バッフル.
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写真1 時系列式セジメントトラップ(McLaneMark7G−21)








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