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2.アンケートの集計結果
 今回の実施内容についての評価を得ること、並びに次回以降のカリキュラム編成に際しての参考意見を入手するために、参加者全員に対しアンケート調査を実施した。
(1) 全般の内容に関するアンケート調査の結果(図1)
[1]内容全体について(図1−ア)
 本スクールの総合評価は、「A:とてもおもしろかった」が70.0%、「B:おもしろかった」が26.0%で、ほとんどの参加者から高い評価が得られた。
 
[2]本イベントを知った方法について(図1−イ)
 「学校の先生に聞いた」が50.0%で最も多く、次いで「友人に誘われた」が28.3%であった。一方、ポスターやインターネットを通して知った者は8.7%で、全体の1割にも満たなかった。この結果は、参加者の募集方法が、単にポスター等により情報を投げかけるだけでは効果が少なく、反面、以前、本イベントに参加した先生や生徒たちを通して募集を行うことなどが、応募者を増加させるのに極めて効果的であることを示唆した。
 
[3]日程について(図1−ウ)
 「丁度よかった」と答えた者が54.3%であったのに対し、「短かかった」と答えた者が43.5%を占めた。このうちの多く(18名)が4〜5日間の日程を希望していた。このように開催期間の延長を希望した生徒は、上記「ア」の問いに対して全員が「とてもおもしろかった」と答えていることから、本イベントに対する参加意欲の高さや、「さらに交友関係を深めたい」といった要望を持っていることが窺えた。
 
[4]参加人数について(図1−エ)
 「丁度よかった」が89.1%を占めたのに対し、「多すぎた」と答えた者は10.9%で、「少なすぎた」と答えた者は全くいなかった。この結果より、今回の受け入れ人員は適切であったと思われる。
 
[5]参加旅費について(図1−オ)
 55.6%の者が主催者側からの一部負担を望んでいた。援助を希望する金額についてはまちまちであるが、このうち自己負担が「10,000円以下」を希望する者は43.5%で、その他の者は「20,000円または半額」を希望していた。また、主催者側からの全額援助を希望した者は13.3%であった。これに対し「全額自己負担でよい」と回答した者は31.1%であったが、このうち1名を除いては近郊からの参加者であり、彼らの交通費の自己負担額は、全員3,000円未満であった。
(2) 講義及び実習等に関するアンケート調査の結果(図2)
 講義のみの科目は、「深海6500mの世界」「深海潜水300mへの挑戦」及び「潜水と人間」の3科目講義に実習を加えた科目は、「深海の生物」「海洋深層水」及び「地球環境と海洋」の3科目、実習のみの科目は、「ROV実習」「圧力体験実験」及び「体験潜水」の3科目、見学を主とした科目は、「深海調査機器」であった。
 これらの科目の中で、「A:とてもおもしろかった」という評価の割合が最も高かったのは「体験潜水」の87.0%で、次いで「圧力体験実験」の77.8%、「深海調査機器」の62.2%であった。さらに、上記の評価に「B:おもしろかった」という評価を加えると、「体験潜水」は100%となり、その他90%以上の評価を得たのは、「深海調査機器」「圧力体験実験」「深海潜水300mへの挑戦」及び「深海生物」であった。これらが高い評価を得た理由としては、「以前から興味があった」「普段できないことや未知の体験ができた」「体験談を聞いたり、本物の機器に触れることができた」といったものが主であった。
 一方、上記の科目に比べ「とてもおもしろかった」「おもしろかった」という評価の割合が低かったのは、「深海6500mの世界」の60.5%、「地球環境と海洋」及び「海洋深層水」の69.8%などであった。その理由は、「難しくて理解できなかった」「眠ってしまって理解できなかった」「興味がなかった」というものであった。しかしながら、これらの科目においてもAまたはBと評価をする者が6割以上であったことからみても、このような低い評価を下したのは、むしろ生徒側の取り組み姿勢が問われる問題であったと思われる。
(3) まとめ
 本スクールの実施に際し、本年度の主要な対象地域の生徒の募集は、教育委員会(または教育庁)の指導に基づいて実施したが、期待どおりの成果は得られず、大幅な定員割れとなった。そこで、締切り日の延長や募集範囲を近郊の学校へ拡大するなどの策を講じるとともに、上記の対象地域並びに近郊の高校に勤務し、以前本スクールに参加したことのある、もしくは生徒を推薦してくれたことのある教諭に対して協力依頼をしたところ、最終的に、第1回目23名、第2回目24名の参加者を得ることができた。このうち対象地域の学校からの参加者は、第1、2回目を合わせて18名で、その内訳は、兵庫10名(4校)、京都6名(1校)、滋賀2名(2校)であった。また、兵庫県と京都府からは、同じ教諭の推薦により、1校から6名ずつの生徒が参加した。同様な傾向が近郊の参加者にもみられ、1名の教諭が複数の生徒を推薦するといったケースが多くみられた。
 今回、このように遠方からの参加者を十分確保できなかった最大の理由は、教育委員会(または教育庁)の担当者の話や参加者からのアンケート調査の結果からも明らかになっており、「交通費の全額自己負担」であったと思われる。また、参加者の多くが、「以前、本スクールに参加したことのある教諭」または「以前から度々生徒を推薦したことのある教諭」からの推薦を受けていたことからみても、今回、多大な労力を費やしたポスターの配付などの方法よりも、教諭からの「口コミ情報」が極めて効果的であることが判明した。従って、今後の募集に際しては、上記の教諭を通して行うことにより、より多くの応募者を確保できるとの確信を得た。しかしながら、このような方法で募集を行った場合、応募者が1校に集中することや、新たな地域や学校からの参加が困難になるといった問題が生じる可能性があるので、教諭間のネットワークを通じて参加者を得ることなども検討しておく必要がある。いずれにせよ、より多くの応募者を得て、厳格な作文審査を行うことにより参加者を選ぶことができれば、すべての講義、実習において、今回以上の高い評価が得られること考えられる。
 今回のカリキュラムの内容は、体験学習の色合いを濃くするために、研究者たちの協力を得て、できる限り実技・実習を多く取り入れたが、これらの科目に関しては、極めて高い好感度を得た。従って、次年度のカリキュラム編成に際しては、今回のアンケート調査の結果などを参考にして、“いかに参加者に海洋研究に対する興味を抱かせることができるか”ということを念頭に置いて検討していく。
 
 図1 全般の内容に関するアンケート調査の結果(生徒コース)
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図1−ア 内容全体について
 
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図1−イ このイベントをどうやって知ったか
 
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図1−ウ 日程について








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