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五十三次
〔歌詞〕
〔前弾〕
 筆の鞘、 焚いて待つ夜の蚊遺より、香のすがりは簪の、算木も捨てて車座に、〔合〕 めぐり始める双六は、五十三次手の中に、投げ出す賽の目くばせに、〔合〕 壁にまじまじ大津絵の、振り出す遣手先払ひ、座敷踊りの中入に、〔合〕 仲居が運ぶ重箱は、姥が餅かとロ々に、〔合〕 坂は照る照る、鈴、鈴鹿の茶屋に、花を一本忘れて来たが、後でや、後で咲くやらそれ開くやら、よいやな、 よひの土山雨と見て、曇る差日を迎ひ駕、〔合〕 人目の関に門立の、赤前垂の夕照りに、おぢゃれおぢゃれの手を引いて、おっと泊りの床取れば、ン眠る禿の波枕、 七里も乗らぬ引舟に、綱手悲しむ憂き思ひ、〔合〕 一間に籠る箏の音は、岡崎岡崎女郎衆が端女郎、一夜妻から東路に、夜も、赤坂の後朝に、〔合〕 かざす扇の裏道を、〔合〕見付越すほど恐ろしき、音に聞こえし大井川、 岸の柳の寝乱れて、ここは島田の逗留かいな、さればいな、積もる情けの雪の日は、富士に雲助ぶらぶらと、〔合〕 格子の外の転び寝に、夢には三島箱根山、 ン上り下りの恋の坂、飛脚の文の神奈川や、 御存じよりの土産には、江戸紫のえ。








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