2.平成13年度CEFACT/LWGの活動
1.CEFACT第7回総会
国連CEFACT第7回コンファレンス及び総会は、2001年3月26日〜29日にジュネーブの国連欧州本部で開催されました。参加国は43カ国、国連機関及び国際機関30機関、参加者は149名でした。総会の冒頭、CEFACT運営グループ議長は、過去12カ月間の各作業グループの総括報告を行いましたが、その中で「ebXMLイニシアチブ」の進捗状況に言及して、予定通り2001年5月にebXMLの国際標準が完成する見通しであると述べました。新しくし採択された勧告は、勧告第28号「輸送手段の種類コード」及び勧告第32号「電子商取引のための自己規制(行動規範)」の2つです。また、次の勧告の改訂版および関連文書が承認されました。勧告第1号「貿易書類のための国連レイアウトキー」の追加文書が承認されました。勧告第1号の参照用付属書が承認されました。この付属書は、国連レイアウトキーが条約、法律その他の形で採用されている状況の詳細な報告書であります。「貿易手続簡易化に関する勧告要綱」の改訂版が承認されました。この文書は、貿易手続簡易化に関連する国連機関・国際機関の勧告を情報用資料として纏めたものです。勧告第19号「輸送形態コード」(第3版)、勧告第20号「貿易に使用される数量単位コード」(第5版)、勧告第21号「旅客、貨物形態/荷姿/包装材料コード」(第3版)、勧告第24号「貿易および輸送ステータスコード」が承認されました。その他、CEFACT/LWGの2001年度の作業計画として、勧告第31号を支援するソフトウェアの開発、ユーザーと認証機関の間のモデル約款の開発、電子署名、クロスボーダー認証及び認証機関の機能の調査、ebXML取引当事者協定書(ebXML TPA)の開発、オンラインADRなどが挙げられていました。
2.勧告第31号を支援するソフトウエアの開発
EDI取引当事者は、EDIメッセージによって売買契約や運送契約等を締結するためには、あらかじめEDI交換協定を結ぶ必要があります。EDIでデータ交換を行うためには、当事者間で合意したEDIの仕組みを使用し、できる限り広く合意された標準に従って行わなければなりません。この合意がEDI交換協定書であり、通常、その本体では、業務運用規約および当事者の権利義務に関する基本的条項を取決め、また技術的付属書において、情報伝達規約と情報表現規約について合意をします。1995に公布されたモデルEDI交換協定書(勧告第26号)は、EDI取引当事者に対してこのような交換協定書を作成するための基本的条項の雛形とコメントを提供しています。EDI交換協定書の作成・変更は署名のある書面で行われることになっています。その内容は電子データ交換を実施するための技術に拘束されています。また、EDI取引は、物品・サービスの需供に関する長期的・反復的に行われる当事者間の電子商取引に適しています。
一方、インターネットや電子商取引プラットフォームの普及にともなって、EDI以外の技術を使用する電子商取引(EC)が増加してきましたので、技術的なものに拘束されない電子商取引協定書を要望する声が高まってきました。これに応えるためにCEFACT/LWGは、モデル電子商取引協定書を開発しました。これが勧告第31号です。これは、EDI交換協定書と異なり、技術的付属書を必要としませんので、EC取引当事者は最初から電子メッセージで申込・承諾を行って契約を締結することが出来ます。これは、一回だけの取引にも反復的な取引にも使用できます。このモデルEC協定書は、一応、B2B取引を対象としていますが、B2C取引にも使用することが出来ます。このモデルEC協定書には、消費者保護に関する条項は含まれていないので、特にB2C取引の場合にはこのような条項を挿入する必要があります。その他、物品売買契約、保険契約、運送契約などでは、特約条項が挿入されることが多いので、モデルEC協定書を補完・支援するソフトウエアが必要になります。LWGでは、この趣旨にしたがって勧告第31号の普及・支援を目的とするソフトウエアの開発を有力企業に要請しています。
3.ebXML取引当事者間協定書の開発
2001年3月に開催されたCEFACT総会の冒頭で、CEFACT運営グループ(CSG)議長は、1999年11月に始まった「ebXMLイニシアチブ」の開発作業が順調に進んでいる旨を報告しました。これは予定通り昨年5月に完成して、同月に開催されたCSGで承認されました。LWGでは、ebXML実装標準に基づく「モデルebXML取引当事者間協定書」(ebXML Trading Partner Agreement: TPA)の開発を検討しています。LWGの説明によると、TRAは、それ自体が独立した協定(書)ではなく、EDI交換協定書の技術的付属書に含まれている情報伝達規約や情報表現規約などの取決めに関するもので、いわゆるプロトコル、仕様書、技術的付属書、メッセージ・インプリメンテーション・ガイトライン等の性格を持つ文書であるということです。ebXMLでは、各当事者がコラボレーション・プロトコル・プロファイル(Collaboration Protocol Profile: CPP)を作成し、ebXML準拠のレジストリに登録しておく必要があります。また、電子商取引を具体的に履行するためには、取引当事者(Trading Partners)間で相互にサポートしているビジネスプロセスやビジネス文書の送受信に使用する技術などについての詳細な情報を調整する仕組みが必要になるので、そのために当事者間でコラボレーション・プロトコル・アグリーメント(Collaboration Protocol Agreement: CPA)を取決める必要があります。LWGは、RosettaNetの開発したTPA(一般取引条件等に関する協定書)、特約条項、ポータル・サービス、XMLサービスおよびEDIサービスに関するTPAモジュールについて検討しています。
4.電子署名、クロスボーダー認証および認証機関に関するガイドライン
国境を越えて電子商取引が広く行われるようになると、電子署名のクロスボーダー認証が必要になります。そこで、電子署名の法的枠組みを構築するために、電子署名の法的確認に要する最小限の共通性と認証機関の最低基準を検討し、電子署名、クロスボーダー認証および認証機関に関する一種のガイドラインを作成する計画が提案されています。
5.モデル仲介協定書の検討
LWGでは、これまでにモデルEDI交換協定書(勧告第26号)および電子商取引協定書(勧告第31号)のようにエンドユーザー間のモデル協定書の開発に取組んできましたが、今後、登録機関や認証機関等の使用がますます増えることが予想されるので、エンドユーザーがこれらの仲介機関(Intermediary)とサービス契約を締結する場合の指針となるモデル仲介協定書(Model Intermediary Agreement)の開発を検討しています。まだ具体的な動きはありませんが、この種の協定書に通常挿入されるモデル条項の提案が計画されています。
6.オンライン裁判外紛争処理制度(ODR)の検討
電子商取引に関するEU指令(2000/3 lEC)第17条によって、EU加盟国は、電子的手段を含む裁判外紛争処理(Alternative Dispute Resolution: ADR)制度の整備が進められています。特に、インターネットを使用する電子商取引の急増に伴って、紛争も急増していますが、この種の取引には消費者が係わっていることが多く、また国境を越えて行われるので言語や裁判管轄などの問題が紛争解決の障害になっています。そこで、法廷外の公平、迅速、低廉、プライバシー保護などを充たす紛争処理制度が求められています。欧米諸国では、すでにオンラインADR(Online Alternative Dispute ResolutionまたはOnline Dispute Resolution: ODR)が実施されています。LWGでは、ODRに関する勧告案の検討に取組んでいます。
7.CEFACT第8回総会
7.1 第8回総会の概要
国連CEFACT第8回総会は、予定では2002年3月下旬に開催されることになっていましたが、復活祭の日程と重なるために延期されて、5月27日〜30日にジュネーブの国連欧州本部で開催されました。参加国は46カ国及びEC、国連機関及び国際機関24機関、参加者は129名でした。会議は、Mr. Christian Fruehwald(独)の議長の下で開催されました。総会の冒頭で、本総会事務局を務めるUN/ECE Trade & Timber DivisionのDirectorであるMdm. Carol Cosgrove-Sacksより、最近の貿易手続関係活動並びにWTO関係の活動について概略説明があり、UN/CEFACTの役割がますます重要になっているとの挨拶がありました。
7.2 法律連絡ラポータの再選
現在の法律連絡ラポータの任期はすでに2002年3月31日に満了しているので、2002-2004年の2年間の新法律連絡ラポータに、これまで第1ラポータであったDavid Marsh氏(英)および第2ラポータであったRenaud Sorieul氏(UNCITRAL)を再選しました。
7.3 国連CEFACTの国際標準に関する知的所有権
CEFACT法律連絡ラポータ(Mr. Marsh)は、国連CEFACTの成果物の一部として開発された国際標準について、開発された標準が幅広く使用されるために、全ての利用者に対して、ライセンス要件や特許権使用料なしで自由に利用可能であることが非常に重要であると述べました。総会はこれを支持しました。なお、国連CEFACTとOASISの共同で行われたた作業の結果である成果物または国際標準に関する知的所有権の全ては、国連が所有すべきであるとの意見がありました。他方、誰でも自由にこれを使用できるようにするためには、理論上そうであるかもしれないが、実際には不可能であるから、手続上、開発した企業がその知的所有権を登緑し、国連CEFACTの国際標準として広く一般の利用に供する形をとるのが実務的であるという意見もありました。
7.4 行動規範の普及
2001年3月に開催された第7回総会で勧告第32号が採択されました。この勧告は、オランダの電子商取引プラットフォーム(ECP.NL)が開発した電子商取引のための自己規律(行動規範)を支援するものです。LWGは、電子商取引に従事する取引当事者のための自律的行動規範の開発を、多くに国および国際貿易関係機関が、ECP.NLのイニシアチブを参考として、国家規模、国際的規模あるいは業界規模で行うことを支援してきました。
7.5 電子商取引に関する交換協定書およぴebXML取引当事者協定書の開発
勧告第26号(EDI交換協定書)および第31号(モデル電子商取引協定書)は、いずれも契約という手続によって電子商取引に関するルールと安全を図るという実務的解決策です。本稿の冒頭(第7回総会の項)に述べたように、国連CEFACTはOASISと共同でebXML標準の開発を進めてきましたが、この標準に基づいて電子商取引の当事者間で締結する「ebXML取引当事者間協定書(ebXML Trading Partner Agreement; ebXML TPA)の標準フォームの開発に携わっているEDIFICEおよびRosetta Netと協定を結びました。TPA標準フォームは勧告第26号に示されている電子商取引のルールを補完するものです。この開発作業が本年度に継続して行われる予定です。
7.6 電子署名のクロスボーダー認証
LWGは、エンドユーザーが電子署名の認証機関とサービス契約を締結する場合のモデル契約条項の開発作業を進めてきました。当初、この作業は2002年3月に終了する予定で着手されましたが、昨年9月11日米国で起きた同時多発テロ事件のため、作業が著しく遅れました。本件は、電子署名のクロスボーダー認証を実施するための標準を開発する作業に関連するもので、2003年のCEFACT第9回総会に勧告案として提出する計画であるということです。
7.7 オンライン裁判外紛争処制度(ODR)
LWGは、貿易取引に携わっている当事者間のeコマースから生じる紛争をオンライン裁判外紛争処理(Online Dispute Resolution; ODR)によって解決する勧告案の作成を進めてきました。昨年作成した勧告案(第一次)について多くのコメントが寄せられました。JASTPROからもコメントを提出しましたが、法律連絡ラポータによりますと、LWGはこれらを考慮に入れて大幅に修正した改訂案を準備し、本年7月にドイツのケルンで開かれるLWGの会議で審議する予定であるということです。
(朝岡良平)