2.特別委員会の開催と主要議題
特別委員会は8回開催されました。各委員会における主要な報告と質疑応答の要点を以下に記します。これらの報告は纏められて、本報告書に収録されていますが、委員会における質疑応答の中に大切な問題点が述べられているので、書き留めました(文責筆者)。
2.1 第1回貿易手続簡易化特別委員会(平成13年7月25日)
(1)平成13年度委員会活動方針について、[1] 事業計画、[2] 取組むべき課題及び各年度計画、[3] EDIセミナー、[4] CEFACT会議への出席などを中心に意見交換を行いました。
(2)CEFACTにおける最近の動向(朝岡委員長)
第7回CEFACT総会の概要およびCEFACT/LWGが取組んでいる主要課題について報告しました。
(3)ポストebXML体制および日本への導入の課題(菅又委員)
菅又委員から、2001年5月に完成したebXML仕様の実装について報告が行われました。また、伊東オブザーバから、"Progressing UN/CEFACT's e-Business Standard Development Strategy"と題する資料を用いてCEFACTの最新の動向について報告が行われました。
(4)「新総合物流施策大綱」(閣議決定、平成13年7月6日)について、事務局から報告が行われました。
2.2 第2回貿易手続簡易化特別委員会(平成13年8月29日)
(1)取組むべき課題および平成13年度報告書の構成について意見交換を行いました。
(2)委員長の提出した資料「国連ECE勧告第32号:電子商取引のための自己規制文書(行動規範)」および「Recommendation on E-Commerce Self-Regulatory Instrument (Code of Conduct)」に基づいて、自己規制文書(行動規範)の意義、オランダECP.NLのモデル行動規範、執行可能性、電子商取引における信用の構築、枠組み、諸原則(信頼性、透明性、秘密性)、モデル行動規範の構成及び内容について詳細な報告が行われました。
2.3 第3回貿易手続簡易化特別委員会(平成13年9月17日)
(1)国連ECE勧告第32号:電子商取引のための行動規範(朝岡委員長)
国連ECE勧告第32号(資料)に基づいて、次の各項目について詳細説明が行われました。
*行動規範の枠組み : 意思表示、定義、電子商取引行動規範の適用範囲、消費者に関する特別の問題点、執行
*信頼性 : 情報の信頼性、電子通信の承認、システム及び組織の信頼性、電子署名の種類の信頼性
*透明性 : 最適な情報の透明性、識別しうる商業通信
*秘密性及びプライバシー : プライバシー、秘密情報、知的財産権
(2)「国際物流改革プラン」(塩川イニシアチブ)に基づいて、事務局から、以下の報告が行われました。
本改革プランの基本的考え方の説明が行われた後、具体的施策として[1]国際物流トータルIT化プラン、[2]24時間物流時代に向けての対応、[3]ITを活用した迅速・適正通関の確保等。また、本改革プランによる効果として、[1]国際物流の効率化の進展、国際競争力の強化、[2]関連事業者の収益機会の拡大、IT関連機器等に対する需要の拡大などの経済効果。
2.4 第4回貿易手続簡易化特別委員会(平成13年10月24日)
(1)電子商取引のための行動規範について(朝岡委員長)
前回に引き続いて、国連勧告第32号に関する詳細説明が資料に基づいて、以下のように行われました。(以下のカツコ内は、該当項目に関連する他の勧告、UNCITRALモデル電子商取引法などの条文を示す)
Appendix I:優先的項目集
Appendix II:モデル条項集
*電子商取引行動規範の適用範囲
*消費者に関する特別の問題点(国連勧告26号、31号)
*執行(モデル法5条)
*情報の信頼性
*電子通信の承認(モデル法11条、12条)
*システム及び組織の信頼性(勧告26号)
*電子署名の種類の信頼性(モデル法5条、勧告26号、31号)
*最適な情報の透明性(勧告26号・7章、31号・1章)
*識別しうる商業通信
*秘密性及びプライバシー(勧告26号、31号)
*秘密情報(勧告31号)
*知的財産権
Appendix III:参考文献
Appendix IV:オランダ電子商取引プラットフォーム(ECP.NL)
(2)TPAイニシアチブについて(朝岡委員長)
まず、LWGロッテルダム会議について報告があり、同会議で配布された資料に基づいて、「TPAイニシアチブ」(Trading Partner Agreement Initiative)の詳細な説明が行われました。
2.5 第5回貿易手続簡易化特別委員会(平成13年11月21日)
(1)ICC「電子的呈示に関するUCPの補遺(eUCP)」について(朝岡委員長)
電子貿易取引ルールの中に、貿易決済ルールが含まれるが、電子決済がどのような形で定着するのか、現在はなにも分かっていません。ICCの「インコタームズ」が1990年に改訂されたとき、紙の書類に代えて、電子メッセージの使用を認めましたので、いずれは、「信用状統一規則」にも電子メッセージが導入されるものと考えられていました。しかし、1993年の信用状統一規則改訂(現行のUCP500)でも時期尚早とのことで、電子メッセージの導入は見送られました。2003年の改訂には、電子メッセージが導入されるのではなかろうかと一般に期待されていますが、現段階では、改訂の予定がないとのことです。UCP500の補遺(Supplement)である「eUCP」について、UCPの関連条項と比較して、詳細説明が行われました。この後で、貿易金融の現状について意見交換がありました。
(2)以下の資料が配布されて、事務局から説明がありました。
[1] Legal Working Group Minutes of AFACT(事務局)
[2] eTrust Online Mark Program(KIEC)(事務局)
2.6 第6回貿易手続簡易化特別委員会(平成13年12月19日)
(1)第1回eBTWG会議報告(菅又委員)
菅又委員から第1回eBTWG会議について、以下の趣旨の報告があり、これに関連して質疑応答が行われました。
ebXMLは、2001年5月に仕様の第1版ができて、そのうちビジネスコアコンポーネントについてUN/CEFACTが引き受けることになりましたが、その具体的体制として(2002年の新組織設立までの繋ぎとして)eBTWGが一年間のアドホックWGとして設立されました。ebXML仕様自身は、「企業間の電子化した情報交換を共有したビジネスプロセスの上で実行して目的とするビジネスを遂行しよう」というもので、それを「電子ビジネスコラボレーション」という言い方をしています。これを実現するサービスとして、ベンダーは「ウェブサービス」というものを発表しています。それに載せる業務モデルと情報要素の標準化の検討が10年来続いています。5月のebXMLの最初のバージョンはまだ不備であり、多数のプロジェクトがeBTWGの中で立ち上がっています。コアコンポーネントについては、9つの技術レポートを提出して終わっているが、それを一本化して整合性のある仕様に纏め上げました。ビジネスプロセス業務モデルを作るに当っては、REA(Resource Event Agent)─いわゆる取引の参加者と取引のイベント(契約・配送)とそこで扱われるリソース(お金、品物)との関連性をどう記述するかの標準化により、業務プロセスモデルに落としやすいような方策を考えています。プロセスモデルは業界別にカタログオブコモンビジネスプロセスという形で登録していきます。
第2回は来年1月シアトルで開催され、第3回目で終了して、新しいEEGに引き継がれることになっています。日本からの参加は、伊東さんと2名のみで、韓国などに比べると遅れているため、今後専門家の参加をお願いしているところです。細分化されているので、他のグループが何をやっているのか見えません。なお、世界的にebXML対応製品が出始めており、ワールドワイドのプロジェクトも走り始めており、国内においても実験プロジェクトが始まっています(JEITA)。韓国(KINET), 自動車業界は国レベルのレポジトリーを核に開発中です。これに対して、日本では通信(通信プロセスやウェブサービス)のところから入っています。ebXMLは徐々に始まりつつあるという段階で、意味情報としては世界的に混沌とした状態にあります。
ebXMLをコアにしてUN/CEFACTの組織の見直しをしているのかという質問に対して、伊東オブザーバは、CSGでその議論を行っており、2月までに結論をだして5月の総会で承認を得る手続きとなっていると説明されました。
LWGの説明では、ebXMLに基づくTPAは今までの交換協定書と異なり、技術的特徴に関連するようなアグリーメントを作成する計画があるとのことですが、という質問に対して、菅又委員は次のように述べています。有効性のためには技術的協定をベースに法的バックグラウンドとの整合が必要です。ロゼッタネットは上位レベルを中心にした交換協定の範疇となっています。ebXMLは人と人との話ではなくて、サーバ間で自動的に行う下位レベルの作業です。上位レベルと結びつかないとLWGとしては意味がないと思われます。ebXMLではテクニカル面しか話されていない。LWGから参考としてでているロゼッタネットの資料はたたき台であります。
伊東オブザーバは、TPAについて次のように補足説明されました。ebXMLの世界では、CPP(Collaboration Protocol Profile)とCPA(Collaboration Protocol Agreement)があります。CPPは会社の業務内容や扱い商品を表し、オープンなマーケットでの取引相手探しに使用され、一方、CPAが今話されているもので、その中身は登録されたアグリーメントに基づき取引当事者の双方がこれに合意した上で商売が開始されるというITレベルの取り決めであると言えます。いわゆるEDI交換協定書とは内容が異なるものです。
(2)TEDIの現況について(四方田委員)
TEDIがようやく実用サービスインとなったので、「TEDIの現状」及び(株)日本電子貿易サービス(Repository Service Provider)とテディ・アドバンスト・ネットワーク(株)(Application Service Provider)のパンフレットに基づいて、四方田委員からTEDIの現状説明が行われました。
2.7 第7回貿易手続簡易化特別委員会(平成14年1月23日)
(1)船会社から見た電子商取引の現状と促進のための今後の課題(早坂委員)
報告書原案について説明があり、質疑応答が行われました。船会社から見た「電子商取引の現状」について、「一般に、電子商取引というのは民間同士の商取引の電子化と解釈されているので、B/L,保険関係手続、船積手続などを包含したものとは法的リスクなどが異なるのではないか」との質問がなされました。早坂委員は、「電子商取引は契約の世界で、手続は電子商取引の中には含まれないと思う。商取引は契約の申込と承諾をめぐる世界であり、その結果の履行と法律的効果をいかに実現できるかということを局限して述べている」と答えられました。
また、「法的問題とかリスクに対するセキュリティが多く係わってくるのは電子商取引の中でも、商品の売買契約が主であり、売買成立後に物流が付属して出てくるが、物流では電子的に契約した物流業者に対してインストラクションを出すのみであり、そこには法的問題やリスクの問題はあまり大きくはクローズドアップされていない。そこにはおのずと境界線があるのではないか」との意見がありました。これに対して、早坂委員は、「今一番リスクの大きいのは貨物のデリバリーである。トラッカーが受け荷主の正当な代理人であることの確認であり、この点が電子化でも大きなポイントになる。ボレロでも、途中で紙に戻す場合に"確認"の問題がある」と述べられました。
他の委員から、「紙の世界で潜在化していたものが、電子化で顕在化してきたこともあり得るのではないか。また途中まで電子化されていたものを紙に戻すということは、TEDIでも難しい問題がある。現場がレスペーパー化していると紙に戻すことは難しくなる。全体を電子化するのが正しい方向と思う」との意見がありました。
(2)電子商取引の国際標準化動向(菅又委員)
ebXMLの基本的考え方は、インターネットの時代は人とネットワークとの係わり合いであります。これからはコンピュータ(ビジネス)対コンピュータ(ビジネス)がダイレクトにコミュニケーションを図っていく方向性をみているのがebXMLです。インターネットのウェブサービスソリューションも同じ方向に動いています。本稿の構成は、1. ebXMLの必要性、2. ebXMLの概念、3.では、本体としてebXMLのアーキテクチャーとして5つの構成要素である[1]コラボレーションプロトコル合意(CPA)、[2]ビジネスプロセス、[3]コア構成要素、[4]レジストリ・レポジトリ、[5]メッセージングサービス、を紹介しています。
アプリケーションtoアプリケーションがebXMLになると、これまでとどう異なるのか、という質問に対して、菅又委員は次のように答えられました。
インターネットの前のEDIは、アプリケーションtoアプリケーションです。インターネットで相手側のアプリケーション毎に人間がダイレクトにアクセスし対応しているのがWEB/EDIです。それと昔のEDIの融合体をインターネット上で実現しようとしているのがebXMLです。定型的な仕事は旧来EDIでインターネットを使わず、頻度の少ないのはインターネットで行われているが、それを推し進めているだけ。量の多い反復業務は個別に両方でアプリケーションを組んで自動的に製造系やジャストインタイムなどで既にやられています。電子的なコラボレーションを組んでやっている。それを汎用的にやって行こうというもの。個別に組むと何千万円とかかるものを2桁くらいにするのが狙いです。
データボリュームやビジネスが多方面にわたるユーザーでもebXML指向になるのかとの質問に対して、次のように答えられました。
ebXMLは幅が広い。通信、情報面では今のEDIFACTと変わりない。コラボレーションになると、今のEDIFACTベースでやっているのとは別のエリアになる。単なる受発注でなく、リアルタイムでやるとかネゴシエーションなど人間が介在する場合にebXMLは有効となる。1対1で定量的にやっているのは現状のバッチ処理が最も効率的である。また顔の見えない相手と信用をどう形成していくかがポイントといえる。
(3)貿易取引電子化の最新動向(四方田委員)
テーマは「貿易取引電子化の最新動向」です。荷主の立場からみた動向を説明します。なるべく多くの人に読んでもらえるように、内容はEDIセミナーをベースにしました。事例として、TEDIを取り上げているが、ボレロも比較的対象として取り上げました。実際の仕組みとして両方が出てきており、両方で頑張れば全体の電子化促進に繋がるのではないか。荷主の立場から考えるべきところであり、ユーザーとして噛み砕いて書いてみたいと考えています。
(4)NACCSにおけるIT化の動向(飯田委員)
「NACCSにおけるIT化の動向」というテーマで、政府の施策の中でNACCSが動いている現状を具体的に纏めています。港湾EDIが1月28日から本格的に動くということやカペス(CuPES:税関手続申請システム)についても述べるつもりです。大きな流れとしては、ワンストップ化、G7の標準化・簡素化、シングルウインドウ化、オープン化と4つのキーワードを挙げて整理しました。なおオープン化のところでは、ポリネットとの連携・接続、またD/Rの重複やデータフォーマットの相違なども付け加える予定です。オープン化では、ハブシステムとなるNACCSと民間システムとの連携の話は出ているが、具体的にはその動きが見えません。
(5)オンライン裁判外紛争処理(ODR)に関する勧告案について(朝岡委員長)
「オンライン裁判外紛争処理(ODR)に関する勧告案」、「ODR勧告案に関する委員長の追加資料」に基づいて、ODRサービス・プロバイダーの現状、ADR/ODR、電子署名及び消費者保護に関する法律、指令、ガイドラインなどの説明があり、またEU域内における法廷外紛争処理ネットワークの動向について紹介が行われた。この勧告案は、オランダのECP.NLが作成したものです。インターネットによる電子商取引はクロスボーダー的性格をもつのであるから、紛争が生じた場合、その処理(和解の斡旋、調停、仲裁)はADR/ODRという形で行われるようになると思われるが、十分時間をかけて検討する必要があります。とりあえず、本件については、LWGメンバーの立場からコメントを提出することになりました。
2.8 第8回貿易手続簡易化特別委員会(平成14年2月20日)
(1)貿易取引電子化に係る動向と銀行から見た現状の課題(山本オブザーバ)
十都委員の代理人として、山本オブザーバから、「貿易取引電子化に係る動向と銀行から見た現状の課題」について報告が行われました。ボレロ、テディ、アイデントラス、スイフト関連の4つのプロジェクトについて説明し、次にそれぞれの機能分類について比較整理され、さらに貿易取引における銀行の役割と貿易取引電子化推進の銀行にとっての意義を纏めた上で、今後の課題についても言及されました。成功事例が今後の普及の鍵であり、制度的課題などの見直しにより電子化に対応した環境が一国も早く整っていくことを期待して、結びとしました。
(2)損害保険における電子商取引市場(塩野委員)
損害保険業界では従来のホストに加えてPC環境が必要になってきました。ボレロ、テディに参加しているが、それほど進んでいません。貿易保険証券では内容が最後まで保たれていれば良く、1対1で済んでしまう面があります。Web活用で客先での保険証券が発行されていますが、目標は入力をしなくても済むようにすることです。アイデントラス、e−アジアマーケットプレース、ワールドゲートウェイなどに実験参加しています。業界として、テディ、ボレロはどちらが普及するのか早く知りたいが、現在は様子見の状況です。簡素化したらコストを回収できるかとうとそうではない。中小はそう簡単に取組むのは難しい。標準化は各社バラバラでシステムも異なっています。皆に合わせるという考え方は出てこない。各社がそうなるような土壌作りが必要です。
山内委員から次のような補足的説明が行われました。保険業界は、EDIFACT標準化の草創期において取組みがなされなかったために、各社、各様の情報化、EDI化対応がなされたので、環境が整いつつある現段階において、標準化をやろうとしてもそれだけ難しく、"too late"の感がある。中国などのように後発で何もない状態からトップダウンでできればすばらしいものができる。銀行・保険業界のEDI化への取組み姿勢が顧客指向の標準化になっていないように思える。船社、ターミナル、フォーワーダー業界は顧客指向で顧客の利便性を優先して標準化している。
(3)港湾物流EDIの現状と課題(山内委員)
配布資料「港湾物流EDIの現状と課題」に沿って、次の主要項目を追って説明された。[1]民間EDIネットワーク、[2]港湾物流EDIの普及状況、[3]民間業務EDI低迷の原因と問題点、[4]EDI化促進のための方策、[5]民間の情報化、[6]EDI化普及・推進組織の対応、[7]これからの港湾物流情報ネットワーク。また、報告書にも記載されているが、次の問題提起が行われた。印刷方式がレーザプリンタを使ったカット紙が主流となっているが、ハード対応船社(EDI未対応)のD/R,CLPはワンライティング方式となっているため、ドットインパクトプリンタおよび130種類以上の船社個別のD/R,CLPフォームに対応する帳票印刷ソフトを導入する必要があり、これがコスト負担となっている。簡単に導入できるカット紙にフォーム印刷する統一標準書式をJASTPRO主導で進めて欲しい。
(4)オンライン裁判外紛争処理(ODR)に関する勧告案(朝岡委員長)
委員長より、CEFACT/LWGに提出したODR勧告案に関するコメント(英文)についての趣旨説明が行われた。