はじめに
欧州舶用工業は、造船業の低迷にもかかわらず強い競争力を有し、世界の舶用機械のシェアの約三分の一は欧州企業が占めると言われております。欧州舶用工業の強さの一つに機器システムの提供能力の高さが揚げられますが、最近の特長の一つとして、機器システム提供能力の更なる強化の動きが見られます。例えば、Rolls-Royceが1999年11月にVickersを買収しましたが、その目的の一つが機器システムの提供力の強化でした。また、Wartsila は舶用推進システム提供能力を強化するため、2002年1月、John Crane-Lipsを買収しました*。さらに、航海・通信機器メーカーでは、近年、システム提供能力の強化を目的の一つとした合併やグループ化の動きが見られます。
* 正式には、規制当局の承認(2002年の早い時期の予定)の後、買収が完了する予定
本報告書は、以上のような状況を踏まえ、欧州舶用メーカーのシステム供給能力強化に関する動向を把握するため、特にシステム化が進んでいる航海・通信機器システム及び推進システムを取り上げて実施した調査結果を取りまとめたものです。
第1編では、はじめに全般的な欧州舶用工業の現状と動向について取りまとめました。その後、航海・通信機器システムについてメーカー数社の訪問調査を行った結果を取りまとめたほか、推進システムについては、昨年度の調査「欧州における主機関の動向調査」において収集した欧州エンジンメーカーのシステム供給能力強化に関する動向を最近の情報を加えて再整理しました。
第2編には、訪問調査を実施した航海・通信機器メーカーについて取りまとめた企業レポート(歴史、組織、財務状況、製品、サービス等)を掲載いたしました。
本報告書が関係各位のご参考となれば幸いです。
2002年3月
Japan Ship Centre(JETRO)
((社)日本舶用工業会共同事務所)
舶用機械部 ディレクター 近藤 敏和
リサーチャー リチャード・ペティット