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2.4 マラッカ海峡
 マラッカ海峡は東西海上交通の要衝であり、多数の船舶が往来する。1987年から1998年にかけての船舶通航量を表7に示す。
 
表7 マラッカ海峡通航船舶数
タンカー コンテナ 貨物船 タグ 漁船 RoRo 客船 軍艦 その他 総数
1987 10,769 2,478 13,248 1,190 1,507 512 249 51 373 30,377
1988 13,621 3,508 12,551 1,489 2,358 614 251 82 232 34,706
1989 12,222 4,753 11,210 1,311 1,907 805 209 93 218 32,728
1990 11,298 4,506 11,502 1,316 1,773 738 243 73 382 31,831
1991 10,719 4,658 10,658 1,457 1,262 852 212 50 483 30,351
1992 11,307 5,397 11,554 1,386 1,477 1,104 314 57 353 32,949
1993 11,177 5,582 12,298 1,405 1,544 1,284 257 51 400 33,998
1994 11,069 5,744 12,320 1,579 1,622 1,130 440 33 509 34,446
1995 8,915 5,149 10,386 1,765 1,743 1,218 649 30 496 30,251
1996 9,815 5,787 10,437 1,920 1,606 1,226 554 19 308 31,672
1997 8,924 5,286 10,092 1,615 1,227 1,091 437 9 213 28,894
1998 10,537 6,853 10,994 1,987 1,366 1,272 727 3 194 33,944
(出典)半島海事局資料
 
[1]航行安全維持施設
 1998年12月に強制船位通報制度が発効し、これにより1999年に通報した船舶数は43,964隻となった。しかし、この数字は実際にマラッカ海峡を通過した船舶の約半数とされている。マラッカ海峡を通航する船舶数は毎年1.3%の割合で増加している。
 これらの船舶が安全に海峡を航行でき、船舶の衝突や油流出等を防止するため、VTS(Vessel Traffic System)が利用されている。同システムはレーダーサイトをランカウイ島及びマラッカ海峡に沿って8ヶ所に配置され、船舶交通を監視・管理するものである。同システムは首相府国家安全保障局が所有し、AMPコーポレーションにより維持管理され、半島海事局により運営されている。
 
[2]海賊問題
 国際海事局(IMB)によると、マラッカ海峡での海賊被害は2000年、史上最多記録を更新、インドネシア領海に次ぐ世界第2の危険地帯となった。マレーシアの対策本部ではこれまでに2つの海賊組織を捕らえているが、うち1つは1日当たり約600隻を動員して海賊行為を行う世界的な組織と言われている。IMBが発表したリポートによると、図2のごとくマラッカ海峡では2000年1年間に75件の海賊事件が発生し、わずか2件しかなかった1999年に比べて大幅に被害が拡大した。またマラッカ海峡以外のマレーシア領海では21件の事件が報告されている。世界全体で報告された事件は469件。このうちインドネシアで119件とおよそ4分の1を占める海賊事件が発生しており、特にブラワン、ドゥマイ、ジャカルタ、メラク、サマリンダ、タンジュンプリオクなどの港付近での発生率が高い。このほか危険な地域に定められたのはバングラデシュ(55件)、インド(35件)、エクアドル(14件)の各領海や紅海(13件)。それぞれの事件件数は前年から2倍以上に増加している。またアフリカ東部ソマリア周辺の海域も貨物強奪事件の発生率が依然高く、IMBでは船会社などに対し、沿岸から少なくとも50マイル離れて航行するよう勧告している。一方、99年より事件件数が減少したのはシンガポール海峡。99年の14件から2000年は5件にまで減っている。こうした海賊事件が国際問題に発展していることを受け、国連も解決に乗り出す方針。また、これらの事件には日本の船舶も多く巻き込まれていることから、日本の海上保安庁も海賊撃退に向け関係各国と協力する方針を示している。
 
図2 海賊発生件数推移
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[3]電子海図
 2000年11月にマレーシア海軍水路部はランカウイ島からポート・クランに至るまでの350海里をカバーした電子海図を完成させた。また、ワン・ファザム・バンクからシンガポール海峡までの電子海図については、マレーシア、シンガポール、インドネシア、日本の4カ国の合同電子海図作成プロジェクトの下、2001年中に整備されることとなっている。なお、本プロジェクトは日本財団が支援している。
 
[4]海上電子ハイウエー構想(MEH: Marine Electronic Highway)
 国際海事機関(IMO)が提唱している構想で、電子海図をベースにDGPS、AIS、衝突防止ソフトを結合し、さらに海象、気象、海洋汚染データ等も取り込み、リアルタイム環境監視システム、環境情報システムとしても利用できるようなシステムを構築しようとするものである。したがって、利用者は海運関係者のみにとどまらず、海上警備当局、海洋汚染防止管理者、漁業関係者等にとっても有益なシステムとなりうる。カバーする海域としては、第1期として、マラッカ海峡を対象としているが、将来的には中東から日本に至るまでのシーレーンをカバーする計画である。
2.5 船員
 2000年の運輸省半島海事局に登録された船員数(サバ、サラワク海事局の登録者を除く)は53,903人で、うち22,152人は外国人であった。
 マレーシアの船員養成機関としては、唯一、マラッカに海事大学(MAM: Maritime Academy of Malaysia)がある。同大学の卒業生は運輸省海事局の実施する船員資格試験に合格した後、船員として活躍することになる。








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