第1章 マレーシアの概況
1.1 基礎データ
国土面積: |
329,733km2(日本の約87%) |
気候: |
高温多湿で四季の変化はほとんどなく、わずかに乾季雨季の区別がある。 |
人口: |
2326.4万人(統計局2000年9月発表) |
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年平均増加率2.4%(96年〜2000年の5ヶ年間) |
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民族の内訳は以下の通り(単位:千人)。 |
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ブミ・プトラ 62.8% |
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マレー系 50.8% |
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非マレー系 12.0% |
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華人 26.3% |
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インド系 7.5% |
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その他 3.5% |
主要言語: |
マレー語(国語)、英語、広東語、福建語、タミール語など |
宗教: |
イスラム教(国教、ただし信教の自由は保証)、仏教、儒教、ヒンズー教など |
首都: |
クアラルンプール(KL) (人口137万人、2000年央) |
通貨: |
RM(マレーシア・リンギット) |
対米ドルレート: |
1リンギ=US$0.263=31.284円(2001年8月31日現在、対ドル固定相場制) |
1.2 政治
独立年月日: |
57年 半島11州でマラヤ連邦が発足 |
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63年 シンガポール、サバ、サラワクを含めてマレーシア連邦が成立 |
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65年 シンガポールが分離独立 |
政体: |
立憲君主制 |
元首: |
サイド・シラジュディン(ぺルリス州統治者、2001年12月即位、任期5年、国王は9州のスルタンから互選) |
議会: |
国会(連邦議会)は上院と下院からなる二院制を採用、下院に大きな権限がある。 |
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下院 193議席、任期5年 |
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上院 69議席、任期3年 |
行政責任者: |
国王が下院において多数の信任を得ている議員から内閣総理大臣を任命する。首相の意見に基づいて上下両院の議員から他の大臣を任命する。政府は1府24省から成り立っている。 |
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現内閣は統一マレー国民組織(UMNO)の総裁でもあるマハティール・モハメッド首相の下で組織されたもので「国民戦線内閣」と呼ばれている。マハティール・モハメッド首相の現任期2004年11月まで。 |
内閣: |
独立以来一貫して統一マレー国民組織(UMNO)を中核とする与党拡大連合党「国民戦線(Barisan National)」が政権を担っている。マハティール第4代首相(1981年7月就任)は下院193議席中148議席(2001年4月現在)を占める「国民戦線」を率い、20年の長期安定政権を保っている。また、1999年1月8日の内閣改造でアブドラ・バダウィ外相(当時)が副首相兼内相に任命され、さらに同相は2000年1月3日に開催されたUMNO最高評議会で、アンワール副首相解任後長く空席であったUMNO筆頭副総裁に選任する提案が全会一致で可決され、さらに、同年5月に開催されたUMNO総会で筆頭副総裁に就任し、マハティール首相の後継としての地位を固めつつある。 |
政党: |
与党連合・国民戦線(BN)(148):統一マレー国民組織(UMNO)(72)、マレーシア華人協会(MCA)(28)、マレーシアインド人会議(MIC)(28)等 |
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野党:全マレーシア・イスラム党(PAS)(27)、民主行動党(DAP)(10)国民正義党(Keadilan)(5)、他(括弧内は下院議席数) |
外交: |
アセアン重視、非同盟中立 |
軍事: |
総兵力 14.6万(陸軍 12.7万、海軍 1.0万、空軍 0.9万)人 |
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国防予算対GDP比 1.8%(2000年) |
1.3 経済
2000年度の基礎的経済指標
実質GDP総額: |
3,407億リンギ (=897億ドル) |
1人当たりGDP: |
3,950ドル |
実質GDP成長率: |
8.3% |
消費者物価上昇率: |
1.6% |
失業率: |
3.1% |
就業人口構成比: |
農林水産業15.2%、製造業27.6%、建設業9.2%、サービス業47.9% |
経常収支: |
319億リンギ (=85億ドル) |
貿易収支: |
799億リンギ (=210億ドル) |
外貨準備高: |
295億ドル |
対外債務残高: |
415億ドル |
1991年にマハティール首相は2020年までに先進国入りを目指す「ビジョン2020」を発表、95年にはマルチメディア産業育成を目指し、「マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)」計画を発表した。精力的な政策を次々と打ち出すことにより、96年には実質GDP成長率10.0%を達成し、87年からの10年間の平均GDP成長率は8.5%となった。
しかしながら、97年7月のタイ・バーツ急落に端を発したアジア通貨・経済危機以降、マレーシアの通貨・株価ともに下落し、98年第1四半期の実質GDP成長率が13年ぶりのマイナス成長(−1.6%)を記録、政府は財政出動・金融緩和の経済刺激策を導入すると同時に、外為取引規制強化策および1ドル=3.8リンギの固定相場制を導入した。
99年第2四半期プラスに転じたマレーシアのGDP成長率は通年で6.1%、さらに2000年も通年で8.3%と高成長を記録したが、2001年になって減速し、米国や日本の経済低迷に加え、米国テロ事件の影響から、製造業の輸出と生産部門の成長率が2けたの落ち込みを示し、第3四半期はマイナス1.3%と再びマイナス成長へと突入した。政府は2001年のGDP成長率予測を当初の7.0%から2.0%に下方修正し、2002年は5.0%を見込んでいる。
マレーシアGDP成長率の推移(四半期ベース)
1.4 貿易
2000年度の貿易実績
輸出額: |
982.39億米ドル |
輸入額: |
822.18億米ドル |
貿易収支: |
+160.21億米ドル |
輸出構造: |
電子・電機61.8%、パーム油2.7%、石油・LNG6.8%、化学・石油製品6.2%、丸太0.7%、製材0.8% |
主要輸出先: |
アセアン諸国26.2%(シンガポール18.4%)、米国20.5%、EU13.7%、日本13.1%、台湾3.8%、香港4.5%、韓国3.3%、中国3.1% |
輸入構造: |
中間財73.8%、資本財15.1%、消費財5.6% |
主要輸入先: |
日本21.1%、アセアン諸国23.9%(シンガポール14.3%)、米国16.6%、EU10.8%、台湾5.6%、韓国4.5%、中国3.9%、香港2.8% |
対日輸入額: |
173.32億米ドル |
対日輸出額: |
128.26億米ドル |
対日貿易収支: |
−45.06億米ドル |
統計局によると、2000年通年の貿易黒字は609億リンギとなり、前年の731億リンギから縮小した。国内経済の回復に伴い、輸入の伸びが輸出を上回った。輸出総額は前年比16.1%増の3,733億リンギ。このうち電子・電気製品の輸出額は同18.5%の2,196億リンギだった。一方、輸入総額は25.7%増の3,124億リンギに急伸した。内訳は、中間財が25.6%増の2,306億リンギ、資本財が47.7%増の471億リンギ、消費財が17.2%増の174億リンギとなっている。
2001年に入ると、1〜9月累計の輸出は前年同期比−9.5%の2,510億ドルと激減しており、主に電機・電子機器の輸出の落ち込みが顕著となっている。
表1 通年の貿易額
(単位:億リンギ)
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2000年 |
1999年 |
増減 |
輸出総額 |
3,733 |
3,216 |
16.1% |
内、電子・電機 |
2,196 |
1,853 |
18.5% |
輸入総額 |
3,124 |
2,485 |
25.7% |
貿易黒字 |
609 |
731 |
-16.7% |
(出所)統計局
1.5 投資
2000年の製造業向け投資は、世界的なエレクトロニクス製品の需要増と国内経済の回復に伴い急速に改善した。2000年にマレーシア工業開発庁(MIDA)に提出された投資案件の申請総額は458億7,000万リンギと1999年の3倍以上に増加。このうち外国直接投資が3分の2を占めた。申請された投資件数は943件と、99年の776件から21.5%増加した。件数と金額の伸びを比べると、大型の投資案件が増えたことが分かる。申請総額のうち274億リンギが新規投資、残りの184億7,000万リンギが既存施設の拡張・多様化計画だった。
分野別では、電子・電気セクターが183億リンギで最大。以下、化学・石油製品(107億7,000万リンギ)、製紙・印刷・出版(58億2,000万リンギ)、食品(15億6,000万リンギ)、基礎金属製品(13億9,000万リンギ)となっている。
表2 製造業向け投資案件の申請・認可総額
(単位:億リンギ)
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申請ベース |
認可ベース |
  |
2000年 |
1999年 |
増減 |
2000年 |
1999年 |
増減 |
国内企業 |
162.1 |
49.9 |
+224.8% |
137.2 |
47.5 |
+188.8% |
外国企業 |
296.6 |
90.4 |
+228.1% |
198.2 |
122.7 |
+61.5% |
合計 |
458.7 |
140.3 |
+226.9% |
335.4 |
170.2 |
+97.1% |
(出所)マレーシア工業開発庁
表3 国別外国投資申請総額
(単位:億リンギ)
  |
2000年 |
1999年 |
増減 |
米国 |
91.0 |
25.5 |
+256.9% |
オランダ |
55.5 |
3.8 |
+1360.5% |
中国 |
32.6 |
0.5 |
+6420.0% |
日本 |
27.9 |
13.0 |
+114.6% |
シンガポール |
27.8 |
10.0 |
+178.0% |
ドイツ |
18.4 |
1.4 |
+1214.3% |
(出所)マレーシア工業開発庁
一方、2001年上半期の外国直接投資の認可額は118億リンギで、前年同期の32億リンギから3倍以上の増加となった。マレーシア工業開発庁(MIDA)は、日本からの直接投資申請件数が2001年上半期に53件となり、前年同期の51件をやや上回ったとしている。投資申請額は10億3,000万リンギで、このうち約半数は電子・電気製品部門への投資、これに化学、機械部門などが続く。
製造業セクターでは、アジア経済危機の影響で資金難に直面した国内製造業セクターの振興策として1998年に導入された外資制限の緩和政策が、2003年12月まで継続されることが正式に決まった。2001年の経済成長率が鈍化するとの見通しが強まる中、政府は緩和政策を継続することで外資を呼び込み、安定成長を目指す方針。マレーシアでは従来、製造事業での外資100%出資の条件として、◇製品の80%以上を輸出する◇ハイテク関連や戦略的に重要とされるプロジェクトを実施する―のどちらかを満たすことが条件となっていたが、この政策により特定分野を除き外資による全額出資が可能になっている。当初の適用期限は1998年7月〜2000年12月。この時期に認可を受けた企業については、期限後も出資比率を維持できることが決まっていた。