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IV-2. プロジェクトの詳細
 7件のプロジェクトについて、目的、他のプロジェクトとの関係、研究開発プロジェクト計画、発表された結果を以下にあげる。
超高圧ウォーター・ブラスティング
 本プロジェクトの目的は、修繕船等の船体水洗い工程の総コストを大幅に低減する方法を開発することである。同時に、排水に影響を及ぼす重金属を含む物質の流出を最小限に抑える成果が期待される。目標は、船体水洗い工程に関連する総コストを50%低減することである。
 作業目標:(1)ウォーター・ブラスティング工程における工法の改良、(2)現在利用できるウォーター・ブラスティング素材、供給、機器の基礎的な研究、(3)排水に重金属汚染が流出することを最小限に留める環境対策の提言、(4)改良型ウォーター・ブラスティング工程の造船所における実証。
 現時点では、超高圧ウォーター・ブラスティング工程の標準工法を作成、初期試験の結果が出ている。プロジェクトチームによれば、本プロジェクトにより実現した改善により、ランニング・コスト総額は31%削減され、生産性が49%向上した。
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造船サプライ網仮想エンタープライズ(SPARS)
 本プロジェクトの目標は、幾つかの主要造船所においてサプライ網の仮想企業ビジネスプロセス統合のプロトタイプを開発することであり、一連のビジネスプロセスについてそれぞれプロトタイプを作成する。実施には複数のメーカーと造船所において、増分費用を漸減させながら複製することのできるサプライ網ビジネスプロセスの開発が含まれる。
 本プロジェクトは、SHIIP及びSPARS(Shipbuilding Partners and Suppliers)MARITECHプロジェクトの下で開始されたシステム技術インフラストラクチャー及びソフトウェア開発事業に基づくものである。
 初年度は、エレクトリック・ボートとニューポート・ニューズにおける一連のサプライヤー契約管理ビジネスプロセス・ソリューション、バス鉄工所とインガルス造船における購買ビジネスプロセス、2年目は、複数の造船所の購入を統合する合同造船所調達プロセスを完成する。
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統合造船環境開発(ISE)
 本プロジェクトの目的は、一般に普及しているウェブ技術を効果的に利用することにより、造船システム技術の統合が可能になるような情報処理相互運用基盤及び手法を開発、運用することである。本プロジェクトは、複数の造船所及び設計・建造・アフター・サービス全体で、横断的に艦艇・商船建造コストを低減させるために利用することができることを実証する。
 本プロジェクトは4段階に分けて実施される。第一段階では、ISEツールセットと基本構造を以下のものについて実証する。(1)部品カタログ、配管機能設計モデル、CADパーツ、設計状態製品構造、配管のウェブ上での情報処理相互運用基盤、(2)設計事業体の情報統合。2年目には、複数の造船所における調達を統合する合同造船所調達プロセス等が開発される。第二段階では、さらに実証が行われ、製造事業体の情報統合が実施される。第三段階では、さらに実証と、アフター・サービスの情報統合が行われる。第四段階では、ISE設計、各種の機能、及び基盤機能の文書化と学習事項のまとめが作成される。
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ファイブS――造船所への適用、教育プログラム
 本プロジェクトは、生産性と資源活用に影響を与える5つの要素――仕分け(Sorting)、簡略化(Simplifying)、片付け(Systematic cleaning)、標準化(Standardizing)、維持(Sustaining)――をターゲットにする。米国造船所がファイブSプログラムを迅速かつ効果的に運用するのを助ける、集中的運用プログラムを開発する。複数の造船所の主要管理者及び従業員の知識と、航空機、自動車その他の多くの製造産業向けにファイブS訓練プログラムを作成した会社の専門知識を利用してこれを行う。
 第一段階では、管理者戦略訓練、最適化分析、分野の選定、標準手法の制定についてのテクニカル・レポートが作成される。すべてのワークショップについて、ファイブS適用前と適用後の成果についてのテクニカル・レポートが作成される。第二段階では、ファイブSプログラム実施のための訓練教材が開発される。
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トッド造船、索具工場、<前>と<後>
造船所表流水処理の実証
 本プロジェクトは、金属及び懸濁固体を除去するために、地下貯蔵庫における表流水の受動的濾過により、低コストの手法を開発し、評価するものである。表流水濾過方式は、最近の実験室実験で、コスト効率が良く、造船所から流出する汚染物を除去できるという結果が出ている。実験では、最適のフィルター設計で、前処理で懸濁性沈殿物を除去し、より細かなフィルターにより、銅やスズのような溶解金属を吸収するものだという結論が出た。しかしながら、濾過技術は、造船所における実地適用では実証されていない。特に、サンド・ブラスト用金属粉や塗料片の浮遊粒子を含む造船所表流水の特殊な組成を考慮する必要がある。
 表流水集水のための地下貯水庫を設計し、その設計図の承認を受けるために関係機関に提出する。地下貯水庫を建造後、プロジェクトチームは各種濾過、処理システムの運転を開始する。最終報告書では、包括的評価と処理方法について勧告を出す。
溶接時のガス曝露
 本プロジェクトは、海軍造船所及び民間造船所における溶接作業を評価し、造船業に特有の要件を特定し、ガス曝露を最小限に抑えるための改良型溶接工程を開発、適用するとともに、発生源においてガス曝露を除去するエンジニアリング制御を改善、適用し、ガス曝露低減を支援するために実施することのできる他の造船所作業の改善を特定する。溶接工程、素材切断工程及びヒューム抑制方法の問題に対処することが最重要案件である。目標は、溶接時のガス曝露を工程改善により30%、エンジニアリング制御により50%削減することである。
 本プロジェクトで開発された技術の移転には、デモンストレーション、ワークショップに加え、作業員、現場技術者、管理者向けのカリキュラム及び訓練、印刷物及びインターネットでのガイドラインの発行、機器製造業者による商用化、OSHA及びEPAへの情報普及である。
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横断的課題のための仮想リソースセンターの実施
 本プロジェクトの目的は、造船産業全体におけるコミュニケーション・プロセスとリソース共有を改善し、NSRP ASE課題全てに横断的に存在する人間及び組織のニーズに対処するものである。これを達成するために、人事、組織改革、訓練、技術移転を支援する造船産業のオンライン・リソース・センターを運用する。
 業界の会議や集会において、センターの要件査定の結果と、センターの設計提案について報告するプレゼンテーションが行われる。プロジェクトの成果は、造船産業ウェブサイトに掲載される。リソース・センターの設計は、NSnetマネージャーと連携し、ミシガン大学をチームリーダーとして開発される。センター設計のアイデアはNSnetアーキテクチャーを通じて転送される。
 現在までに、ソフトウェア開発計画、リソース・センター運営の初期計画、リソース・センター・ホームページが完成している。








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