はじめに
現在、世界の造船業は、1970年代に大量に建造された大型外航船の代替需要期を迎え、過去20年間で最高の建造水準となっています。しかし、1990年代半ばの韓国の大幅な造船設備拡張を中心に、中国・東欧等の新興造船国の台頭、各国造船所の生産性の向上等により、世界の造船能力が大幅に拡大し、こうした供給能力過剰状態の下で競争が激化しており、豊富な需要があるにも関わらず低船価状態が継続して造船事業者の経営を圧迫するというかつてない事態に陥っています。
このような状況の中、韓国造船業は低船価・大量受注により1999年、2000年と世界第一位の受注量を記録し、今や日本を抜いて世界一の造船国となっています。
韓国造船業の攻勢により、1990年代に造船業における欧州と韓国の地位は完全に逆転し、欧州造船業は、ニッチな市場に特化せざるをえなくなっており、市場環境を悪化させる造船設備拡張、低船価による大量受注、財閥系造船企業の経営破綻処理に対する政府支援など韓国の行動に強い不満を抱いています。
こうした不満を背景に、1999年にEUはこうした韓国の造船業に関する問題を通商問題として取り上げ、WTO提訴を前提とした域内手続きが進められるに至っています。
本調査報告書は、2000年度「欧州造船政策動向調査」としてジャパン・シップ・センターにおいて実施した、欧州における韓国造船摩擦及び船価助成廃止に関する調査の結果を取りまとめたものです。本報告書が、造船政策・経営戦略策定の基礎資料として活用されることを期待するものであります。
2001年9月
Japan Ship Centre