4.4 評価方法
4.4.1 試験用舶用ディーゼル機関概要
本実験で実排ガスによる評価に用いた舶用ディーゼルは、東京商船大学内燃機関工学実験室の100PS4サイクルディーゼルエンジンである。機関詳細を以下の表4.4-1に示す。また、本エンジンの各物質の排出物濃度の負荷率の影響を図4.4-1に示した。シリンダー出口の排ガス温度は450℃(50%負荷相当時)〜550℃程度(100%負荷相当時)である。また、燃料噴射タイミングと運転状態を変えた時のデータを表4.4-2および4.4-3に示した。また各負荷時の排ガスの圧力は以下の通りであり、分岐ラインにバルブを設置し、流量コントロールが可能である。
排ガス圧力: |
100%負荷相当時: |
376mmH2O |
|
|
75%負荷相当時: |
222mmH2O |
|
|
50%負荷相当時: |
122mmH2O |
|
これらのデータを参考に、定常運転試験では、発電機特性の60%で試験を行うこととした。
表4.4-1 機関主要目
呼称 |
3L13AHS |
形式 |
立形直列単動4サイクル直接噴射式 |
ディーゼル機関 |
シリンダ数 |
― |
3 |
シリンダ径 |
mm |
130 |
行程 |
mm |
160 |
行程容積 |
cm3 |
6370 |
出力 |
PS(kw) |
100(74) |
回転数 |
rpm |
1200 |
平均有効圧 |
kPa |
1154 |
平均ピストン速度 |
m/s |
6.4 |
コンロッド長さ |
mm |
280 |
圧縮比 |
― |
15.3 |
冷却方式 |
清水2次強制循環式 |
潤滑方式 |
歯車ポンプ圧送式 |
調速方式 |
機関全速調速機 |
図4.4-1
各物質の排出物濃度の負荷率の影響
使用機関:3L13AHS、燃料A重油.Te:シリンダー出口排ガス温度、
Pmax:筒内最高圧力、NOx:13%換算濃度、SFC:燃料消費率.
表4.4-2 エンジンの運転状態による排ガス性状の変化(噴射タイミング:上死点前27度)
噴射タイミング |
BTDC27度 |
負荷率 |
発電機特性50% |
発電機特性50% |
舶用特性50% |
舶用特性50% |
チャージャー出口排ガス温度(℃) |
355 |
425 |
430 |
470 |
NOx濃度(ppm) |
1560 |
1720 |
1960 |
1860 |
O2濃度(%) |
12.9 |
10.6 |
10.5 |
10.8 |
スモーク濃度 |
9 |
8 |
10 |
--- |
表4.4-3 エンジンの運転状態による排ガス性状の変化(噴射タイミング:上死点前22度)
噴射タイミング |
BTDC22度 |
負荷率 |
発電機特性50% |
発電機特性50% |
舶用特性50% |
舶用特性50% |
チャージャー出口排ガス温度(℃) |
360 |
435 |
460 |
475 |
NOx濃度(ppm) |
1010 |
1130 |
1290 |
1250 |
O2濃度(%) |
13.7 |
12 |
11.3 |
10.9 |
スモーク濃度 |
6 |
14 |
16 |
22 |
4.4.2 使用燃料および調達方法
東京都内での陸上試験用としては、現在は低硫黄重油が義務づけられており、通常のA重油が入手困難であったため、本実験では、低硫黄A重油(標準的な性状は別表の通り、通常硫黄分は. 0.1%以下) を用いて評価を行った。
表4.4-4 使用燃料性状
項 目 |
件 状 |
密度(15℃) g/cm3 |
0.8668 |
反応 |
中性 |
引火点(PM) ℃ |
93 |
動粘度(50℃) mm2/s(cSt) |
2.917 |
流動点 ℃ |
―10.0 |
低温ろ過目詰り点(CFPP) ℃ |
―12 |
硫黄分 質量% |
0.07 |
残留炭素分 |
質量% |
  |
(10%残油) 質量% |
0.5 |
灰分 質量% |
0.005以下 |
水分 質量% |
0.05以下 |
セディメント 質量% |
0.01以下 |
窒素分 質量% |
0.026 |
セタン指数(JIS新・参考値) |
46.7 |
セタン指数(JIS旧) |
48 |
総発熱量 |
kJ/g |
45.3 |
(cal/g) |
10,820 |
真発熱量 |
kJ/g |
42.5 |
(cal/g) |
10,160 |
4.4.3 生成ガスの分析方法
装置に設置した各サンプリングポートより、第3章の模擬排ガス試験と同じ以下の分析装置を用いて分析を行った。ただし、実排ガスであるため、分析装置の入り口部に、装置概要で述べたミストキャッチャーを使用している。
(1)分析装置
[1] NOx:化学発光式NOxアナライザー(ヤナコ)
[2] SO2:赤外線SO2分析計(ヤナコ)
[3] O2:上記にO2計を追加して計測
(2)分析方法
各サンプリングポートより分析装置によりポンプ吸引し、分析を行っている。