3.3 吸着剤および脱硝触媒の調製方法
3.3.1 使用試薬・サンプル
本調査研究で用いた試薬のリストを以下の表3.3-1に示す。
表3.3-1 使用試薬一覧
試薬名 |
製造元・グレード |
Lot. No |
Mn(NO3)2・6H2O |
和光 特級 |
ELL5857 |
ZrO(NO3)2・2H2O |
和光 一級 |
CKJ2562 |
NH4VO3 |
和光 特級 |
CKK2285 |
TiO2 |
日本アエロジル P25 |
P-001-N |
コロイダルシリカ |
日産化学工業 |
120728 |
スノーテックスN |
3.3.2 調製手順
本年度用いた吸着剤はMn2O3・2ZrO2は荒井・江口ら(九州大学)の方法にもとづいて調製を行ったものである。また、脱硝触媒としてはV2O5/TiO2を使用した。それぞれの具体的な調製手順は以下に示す。
(1)吸着剤(Mn2O3・2ZrO2)の調製方法
以下の手順で調製した。(H.Arai et al., Journal of Catalysis 158, 420-426 (1996).)
Mn(NO3)2・6H2O 14.98g、ZrO(NO3)2・2H2O 13.93gをビーカーにはかりとり、そこへH2O 100mlを加えて撹拌した。両試薬が溶けたことを確認した後、NH4OHaq 63mlを加え、溶液のpHが10.5になるように調製し沈殿を生成させた。次に、得られた沈殿を蒸発乾固させ乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて550℃にて6時間焼成しMn2O3・2ZrO2を得た。BELSORP 28SAを用いて求めたサンプルの比表面積は129.0(m2/g)である。
図3.3-1 Mn2O3・2ZrO2の調製方法
(2)V2O5/TiO2脱硝触媒調製方法
実排ガス試験用ハニカムの調製を考慮して、調製方法が簡便なことからもMorikawaらの調製方法(S.Morikawa et al., Proc. 8th ICC III-661, Chem.Lett 251 (1981). )によりV2O5(1%)/TiO2触媒を調製した。図3.3-2にしめすようにバナジン酸アンモニウム水溶液に日本アエロジル製二酸化チタンP−25を浸漬し、蒸発乾固したのちに、550℃で3時間焼成してV2O5(1%)/TiO2触媒を得た。
また、通常はSO2の影響を低減させるためにタングステン等の第三成分の担持を行うが、今回は、第三成分の担持は行わず、V2O5(1%)/TiO2触媒を使用した。また、担体として使用したTiO2はP-25(SA=40m2/g、日本アエロジル)である。
図3.3-2 脱硝触媒調製方法
図3.3-3 調製したMn2O3・2ZrO2(吸着剤:右)
およびV2O5/TiO2触媒(脱硝触媒:左)
(3)吸着剤ハニカム作製方法
船舶からの実排ガスの処理に吸着剤を用いる場合には、吸着剤を成型し反応層に充填する必要がある。そこで吸着材ハニカムを試作し、その性能評価を行い、平成13年度の実排ガス試験用ハニカム作製のための仕様決定を行うことを目的とし、同時に今後の課題点についても検討を行った。
[1]各種ハニカム担体
Mn2O3・2ZrO2を担持するためのハニカム担体として、最適な製品を検討するために、入手可能なハニカム担体の開口率の異なるものをそれぞれ2種類について3製品入手し、最適な担体を検討した。それぞれを図3.3-4〜3.3-6に示す。
(a)コージェライト担体
図3.3-4 セラミックハニカム担体(1)
(コージェライト押し出し成型品(SiO2-Al2O3-MgO):神鋼アクテック製)
左:1.6mm角(セル厚0.3mm) 右:2.27mm角(セル厚0.3mm)
(b)セラミックファイバー担体−1
図3.3-5 セラミックハニカム担体(2)
(セラミックファイバー巻き成型品(SiO2):西部技研製)
左:AS-63(6.35mm(P)×3.5mm(H)) 右:AS−85(8.5mm(P)×5.2mm(H))
(*P:底辺長さ、H:高さ)
(c)セラミックファイバー担体−2
図3.3-6 セラミックハニカム担体(2)
(セラミックハニカムフィルター担体(ニチアス製))
セル数=205(セル/in2)
[2]吸着剤担持方法
ハニカム触媒の成型方法の特許事例をもとに以下の手順にて試作調製を行った。
ここで使用したハニカム担体は、耐熱性と強度に優れるため、試作に際して取り扱いが容易であることから、神鋼アクテック製の目開き22.7mmのコージェライトハニカムを使用した。また、バインダーとしてはスノーテックスN(日産化学製コロイダルシリカ:固形分20.3%)を用いた。
触媒ハニカムの作製方法に関する特許事例では触媒:バインダー:水=20〜70:70〜20:10〜30程度の事例が多い。そこで吸着剤とバインダーおよび水の混合比は種々の特許事例(例えば、特開平10-128118「窒素酸化物除去触媒およびその製造方法」日野自動車工業(株))等の配分比率を参考にして今回は、吸着剤:バインダー:水=5:5:1(重量比)にて行った。調製工程を以下の図3.3-7および図3.3-8に示した。
図3.3-7 吸着剤ハニカムの調製方法
[1]マンガンジルコニア粉体
[2]無機バインダー(コロイダルシリカ)
[3]吸着剤スラリーとハニカム担体
[4]ディッピング
[5]引き上げ
[6]担持後ハニカム(焼成前)
図3.3-8 吸着剤の担持工程(ラボにおける試作)
このようにして調製した担体へのMn2O3・2ZrO2の担持量は2.87グラム程度である。
表3.3-2 コージェライトハニカムへのMn2O3・2ZrO2の担持量
セラミック担体重量 (22mmφ×4cm) |
4.56g |
Mn2O3・2ZrO2担持後重量 |
8.09g |
重量増分 |
3.53g |
Mn2O3・2ZrO2正味担持量 |
2.87g* |
*バインダー分を差し引いた重量
また、上記以外にセラミックファイバーハニカム担体に関しても外部委託により、Mn2O3・2ZrO2の担持を行った。試作品の外観を以下の図3.3-9に示す。それぞれへの吸着剤担持量は以下の通りである。
表3.3-3 ファイバーハニカムへのMn2O3・2ZrO2の担持量
セラミック担体寸法 |
30×30×50mm |
Mn2O3・2ZrO2担持量 (205セル) |
6.5g |
Mn2O3・2ZrO2担持量 (30セル) |
5.0g |
図3.3-9 Mn2O3・2ZrO2担持ハニカムフィルター
左:205(セル/in2)、右:30(セル/in2)