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あいさつ
 本報告書は、競艇公益資金による日本財団の助成事業として平成11年度から平成13年度にかけて実施した「廃食油用セラミックスエンジンの研究開発」及び「廃食油用セラミックスエンジンに関する研究開発」の成果をとりまとめたものであります。
 我が国では、食用油は年間約240万トンの需要があり、使用後はその内容25〜30万トンが回収されてゴミとして焼却されるか、肥料や石鹸等の原料として再利用されているものの、20万トンは一般家庭において生活排水として下水から河川を通して海域や湖沼に放出されており、放出された廃食用油は酸化分解する過程で水中酸素を消費して二酸化炭素を放出し、地球温暖化及び水質環境の悪化に大きな影響を与えております。
 従来からこのような廃食用油を回収し、一般のディーゼルエンジンで使用できる燃料に再生する研究は進められており、廃食用油にメタノールを加えて化学的処理によってメチルエステルに変え、グリセリンなどの副生成物を取り除いて燃料とする方法がすでに実用化されておりますが、この方法では化学的処理にコストのかかることが課題となっております。化学的処理を行わない方法では、植物廃油専焼またはA重油を加えて混合した油を燃料とする大型ディーゼルエンジンの例がありますが、NOx(窒素酸化物)等の排気ガス規制に対する燃料噴射系の適正化及びA重油との混合比率等の調整が必要とされております。
 ところが、セラミックス部品を用い、空気層によって遮熱された特殊なエンジンでは、従来のエンジンに比べて非常に高い温度での燃焼が可能となるために、廃食用油を含めた着火や燃焼の制御性が悪い燃料に対しても、有害排気物質の発生を大変低く抑えて適正にディーゼル燃焼をさせることが可能となります。そこで、当財団では平成11年度から、廃食用油を安価な燃料として使用できる廃食油用セラミックスエンジンの研究開発を開始し、家庭等から回収した廃食用油にできるだけ手を加えることなくこれを燃料として使用でき、有害排気物質の発生も低く抑えることができる処理システムの実現を目指して研究開発を実施してまいりました。
 本年度は、事業の最終年度として、4気筒エンジンを試作し、性能試験を実施いたしました。その結果、本エンジンは廃食用油をそのまま燃料として適用できることはもちろん、軽油を燃料とする場合とほぼ同等の性能及び熱効率を達成できること、軽油の場合に比べてスモークは半減し、NOxとパティキュレイート(微粒子)の排出量は本研究開発当初の目標値に達することを確認いたしました。
 今後、セラミックス部品の低コスト化、長時間運転における信頼性の向上等、本エンジンの商品化に向けていくつかの課題が残されてはおりますが、本研究開発の成果が、河川、湖沼、海洋の水質汚染防止や二酸化炭素の低減に貢献し、地球環境の保全に寄与できることを願っております。
 研究開発は、北海道自動車短期大学 自動車工業科第1部 村山正教授を委員長とする「廃食油用セラミックスエンジンに関する研究開発委員会」委員各位の熱心なるご指導と、株式会社いすゞセラミックス研究所並びに株式会社いすゞ中央研究所のご尽力により実施されたものであり、関係者の皆様に心から感謝の意を表する次第であります。
 
平成14年3月
財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団
 会長  秋山  昌廣








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