利 害
海峡の国々
インドネシア、マレーシアおよびシンガポール3海峡国の利害と立場は一様でない。シンガポール経済の成功は貿易と輸出とに立脚した産業に伝統的に依存してきた。中東のガルフからマラッカ海峡を通過する原油の20%以上は、東南アジアに向かい、超大型タンカーでシンガポールに到着する。シンガポールは、主要な精油センターであり、原油を大きなタンカーで輸入し、そしてより小型のプロダクト・キャリアで域内全域に製品を輸出している。
シンガポールは、マラッカ海峡で国際通過航路の供用に賭しており、そして起こりうる汚染被害に曝され汚染しうる最小の海岸線を有している。シンガポール港は十分な施設を提供している。低い税金、競争力のある価格、安い船舶燃料、(港湾運用の)速い回転および最小限の規則と規制によって、多くの大型船舶は純粋に運行上の理由からシンガポールに寄港する。実に、港は地域の主要ルートにまさに隣り合って位置し、他に比べるものもない。従って、シンガポールがマラッカ/シンガポール海峡の商業航海の自由を主張するのには仲間の海峡国よりもより経済的な理由がある。しかし、よりいっそう根本的なことは、地域防衛、保安および全海上能力の航海の自由に関するシンガポールの懸念である。冷戦の間、そのような航海の自由がそれぞれの大きな軍事力の影響、そしておそらく潜在的に支配的な地域国家の軍事力を効果的に無効にするだろうと考えられた。
しかし、二度に亘る展開により、シンガポールはその立場を再評価せざるを得なかった。最初は、外国船の通路に関しインドネシアとマレーシアがますます強い感情と立場を打ち出したことであり、これは彼らが領海を、シンガポールに殆ど「海の鍵」をかけるような12海里に拡大するのと連携していた。次に、シンガポールは沿岸国とその人々のためにも海上交通密度の増加で起こる危険をもはや無視できない。特にVLCCの増加であり、油流出で起こる潜在的リスクと被害の増大である。実に、1997年10月のEvoikos号油流出後に、シンガポールの通信大臣Mah Bow Tanは、現法律の政権は、そうした攻撃の結末を被る国々の統制力の外で攻撃を犯す船舶の通過を扱うのに不十分であると述べていた。
インドネシアは、その島嶼(archipetagic)宣言により明示されており、海峡の外国船舶による汚染にかかわるより全国的な統合および国内保安の問題に伝統的にかかわってきた。実に、インドネシアの創立者、スカルノ大統領は、海峡全体がインドネシアの司法権の下にない限り、インドネシアが強くならず、あるいは安全にもならないだろうと長い間主張していた。インドネシアは、マラッカとシンガポールの海峡を一体と扱うことは一つの犠牲と考えていた。なぜなら、シンガポールが、その時、海峡の管理に以前にはなかったあるインプットを持つことができたからである。
マレーシアは、常に海峡での航海および汚染防止コントロールに一層の関心を持っていた。マレーシアの前法務局長Zakariaによると、「海峡が立ち向かう問題は基本的には航海の安全問題である」UNCLOS III本会議の第2セッションで、会議へのマレーシア代議員団の会長は、マレーシアが「海洋汚染の重大な危険を非常に心配しており、保安とそのほかの正当な利害そして沿岸国の関心に付されるような重要性は少ない。そして汚染や事故に起因する損害コストを負うことを期待されるべきでない」と繰り返していた。
シンガポールは、要するに、海洋会議の法(Law of the Sea Convention)で明確にされているとおり「国際航海に利用する海峡」としてのマラッカ及びシンガポール海峡の概念を強く支持し、IMOが主導して、海峡の管理政権の設立を統制してもらいたいと願ってる。海洋条約法が批准されて、通過権が認められてしまった一方、インドネシアとマレーシアはこう主張している。何よりもまず、マラッカ海峡は少なくとも両国の水域の1部でありそして両国が底での管理政権の設立を開始し、権限を与え、そして主導せねばならないことを主張している。マレーシアにとっても、範囲がより小さいインドネシアにとっても、その海峡は幾重にも利用できる資源である。利用国にとっては、海峡はインド洋と南シナ海間の最短の通商航路であるだけである。
海上能力
この問題での日本の利害は鮮明で、明確である。マラッカ/シンガポール海峡を含むアジアの航路は安全が保持され、かつその重要な貿易と石油輸入のために確保されなければならない。航海の自由についての純粋な原則の維持は最優先のものである。しかし、第二次世界大戦での日本の行動に関するその地域おける長く続く過敏症があって、日本のジレンマは、極度に攻撃的で身勝手であるように見せないで航海の安全と確保をいかに確実にするかである。それにもかかわらず、日本は、そのオイルライフラインについてその領域から1610kmまでの航路を守り続けるべく十分に関心を抱いている。そのような「守り」は、将来、南シナ海にまで十分に拡大することがあり得るかも知れない。
航路の安全と確保を保持しておくことでの合衆国の利害はより複雑である。それらは部分的経済−−合衆国とその同盟国のために−−そして部分的「防衛」である。長期間の東南アジアの戦略的な水路の閉鎖は、合衆国が重要な取引リンクを持っているアジアの経済が深刻に痛めつける。合衆国が気をもむのは、これらの閉塞点が物理的に、または軍事的に封鎖されること無く効果的に閉じられうるものとしたらということである。たとえば、もしスプラトリー地域が戦争ゾーンと宣言されるならば、荷主は、法外に高い保険レートのため、より高い出荷コストでスンダ(Sunda)、ロンボク(Lombok)、またはマカッサル(Makassar)海峡を通ってそれらの貨物の利ルートを余儀なくされる。「最も悪いケース」は、地域紛争の結果または国際的な航海の自由会議の失敗として戦略的な4水路すべて閉鎖された場合である。そのような不慮の事件は、石油および他のバラ荷貨物のためにオーストラリア南岸まわりのずっと長いルートを迂回路に求めることになる。
もしそのような分裂が起こるならば、海運業は唯一の勝利者となるであろう。世界の遊休船舶のほとんどは、再就航に回されねばならないし、運賃は500%程まで上がるかもしれない。日本は最もひどい衝撃の中に置かれるだろう。全部で2,250億ドル価値のその(双方向の)海上貿易の約42%が、1993年にこれらの水路を通過した。(表4)そしてもし、ペルシャ湾からの原油と液化天然ガスの日本への供給が、オーストラリア回りに転換されねばならないとしたら、その海上コストだけで、15億ドル相当が追加されねばならない。
東南アジアの国々はまた、正常な海運が中断されることによって厳しい影響を受けうることもある。域内の海上輸出の約55.4%が、1993年にはこれらの航路を通過した。これらの航路の不明確な閉鎖が、閉鎖効果、またはそのポートや石油精製の操業のひどい減少効果もあるので、シンガポールは特にひどい傷を受けることにもなる。オーストラリアの貿易も、これらのルートに沿ってその輸出の約40%およびその輸入の53%が運ばれているので、損害を受けるだろう。そして、これらの航路に依存する合衆国の海上輸送が4%未満であっても、合衆国は、航路を開いたままにしておくことに、なお重要な経済的利害がある。なぜなら、合衆国自体の繁栄はそれらのアジアの国々の経済の健康と結び付けられるからである。世界的な運賃の上昇が輸入品をより高価にするので、アメリカの消費者もある苦痛を感じる。
そして、もちろん、その航空、海上、および海面下の軍事力の最大の機動力と柔軟性にかかわる伝統的な米国の懸念がある。アジアの海峡や航路を通るそして海面下や上空の自由航海は、合衆国の核戦略にとってきわめて重要であり、その戦略では、核武装の原子力潜水艦が決定的な役割を果たしている。核装備潜水艦に対して攻撃するか、または防御するために、その位置は把握されていなければならない。実に、合衆国は、そのSSBNsの無敵さ、そしてそれゆえ第二の攻撃でのSSBNの不可欠な役割は、潜航して、隠密理に、そして探知されず海峡や航路を通り抜けられるそれらの能力を頼りにしていることを維持することである。従って、合衆国は、東南アジア核兵器解放ゾーン条約に同意するのを拒んだ。なぜなら、それは、合衆国がどのようなタイプの航海でも無制限であるはずであると主張する大陸棚とEEZsを含んでいるからである。
世界中で16の戦略的な海峡のうちの4つが東南アジアにある。マラッカ、ロンボク、スンダ、およびOmbai-Wetarであり、目標地域に到達する合衆国の潜水艦隊の機動力にとって重要である。これらうちで、潜航する米国潜水艦にとってOmbai-WetarとLombokのインドネシアの海峡だけは物理的にも、政治的に使用可能である。
安全に潜航できる通路なしには、潜水艦はオーストラリアを1周航海するかまたはチモール海へ二倍の航海で戻らねばならない。
また、航海の自由は米国防衛計画における新しい意味も呈しているかもしれない。合衆国国防省による最近のリポートがこう結論を出している。合衆国が、アジア・太平洋地域のそれらを含め合衆国自らとその同盟国を弾道弾攻撃から守るために作り続けることを考慮している合衆国と活動舞台(周囲国)双方の防御システムの成功にとって海上べースのコンポーネントはきわめて重要になるだろうと。海上ベースのシステムから発射されるミサイルは、離昇後まもなく、ブースト段階で敵ミサイルを破壊することによって囮により誤導を避けることができるだろう。しかし、そうするには、弾道弾迎撃ミサイルを運んでいる海上艦船と潜水艦は、発射サイト近くにいる必要がある。これは、南シナ海の航海の自由問題で米国海軍の膨らむ懸念を説明するのに役立っているかもしれない。南シナ海についてのワシントンの方針はアクティブな中道からアクティブな関心に発展した。関与は、次のステップであり、中国との緊張の重大な新しいソースとなっている。その間、合衆国は、地域の防衛においてよりアクティブな役割を果たすよう日本を促しつづける。
中国の利害はおしまいでもなく確かに小さいものではない。それらは短くもなく長くもなく対立するように思える。中国は、他国と年間310億ドルの貿易においてこれらの航路を利用している。また、中国が中東からの石油の輸入をドラマチックに増大させている。この貿易を混乱させるか、または強制する行動は、中国の関心の中にはない。たとえ衝突に帰することが全てのものにとって航海の自由がないなら安全を消滅させうることになっても、まだ、中国は、南シナおよび東シナ海において、その要求を主張し、そこで存在を確立するためにむしろ攻撃的に行動してきた。一方では、いくつかの国が、結局、中国がこれらの海を支配するつもりであり、衝突が起きた場合に、日本と合衆国にとって重要な航路をコントロールするか、または分裂させるつもりであると、信じている。
航路の安全と確保への脅威
起こりうる衝突
予知できる将来の航路の分裂についての少なくともありそうなシナリオは、東南アジアの国々の間の衝突および/あるいは域内航路の商船へのいずれかの国による攻撃である。より大きな関心事は、特にASEAN諸国間の、スプラトリー諸島または油田の争い荷関係する中国と台湾、または中国とベトナムを巻き込んだ衝突よる航路の分裂である。そのような恐怖を静めるために、中国外務省は、それが航海の自由を脅かすだろうということを否定している。1996年3月、台湾の海港沖の区域へむけて中国のミサイル発射は、そのような保証での信頼をほとんど支えることにはならなかった。台湾海峡とスプラトリー諸島での衝突可能性が現実的懸念であり続けるが、この最悪のケースシナリオにおいてさえ、スプラトリーの西側と台湾の東側を通るまだ入手可能な主要な航路がある。
別の脅威シナリオは、東南アジアの航路または海峡を機雷が敷設された危険に巻き込む。しかしすべて域内の国々の経済的利害を考えれば、どのような国も公然とこれらの水域に機雷を敷設するのを想像するのは困難であり、1984年に紅海でやったことについてイランが疑われた隠密理に行われる機雷の敷設に関して現在の論理的根拠を識別するのはいっそう難しい。そのような機雷敷設は、東南アジアの沿岸地域にとって、同様に狭隘で比較的浅いマラッカ海峡においては主要な脅威となるだろうが、スンダとロンボク海峡の潮流と水深は、霧の効果を小さくするだろう。
要は、東南アジアの航路沿いに商船の運行にたいして潜在的な軍事力の分裂について現実的懸念があるが、予知しうる将来にとっては、そのような分裂の可能性、および海上輸送にあたえるそれらの直接効果の可能性のどちらも低い。
忍び寄る統制力
地域における多くの海上管轄の主張は、内容または地理の範囲において<海上法(Law of Sea)>に関する1982年の国連会議によって認められているものを越えてる。実際に、与えられたいつの日にでも、合衆国は世界のどこかで、「過度な」海上主張に対してその海上の自由を実習している。東南アジアにおいて、インド、ビルマ、およびベトナムは、幅24海里の軍事警告ゾーンを設けた。一方、カンボジアとインドネシアは、幅12nmのそのようなゾーンを宣言している。異質(域外)の艦船と軍用機がこれらの水域への進入を禁止されており、ベトナムのゾーンでは、他の船舶は、移動のための許可も守らなければならない。中国は、その12nm領海を通る艦船の無害通航の権利も議論します。フィリピンの領海主張は届く範囲は、幅で最高284マイルにおよび、その島嶼主張と併せれば、すべてのその重要な海峡が含まれる。
群島水域上および通路に関して航路に関わるレジームとサイトについての海上軍事力と群島国間の現在進行中の不一致がある。インドネシアとフィリピンは、外国の艦船や航空機さらに潜在的に汚染に関係する一定船舶の特定航路通過を制限しようとしている。たとえば、特定の航路とは両国の国民資本(national capitals)に近いところに位置するものである。例えば、インドネシアは、スンダ(Sunda)、ロンボク(Lombok)、およびOmbai-Wetar海峡を通る3つの南北航路を宣言している。しかし、合衆国はジャワ(Java)とバンダ(Banda)海を通る東西航路を強く主張している。問題は、群島の航路外の水域航海が武器とレーダーがオフ(管制できない)にちがいない無害(非禁制)水路の政権下にあることであり、潜水艦は浮上し、その国旗を示さねばならないし、航空母艦は航空機を発艦させ、また着艦させることもできない。インドネシアは、シンガポールと隣接したその水域の短い東西航路を提供したが、それは合衆国海軍により不十分であると考えられます。インドネシアはさらに分解し、東チモールなどの個々の新しい国は、領海、通過水路、およびたぶん群島の航路についてその方針を発展させ、実施する必要がある。
南シナ海について、公式な中国地図は、南シナ海のほとんどを包含するという主張を含んでいる。
その方針について米国の繰り返し問い合わせに呼応して、北京は、それが航海の自由を妨げないと述べている。しかし、それが南シナ海について主張する内容と理由を正確に明確化にするわけでない。何が合衆国海軍に関わっているのかは、こういうことである。中国の行動のうちいくつかは−−たとえば、ベトナムの大陸棚の1部についてのその主張およびフィリピンが要求する水域におけるミスチーフ岩礁のその占拠−−歴史的な水域として事実上全海域にわたって党政権を主張するかもしれないことを示している。航海の自由と上空飛行原則は歴史的な水域にあってはあてはまらない。
さらに、中国は、その海洋の北部地域のパラセル諸島のまわりに包囲ベースラインを引いてしまった。従って、航海レジームの自由から、取り囲まれている水域を取り除いている。それは、それがスプラトリー諸島と同じことをやれることを示しているようである。
中国は、パラセル諸島の包囲ベースラインのまわりに12海里領海も宣言し、許可なく外国の艦船がこれらの水域に入ることができないと強く主張している。
1979年10月から1980年2月まで、不吉な先例を設定して、中国は、海南島の東と西の4つの「危険」地帯上空を一定の高さで飛行することを禁じている。これは主要な民間航空回廊の一時的な閉鎖を強制した。
従って、北京は、入国許可が必要なレジームから南シナ海の大きな区域を移すことを目論んでいたであろう。もちろん、中国は現在そのようなレジームを実施できない。しかし、力が十分に強い時には、そうすることもできる。明らかに、合衆国は黙認しない。言葉とたぶん、その海軍の艦艇に、それが航海の自由を統制している国際法の違反を考慮するものであっても、何にもかも無視させて実際に抗議することになるだろう。北東アジアでは、北朝鮮は、その領海の外国艦船の通航のための事前許可を求めている。また日本海にまで拡大した50マイル保安ゾーンを宣言しており、進入するには事前の許可が要求される。中国は、黄海の北西に「軍事警告ゾーン」も持っており、そのラインの西は、ユール川の河口のあるシャンタン半島に達している。
潜在的な問題は、オホーツク海を含んでいる。そこは、緊張の際には、ロシアが艦船と航空機を除外することを試みうる所である。それは日本海に対しても同様なレジームを採用することさえできる。多くは、その時にここで、合衆国のために日本の軍隊のオリエンテーションに依存することになる。別の「領海」行動は、北/韓国境界に沿ってシャンタン半島を島と接続するラインの北で一緒に中国と北朝鮮が制限的な政権を設立できた北の黄海で予期できました。