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I.調査の概要
1.調査の目的
 シップ・アンド・オーシャン財団においては、平成2年度以降、船舶からの排ガス削減についてさまざまな観点から調査検討を行ってきた。本年度の調査においては、わが国内航海運における温室効果ガスの排出削減対策および港湾域における船舶からのNOx/SOx排出削減対策について調査検討を行う。
 温室効果ガスについては、気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nation Framework Convention on Climate Change)に基づき、1997年12月に京都で開催された締約国会議(COP3)において、各国排出量の削減目標について基本合意がなされている。日本国については2008〜2012年の年間排出量の平均を1990年比で6%削減することが合意されており、関係省庁を中心にその実現に向けての取り組みが進められている。内航海運については、1998年における排出量が約16×106t-CO2と見込まれているが、地球温暖化対策推進本部が2002年3月に定めた地球温暖化対策推進大綱においては、2010年までに輸送原単位当たりの燃料消費率(輸送エネルギー効率)をスーパーエコシップなどの導入により向上させることや、運輸部門全体の総貨物輸送量に占める内航海運の分担率を44%まで向上することなどが目標として定められている。しかしながら、過去10年間の内航海運における輸送エネルギー効率の推移動向については不明確な部分も多く、またモーダルシフトのもたらす削減効果やその具体的な推進方策についても検討が不十分な点が多い。本調査においては、内航海運に伴う温室効果ガス排出の現状及び将来予測について定量的な評価を行うとともに、運輸部門における排出削減対策として最も期待されるモーダルシフトの効果と問題点について客観的な評価を行い、これらをもとに内航海運に係る温室効果ガス削減のための提言をとりまとめる。
 一方、船舶からのNOx/SOxの排出については、国際海事機関(IMO)MARPOL73/78条約附属書VIにおいて、広域的な環境影響を抑制することを主眼にした規制が既に採択されている。しかしながら、大都市に隣接する港湾区域など、局所的な地域における環境影響の防止という観点からはIMO規制では不十分との見方もあり、欧米の一部港湾のようにIMO規制より厳しい独自の地域規制を入港船舶に課している例も見られる。今後こういった地域規制が国内港湾に不適切に導入され、海運業界あるいは一部の専用ふ頭管理者に対してコスト負担が求められた場合には、船舶の円滑な運航に支障を与え物資輸送のエンドユーザーへ影響することも懸念される。
 しかしながら、港湾地域周辺大気に対しての船舶排ガスの影響度合いや、対策を講じた場合の効果と問題点を、客観的に評価する手法については未だ十分整備されていない状況にある。
 本調査においては、NOx/SOxの環境影響について船舶の寄与度を定量的に把握するための拡散シミュレーションモデルを新たに策定し、東京湾内における船舶からの影響の現状及び将来予測を行うとともに、陸電の使用、燃料の切替え等の代表的な対策についてその効果を定量的に評価し、これらの結果をもとに港湾域における船舶からのNOx/SOx排出に対してコスト対効果の高い削減のための提言をまとめる。
 これらの提言の取りまとめにあたっては、可能な限り社会システムの中での物流のあり方と言う視点から、海上輸送及びこれを支える海運・造船業のあり方を検討するとともに、海上輸送と結節する港湾や陸上輸送、さらには社会システムのあり方についても可能な限り検討を加えるものとする。
2.調査の概要
(1)内航海運に伴う温室効果ガス(CO2等)の排出削減に関する調査研究
[1]内航海運に伴う温室効果ガスの排出量
 内航船舶からのCO2排出量を算出し、排出量削減方策検討の基礎資料とした。
 交通関係エネルギー要覧などの統計値から1990年以降の燃料消費量を把握し、CO2発生量及びその将来予測を計算した。
 昨年度調査までに得られた、外航船などに対応する温室効果ガス排出削減方策について、内航海運への適用の可能性について検討するとともに、モーダルシフトが温室効果ガス削減に与える影響についても検討を行った。
[2]内航海運に伴う温室効果ガスの排出削減動向
 海外主要国、国際機関等における温室効果ガスの排出削減に関する施策の動向を調査した。
 我が国のCO2削減率6%達成に向けた海事産業界の対応策や目標値の情報を収集した。また、モーダルシフトを阻害する要因などについて、検討を行った。
[3]内航海運に伴う温室効果ガス排出削減方策
 上記の調査結果をもとに船舶から排出される温室効果ガスの排出削減に関する提言をとりまとめた。
(2)港湾内における船舶運航に伴う排出ガスの影響に関する調査研究
[1]港湾内における船舶運航に伴う船舶排ガス影響の把握
・港湾内における船舶運航に伴う船舶排ガス排出量算定
 東京湾内の外航船、内航船、定期自航船などを対象に、港湾区域内における船舶からの排出ガス量の算定モデルの作成を行い、1999年におけるNOx、SOx排出量を算定した。
・港湾内における船舶運航に伴う船舶排ガス拡散シミュレーション
 船舶からのNOx/SOxの拡散分布を算出し、大気環境に対する寄与の程度を評価することにより陸上への影響の客観的な把握を行った。
[2]港湾内における船舶運航に伴う排出ガスに対する地域規制の動向調査
 船舶排ガスを対象にして国内外における地域規制の動向についての調査を行った。
[3]港湾内における船舶運航に伴う排出ガス低減についての技術的検討
 NOxおよびSOx排出削減方策について、港湾内における適用を中心に、その効果、適用範囲、コストなどの検討を行った。
[4]港湾区域内における船舶運航に伴う排出ガス抑制方法の効果に関しての検討
 上記の検討を基に、2010年を対象に東京湾内の船舶排ガスの将来予測を行い、有望と考えられる削減方策についてその効果を、それぞれの削減量と年平均値に対する寄与率の両者で定量的に評価した。最終的に環境への寄与に最も効果のある削減対策手法を抽出し、将来における東京湾内の船舶排ガス抑制に向けてのコンセプトを提言した。
(3)まとめ
 (1)(2)の調査結果を集約し、温室効果ガスとNOx/SOxの両者を効果的に抑制する方策を提言の形でとりまとめた。
3.委員会の開催状況
第1回 平成13年11月20日
(1)委員長選任
(2)平成13年度事業計画について
(3)平成13年度実施計画(案)について
第2回 平成14年1月22日
(1)調査の実施経過報告について(中間報告)
[1]内航船からの二酸化炭素の排出量方法算定について
[2]排出量の将来予測手法とモーダルシフト可能量の考え方について
[3]拡散計算の対象年選定について
[4]拡散計算の設定条件について
[5]将来の排出量予測について
(2)報告書目次(案)について
第3回 平成14年2月22日
(1)調査の実施経過報告について(中間報告)
[1]温室効果ガス排出削減方策の検討について
[2]拡散シミュレーション計算方法について
[3]拡散シミュレーション結果(横浜港部分)について
[4]CO2及びNOxを効果的に抑制する方策の検討について
第4回 平成14年3月19日
(1)報告書(案)について
[1]内航海運に伴う温室効果ガス(CO2等)排出削減に関する調査
[2]港湾内における船舶運航に伴う排出ガスの影響
[3]まとめ
 この他、情報収集のため平成14年3月4日より3月8日までロンドンで開催された国際海事機関(IMO)の第47回海洋環境保護委員会(Marine Environment Protection Committee(MEPC47))に参加し、排出ガスに対する地域規制の動向を調査した。








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