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2.4 プランクトンの異常発生の推移(項目番号:物循−4)
2.4.1 調査趣旨
 赤潮に代表されるプランクトンの異常発生は、海湾の富栄養化の度合いを示す重要な項目として、従来のモニタリングでも考慮されている。また、透明度のデータと同様に海湾の基礎生産の観点から基礎生産の異常性を評価する項目となる。
 
2.4.2 使用データ
 赤潮発生件数のデータは各自治体の水産部局で整理しているはずであり、これらの組織から入手可能であると考えられる。またそれ以外でも主な海湾であれば環境省発行の環境白書等に整理されていることがあるので、これらから入手する。
 
2.4.3 調査手法
 整理する項目は赤潮発生件数および赤潮発生のべ日数とする。
 
2.4.4 調査結果の評価手法
 「海の健康度」の評価基準は以下のよう設定する。
 
赤潮が発生していないこと。
 
2.4.5 調査結果の事例
 赤潮発生の推移を検討するために図III-17には赤潮発生件数の推移を、図III-18には赤潮発生のべ日数の推移を示した。その結果、発生件数でみると東京湾では横ばいもしくは微増であり、伊勢湾・大阪湾・周防灘では減少傾向にある。しかしながら有明海では近年増加傾向であった。
 延べ日数を合わせてみると、伊勢湾では件数は減少しているのにも関わらず、延べ日数はあまり変化していない。これは赤潮減少の長期化を示している。また、有明海では延べ日数も件数同様に増加している傾向にある。
 
2.4.6 注意点
 赤潮発生件数やのべ日数の調査は、各自治体で独自の方法により行われている。そのため、各海湾の情報を横並びに評価することは難しく、あくまで、その海湾におけるトレンドとして評価を行う。
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図III-17 各海湾における赤潮発生件数の推移
【データ出典】
東京湾、伊勢湾:「第5次水質総量規制のあり方について」、環境庁ホームページ
大阪湾、周防灘:「瀬戸内海の赤潮」、水産庁瀬戸内海漁業調整事務所
有明海:「第1回第三者委員会資料」、水産庁増殖推進部漁業資源課
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図III-18 赤潮発生のべ日数の推移
【データ出典】
東京湾、伊勢湾: 「第5次水質総量規制のあり方について」、環境庁ホームページ
有明海: 「第1回第三者委員会資料」、水産庁増殖推進部漁業資源課
 
2.5.1 調査趣旨
 分解能力を超えた負荷が底層に蓄積し、底質の悪化や低酸素の要因となることから、底質は物質循環の指標となりうる。しかしながら、全国の底質を経年的に評価できるような既存の資料は、現在のところ簡単に入手することは困難である。
 
2.5.2 使用データ
 対象海湾において現地調査を行い、データを取得する。
 
2.5.3 調査手法
(1) 調査器具
 底質の調査は、採泥器(生態−2参照)を用いて行う。1地点につき、少なくとも0.1 m2は底質試料を採取するようにする。
(2) 調査地点
 調査地点の設定は、海湾の規模にもよるが、少なくとも湾奥・湾央・湾口の3地点は行うようにする。一般的に、代表的な内湾では、湾口の潮通しのよい地点などでは砂質中心の底質となり、湾奥に近づくにつれて泥分が増加する傾向にある。従って、砂質中心のところと泥質中心のところとできるだけ多くの環境を抽出して地点を設定することが望ましい。
(3) 調査時期
 成層化して、底層の直上が貧酸素化し、嫌気的条件になっている可能性がある夏季(6月〜9月)に1回行うようにする。
 
2.5.4 調査結果の評価手法
「海の健康度」の評価基準は以下のよう設定する。
 
・底質の臭い及び色調に異常がないこと。
・生物がいること。
 
(1) 底質サンプルの臭気
 硫化水素臭などは、底質が嫌気的環境になっていることが原因であり、一方、無臭は物質循環が正常に行われている証拠である。
(2) 色調の違い
 調査地点における本来の底質が呈しているべき表層の色調と、表層から数センチほどの内部の色調が異なる場合、一見、表面の物質循環は正常に機能しているように見えるが、内部では嫌気的環境になっている。
(3) 生物の生息
 有害物質が蓄積したり、貧酸素状態になって底質が悪化すると、生物の生息が困難となる。
 
 これらの3つのポイントをチェックすることにより、評価を行う(表III-7)。ひとつでもあてはまる項目があれば、二次診断を行う。
表III-7 底質の一次評価チェックシート
  項目 評価基準 チェック欄
[1] 臭気 硫化水素臭や、その他不快な臭いがする  
[2] 色調 表層は酸化層だが、底質を少し掘り返してみると、黒色の嫌気層が出てくる  
表層そのものが、黒光りしたタール様の色調を呈している  
[3] 生物 多毛類・貧毛類のみの構成で、ほんのわずかしかみられない  
生物がほとんどいない  
生物が全くいない  
 
2.5.5 注意点
 底質の一次評価では、砂質も泥質も同じ評価基準を用いる。
 臭いで判断することは、明確な基準を決めにくいので、調査を実施する人によって多少の誤差が生じてしまうことが考えられる。しかし、人間の嗅覚で明らかにおかしいと感じたときは×をつけるようにする。
 








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