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(3) 透明度(物循−3)
 
(A) 用いた資料
 福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県の公共用水域水質測定結果による各海湾の透明度データを用いた。
 
(B) 整理方法
 透明度データを月ごとに単純平均することにより算定し、その変遷を整理した。
 
(C) 整理結果
(拡大画面: 60 KB)
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図II-34 透明度の変遷
 
 
(D) 結果の見方
 本海域は、底質が砂泥質で強い潮流により底泥が巻き上げられる結果、常時透明度が低くなっている状態であり、いちがいに透明度が高いからと言って、健全な状態であるという判断を下すことはできない。逆に透明度が上がることにより底層まで日射が届き、その結果異常な基礎生産を引きおこす原因になることも考えられる。
 したがって、対象海湾の透明度が、植物プランクトンと相関が高いのか、主に鉱物由来のSSと相関が高いのか把握した上で、透明度の増減を解釈する必要がある。
 
(E) 評価基準
最近10年間の平均値と最近3年間の平均値との差が±20cm以下であること。
 
(F) 評価
 有明海における最近10年間平均値は2.14m、最近3年間平均値は2.46mであり、その差は30cmあることから、評価は×である。
 
 
(4) プランクトンの異常発生の推移(物循−4)
 
(A) 用いた資料
 水産庁九州漁業調整事務所の「九州海域の赤潮」
 
(B) 整理方法
 赤潮発生件数を経年グラフにする。
 
(C) 整理結果
(拡大画面: 46 KB)
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図II-35 赤潮発生件数の経年変化
 
 
(D) 結果の見方
 本海域では近年、赤潮の発生件数は増加傾向にある。
 
(E) 評価基準
赤潮が発生していないこと。
 
(F) 評価
 赤潮が発生しているので、評価は×である。
 
 
(5) 底質環境(物循−5)める 底質環境については、実際の調査データがないので、ここでは一次診断は行わない。 ただし、調査の流れを把握するため、調査地点の選定例を示す。
 
(A) 調査地点
 有明海で底質環境を調査することを想定し、調査地点の設定例を示す。調査地点は、「生物の生息状況」で設定した底質調査地点と同地点の3地点(湾奥、湾央、湾口各1点)を底質調査地点とする。
 
(B) 底質調査
 底質が最も悪くなるであろう夏季(8月)に1回調査を行う。選定した地点にて、採泥器を用いて泥を採取し、手順に従い、臭気、色調、生物の3項目をチェックする。
 
(C) 評価基準
・底質の臭いおよび色調に異常がないこと。
・生物がいること。
 
(D) 評価
 評価基準を満たさない場合は“不健康”(×)と評価する。
 
 
(6) 底層水の溶存酸素濃度(物循−6)
 
(A) 用いた資料
 福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県の公共用水域水質測定結果および各自治体が実施している浅海定線調査結果。
(B) 整理方法
 公共用水域水質測定結果は、下層のデータのみを対象としてデータの整理を行った。浅海定線データは最下層のデータを対象として整理を行った。
 溶存酸素濃度の全湾平均値を算定しその経年変化を把握するとともに、貧酸素水塊がどの程度の広がりをもって存在しているかを評価することが必要であるので、貧酸素水塊が海湾の面積に占める割合を算定した。ただし、ここでは次式に示す手法で簡易的に貧酸素水塊が占める割合を算定するものとする。
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 貧酸素の定義を生物の生息が危ぶまれる 3ml/Lとして貧酸素比率を算定したが、ここではこれに加えて無酸素比率(0ml/L)の割合を算定した。ただし、分析の定量限界値が0.5mg/Lであるのでここではこの値を用いた。
 
(C) 整理結果
(拡大画面: 64 KB)
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図II-36 底層における無酸素比率(定量限界値以下のサンプルの割合%)
 
 
(D) 結果の見方
 本海域では、底層において無酸素水塊はみられていない。
 
(E) 評価基準
無酸素比率が0であること。(無酸素水塊が出現していないこと。)
 
(F) 評価
 無酸素比率が0であるので、評価は○である。
 
 
(7) 底生系魚介類の漁獲推移(物循−7)
 
(A) 用いた資料
 福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県の農林水産統計から整理した。
 
(B) 整理方法
 底生系の生物に着目して、その推移をグラフ化した。
 
(C) 整理結果
(拡大画面: 56 KB)
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図II-37 底生系魚介類の漁獲推移
 
 
(D) 結果の見方
 本海域では、漁獲高が激減しており、底生系からの物質の除去機能が阻害されていることが示唆される。特に貝類が著しく減少していることが見て取れる。
 
(E) 評価基準
最近10年間の平均漁獲量と最近3年間の平均漁獲量を比較して、20%以上変化していないこと。
 
(F) 評価
 過去10年間の平均漁獲量と最新年の総漁獲量を比較して、20%以上変化しているので、評価は×である。
 
 
3.1.3 一次検査結果マトリクス
 一次検査の流れを一覧表にしたものが、以下のマトリクスである。
表II-14 一次検査マトリクス
(拡大画面: 347 KB)
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