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わらしな太鼓(静岡県)
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─プロフィール─
 静岡市わらしな学園は国際障害者年を記念して昭和56年に創設された知的障害者の施設です。現在、入所通所施設あわせて100名の人が作業、療育訓練を行い社会参加をめざしています。
 療育の一環である和太鼓は昭和63年に療育の1つとしてはじまり13年目になります。
 年間10数回の演奏依頼を頂き発表の場も増えてきました。施設の外へ出て色々な人とふれあうことや緊張感を肌で感じることができ全員の練習にも自然と力が入ります。
 わらしな太鼓は、利用者、職員一丸となり、力いっぱい気持ちよくたたく事を目標に練習に励んでいます。一生懸命たたいた時、全員の息があった時の爽快感や喜びを皆で共感できるように更に腕に磨きをかけていきたいと思っています。
演奏曲
「若鮎太鼓・百花繚乱」
出演者
滝戸  泉   植原 信秀
土屋 英俊   栗山 和巳
原崎 裕子   藤田 智子
岡田 浩明   坂下 大介
谷川 仁志   望月 晴彦
杉山 百代   田中 琴子
神保はる枝    千賀
佐野 直美    
─実践報告─
 わらしな学園で療育太鼓が開始されたのは、昭和63年、わらしな学園が開設されてから7年目のことです。
 利用者の気分転換をはかり、ストレスを解消するためには何か良い方法はないかと考えた末、素朴なリズムを持つ和太鼓が浮かび上がりました。太鼓の魅力である体の奥まで響く音が、利用者の身体リズムを刺激して、心身のリハビリテーションへまでつながることを目的として、療育太鼓が始まりました。
 1年目は、バチを握ることすら初めてでした。リズム打ちをしても雨がバラバラ降るような雑な音しか出ませんでした。太鼓の数も少なく、ジュースの箱に板を張った簡易太鼓で練習をしました。能力差も激しく、止めようとしても叩き続ける人やリズムを打てない人などたくさんいました。そこで前方に指揮者をつくり、総勢65名の太鼓オーケストラとして出発しました。
 5年目には、太鼓の練習が生活に溶け込み太鼓を叩くことが、日常生活の一部になっていました。指揮者も必要でなくなってきたため、太鼓オーケストラは解消され現在のスタイルが確立してきています。地域にもわらしな太鼓が知れ渡り、また理解していただき発表の場も増えてきています。しかし反面、指導上では行き詰まることが多々ありました。それは全員で和太鼓をやっていく難しさにありました。利用者の中には、太鼓を好きな人、嫌いな人もいるのではないかという悩みも抱えていました。指導員は、太鼓を強制しないように、楽しみになるように配慮しながら、のんびり、ゆっくり、遊びながらの太鼓も加えていきました。運動会が近い時の応援太鼓の練習や、個人でのリズム披露、障害物競争に太鼓を加えたりと多くの工夫を加えました。そうしていくうちに、ありのままの姿で素直に、みんなで叩く太鼓がいちばん楽しいことに気付いたのです。
 8年目になると、みんなに余裕が出てきました。発表の場が増えたことで、全員の練習にも力が入ってきました。施設の外へ出ていろいろな人と触れ合うことや、人前に出る緊張感を肌で感じることが、気分転換や社会性と礼儀を養えるというプラスの方向へ流れ出しました。
 そして13年目の現在、練習は「明るく、楽しく、元気よく」を目標に、毎週2回2時間程度行なっており、みんなが、とても楽しみに参加しています。オリジナル曲は、地元藁科川流域に言い伝えられている昔話や、故郷静岡を題材にみんなで作曲し、覚えやすいように、また叩きやすいように構成しています。全員の成長とともに毎年1曲づつ増え、現在は10曲を数えるまでになりました。
 昨年度は、静岡市主催の第12回静岡市民大音楽祭のオープニング演奏、特別養護老人ホームでの夏祭り演奏、静岡県中部地区施設主催の中部地区社会福祉施設合同文化祭、静岡県主催の第4回静岡県障害者芸術祭での演奏を行ないました。
 演奏後の「頑張ったよ、」「間違えちゃった」と話すことも、とても楽しみになってきています。みんなで太鼓が大好きになり、生き生きと叩くことで自信がつき、社会と接点をつくり、豊かな学園生活を送ることができるようにこれからも療育太鼓に取り組んでいくよう、みんなで努力していきます。








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