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大江戸助六流ろう者太鼓「鼓心会」(東京都)
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─プロフィール─
 私たち鼓心会は、東京の下町、神田にある大江戸助六太鼓に所属しており、頭、プロ達に毎週火曜日の夜に教わって、稽古に臨んでおります。
 耳が聞こえなくても体で響きを感じて、「心で打て」と頭に言われながら、一打一打の響きを感じとって覚えています。
 けれどもなかなかその通りに打つことができず、時間をかけながらの繰り返しです。
 他に、姿勢は、頭のてっぺんから指先、足先まで正しく美しい姿勢を、そして声の出し方、出すタイミングや声を出す長さを教わり、呼吸方法とここで息を吸うといったように教わりながら、一打を心強く、遠くまで響くよう、努力しています。
演奏曲
出演者
加藤智差子   稲葉 考一
田沼 徳実   西元 香里
足助 絵里   猪俣  恵
澤地 正行    
─実践報告─
 鼓心会のメンバーは聴覚障害者だけで構成しており、毎週火曜日にプロに指導してもらい、他に月に1回自主的に集まって稽古を行っています。
 リズムはもちろんですが、姿勢・表情・声を繰り返し教え込まれます。聴覚障害者にも音楽が好きな人は少なくないのですが、リズムにあわせるのが大変です。簡単にリズムを覚える者もいれば、なかなか覚えられなくて何回も何回も背中で正しいリズムをたたいてもらいながらやっと覚える者もいたり、レベルがまちまちです。自分ではちゃんとあわせているつもりでも知らない間にずれてしまったり、ずっと同じ姿勢でのリズムならあわせられても動きだすと視覚的につられ、ずれてしまったりします。もちろんずれてきたら、その都度その場でとめて正しいリズムに矯正します。それを何回も繰り返して正しいリズムを覚えていきます。
 ドンツクツクドンドンツクツクドンというリズムがあります。それをついこの前までドンツクドンドンドンツクドンドンでうっていて、確かにリズムはあっているけど何かが違う。でもそれが何なのかわからないままやってきて、ある日、頭に「それはちがう、ドンツクツクドンだ」と指摘されてやっと気が付くこともありました。
 姿勢はどこの世界でも大切なことですが、鼓心会でも重く見ています。なぜかというと姿勢が正しければみんな同じ動きをする=音を合わせやすくなるからです。人間は楽なほうに逃げたがるので正しい姿勢を覚えるのに苦労しますが、一度覚えてしまえばとても楽です。
 声・表情についてはとても難しいです。声が出せればリズムにのりやすくなり表情も生き生きとしてくるのですが、私たちは耳が聞こえなく、その聞こえ方も相手の声が聞き取りにくい人もいれば、聞き取れる人もいてレベルがばらばらです。そのため声に関してはあまり意識していませんでした。しかし、聞こえないからといって声を出さないでいると、リズムを追うだけで一生懸命になってしまい、はっと気が付くと自分だけの世界にこもってしまうこともあります。もちろんその時の表情はリズムを考えているぞというのがありありです。
 前にそんな表情をしている人たちの舞台をみたことがあり、その時は楽しい!というものが伝わってこなく、ただ一生懸命やってますというのが伝わってきて何ともいえませんでした。それからは声を出せるときは出すように意識していますが、はじめは声を出していると自分がどこをうっているのかわからなくなり、大変でした。でも、声があると舞台全体の空気が違うし、顔の表情も動きが出てくるので、これからは声も大切にして曲をつくりあげていきたいと思います。あとは最初の一打ちでリズムにのる!これが簡単なようでなかなかできません。プロの舞台をみると最初の一打ちだけで胸がわくわくしてくるのですが、私たちがやるとなかなか胸がおどるような最初の一打ちができません。それができるようになればいいなと思っております。








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