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和太鼓 ちんどん(長野県)
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─プロフィール─
 「和太鼓ちんどん」は長野県立稲荷山養護学校の在校生や卒業生でつくる肢体不自由者の和太鼓グループです。平成4年に結成し、現在、活動10年目を迎えています。和太鼓演奏を通じ感性を磨き、障害者の自立と社会参加と目的として活動をしています。現在は小学生の7歳から社会人の25歳、15名でつき2回の練習と地域社会との交流演奏をさせていただいております。
 グループのできたきっかけは学校に併設する稲荷山福祉センターで地元の太鼓グループに通う職員数名がイベントの練習に体育館で太鼓を叩いていると、子供たちが太鼓の音に誘われ見にくるようになりそのうちに「自分たちも太鼓をやりたい」と言い出したことからでした。
演奏曲
ソイヤ〜ちんどん
出演者
青木  浩   竹節 広志
黒沢 絵美   小山 匠子
小林 弘征   浦沢奈々恵
西沢 哲史   西沢  寛
高橋 健一   越 美紗希
小岩 秋彦   石坂 明美
児玉 昌也   竹内 美佳
─実践報告─
 最初は段ボール、古タイヤ、竹などを利用して練習を重ね、地元の矢代一重山太鼓より和太鼓をお借りして演奏ができるまでになり、長野パラリンピックの文化プログラムや東京国際フォーラムの日本の歌声祭典などにも出演し、地元でも様々な催し物、演奏会等にも参加させていただいています。一昨年は、身体の障害にあった自前の太鼓を持つことができ、かねてから夢であった「海外で日本の伝統芸能である和太鼓を演奏し、仲間の和を広げたい」という思いを、ハワイで開催された障害者の「自立生活国際サミット」の中で、実現させていただきました。
 こんな活動の中で気付いたメンバーの変化を少し紹介します。
[1]団体活動の中で自分を見い出すこと、知ることができるようになりました。上の子が下の子の面倒を見たり教えたり、下の子が上の子に相談したりと仲間で行動する中で自分の役割、位置が見えてきている。
[2]和太鼓にエネルギーをもらっているT君。不登校であったT君は、朝起しても起きれないことが多かったが、太鼓の練習や発表がある日は自分から進んで早起きし周りの人を驚かせていました。普段のT君とは別人のように顔も輝いていたようです。
[3]バチが持てるようになったH君。もともと気の弱いH君は、バチが重くて持っていられず太鼓がいやになってしまいました。そこで、バチを包帯で手に固定し練習をするようにした結果、今はバチを固定しなくても自分で握り叩くことができるようになっています。
[4]太鼓が生き甲斐となったK君。立つと安定しないために当初車椅子で叩いていたK君は、バランスコントロールができるようになり今では立って太鼓を叩けるまでになりました。
[5]精神的成長。じっと椅子に座っていられなかった子が、集中して30分近いステージで演奏できるようになりました。また、引っ込み思案だった子が、ステージを何度か経験しいろいろな人から話し掛けられると自分から積極的に話ができるようになりました。
[6]音符を理解させることにより音楽療法でリズムを。
 音符を読めない子供たちにどう教えるか悩んだ末、音符に言葉をつけ叩いてみたところすぐにリズムを覚えてしまいました。例えば、ミッキーマウス、チーズケーキなどみんなが知っている言葉をつなげたものです。
〔7〕親よりボランティア。メンバーの介助は親がやっていますが練習では、小さい子は親に甘え、思春期を迎えたメンバーは自立心もあり、親に反発しています。指導者や第三者から言われることに対しては素直に受け入れられるようです。
今後の予定
 一昨年、ハワイの「自立生活国際サミット会議」に出演した縁でハワイ州知事より来月2月に開催される「ハワイ州ボランティア会議」での歓迎式典での演奏を依頼され、そこに出席します。また、現地の障害のある子供たちや老人ホームの人とも交流をしてきます。
 社会の中で交流が限られがちな障害者が、和太鼓を通じて社会との交流を持とうとしています。「和太鼓 ちんどん」の活動は、障害者に自立をする上での支えになり将来的な仲間作りや社会的に自立できる活動の場として展開していきたいと思っております。








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