6)調査の考察
類似する各種防護具の調査結果から、試作するネックガードの形式、仕様、作動方法等を検討調査し、試作原案を作成する。
[1]形式
調査したオートバイ用衝撃緩和ジャケットや建築落下衝撃吸収のセーフティジャケット、また、一般市販自動車のエアーバッグ等に見られるように、エアーガス膨張式のものが、衝撃吸収性能は良好である。エアーバッグ式は、資料の中の衝撃吸収性試験結果でも衝撃値を大幅に緩和していることがわかる。また、ガスボンベ等による、膨張式では、折り畳んでカバーを付ける事で収納を可能とし、操縦、運動等の行動の確保が可能である。
このジェットスポーツ競技では、艇のバランスを保つため身体の運動が激しく、身体の自由が損なわれるものは使用できない。
調査で、クッション製の首部の周辺に、ヘルメットと肩の隙間に使用する小型のネックガードは、浮力が小さいため、落水時の待避行動は容易と思われるが、首の運動は制限されやすい。事実このタイプは、カート、F1等の固定座席に乗車するレース車に使用される場合が多いようである。
[2]膨張作動方法
膨張式の場合、事故発生時に膨張させなければならないが、この作動方法は様々考えられる。調査のオートバイ用の形式では、ジェットスポーツの競技規則において義務付けである、艇を離れた場合エンジンを停止させるテザーコード方式と同一形式のものを使用している。
建築用のセンサー方式は、足への加重変化や重力方向変化で作動するが、ジェットスポーツでは乗艇時の運動が激しく、向いていないであろう。
膨張式の救命胴衣(インフレッタブルジャケット)の、紙の水溶解による自動センサー式は、ジェットスポーツ競技で事故による落水後では、意識がない場合も多いので試験する必要がある。現状、手動による作動がもっとも確実と思われるが、自動センサー式と併用すれば、使用勝手がよいと思われる。
[3]調査結果による試作仕様案
(1)ガスボンベによる膨張式のエアーバッグタイプのネックガードとする。
(2)救命胴衣は、ジェットスポーツ競技会で義務付けしている防護型救命胴衣(セーフティジャケット)を使用する。
(3)膨張前は、救命胴衣の襟部にカバー付きで収納する。固定は、マジックテープ又はホック式で、ガス圧の膨張により、自動的に開くものを選択する。
(4)ガスボンベ作動は、手動又は水没自動センサータイプの併用。または、テザーコードによる落水手離れによるガスボンベ開口式の中からの選択であろう。
(5)形状は。救命胴衣の後部に後傾防止のヘッドレスト的な襟が付属しているため後部は不必要で、前部と左右にエアーバッグが、ヘルメットと肩の間に膨張するものとしたい。ヘルメット、ネックガード、防護型救命胴衣がライダーを総合的に保護する形状とする。