2)建築工事の墜落衝撃吸収用ライフジャケット
建築作業者の建物からの落下衝撃防止装置で、仕組みは車のエアバッグと同じで、墜落時の衝撃を半減させ、また、墜落死するところを重傷程度に軽減することができるものである。衝撃吸収試験も実施しており、エアーバッグ式の効果が推定できる。
[1]使用目的
建設現場の墜落事故から人命を守るための、墜落衝撃を半減するエアーバッグ付きライフジャケット。
建設現場における労働災害の多くは墜落災害で発生してる。平成10年の建設業における死亡者総数725名のうち、墜落・転落に起因する死傷者数は332名で、全体の46%を占めている。なお、全産業においても墜落死は511名で、死亡総数1,844名の約28%を占めている。
特に高さ2m〜10mという比較的低い位置からの墜落が多くを占てる。この対策として、親綱、手すり、安全ネットの設置の徹底など、各現場で事故防止の対策は施されてはいるが、それぞれの設置には若干のタイムラグが生じることや、これぐらいの高さならという心のゆるみが大きな事故に繋がっている。
[2]仕様(写真)
エアバッグが開いた状態のライフジャケット(1号)
エアバッグが開いた状態のライフジャケット(2号)
[3]結果
本ライフジャケットは、高さ2m〜10m程度の高さからの墜落災害のうち、死亡は重傷に、重傷は軽傷に、軽傷は無傷に軽減しようというコンセプトで開発したものである、その仕組みは、両足の靴と尻部にセンサーが設置され、両足と尻部が足場から同時に離れたことをセンサーが感知すると、墜落と判断して自動的に充気装置にスイッチが入り0.6秒以内にエアーバッグが膨らむ。その結果、墜落による首、肩、背中、腰の衝撃荷重を約半分に緩和できることを労働省産業安全研究所の実験で下表のとおり確認している。
落下実験結果(第1号試作品)
高さ |
1.5m
(65kgダミー) |
2.0m
(65kgダミー) |
5.0m
(85kgダミー) |
ダミーのまま落下 |
(頭部)294G |
(頭部)422G |
(頭部)568G
(腰部)1006G |
装着・バックは充気済み |
(頭部)52G |
(頭部)199G |
(頭部)530G
(腰部)462G |
鹿島並びに鹿島事業協同組合連合会では、今回開発したライフジャケットはコストやデザインなどに改善を要する点がいくつかあることから、今後改良を加えながら完成度を高め、最終的には安全帯に次ぐ第三の保護具として普及を図っていく方針である。本商品は、建設作業員が誤って高所(2m以上)から墜落した場合、「墜落した」という行動パターンを腰部に取り付けた「墜落感知センサー」が感知し、0.2秒でライフジャケットの「エアバッグ」が全開して、人間の急所である頭部・脊椎・腰椎を墜落衝撃から守る仕組みになっている。
(85kgダミー) |
落差1.5m |
落差2.5m |
落差5.0m |
落差8.0m |
エアバッグなし |
235G |
318G |
380G |
524G |
エアバッグ付き |
97G |
188G |
266G |
453G |
市販製品(Gは重力加速度) 労働省産業安全研究所の実験結果 |
*落下条件
水平仰向けでダミーを落下。(最もエアバッグ効果がある条件)
安全帽(墜落時保護用のもの)を常時使用 |
[4]その他
1995年に開発に着手し、2年前に完成した「ライフジャケット第1号」は、両足と尻にセンサーを取り付け、両足と尻に掛かる荷重がなくなると同時に、腰につけた墜落感知センサーが墜落を感知して0.2秒でエアバッグが開く仕組みである。
しかしながら、作業員が靴を脱着するたびに配線コードも脱着しなければならなかったことから、今回墜落を感知するセンサーの感度を向上させると共に、実験で得たいくつかの墜落パターンを記憶させ、センサーをライフジャケット内に内蔵させる(配線コードをなくす)ことで、使い勝手を向上させた。
鹿島事業協同組合連合会(理事長:楳津繁)は、労働省産業安全研究所の指導・支援を得て開発したもので、「一命多助」の商品名で、予定価格1着98,000円で市販されている。