1.はじめに(概要)
1)現状
ジェットスポーツ競技会における事故は、近年、関連団体の協力、努力により事故件数が減少してきたが、2000年9月に大阪で開催された「ジェットスポーツ全日本選手権シリーズ戦」において、競技中に艇同士の接触で落水者が生じ、この落水者に後続の艇が衝突したことによる死亡事故が発生した。これは、前を走る艇の水しぶきの中を航走する後続艇が、前方の視界が十分に確保できずに、水面上の落水者に接触した事故であり、ジェットスポーツ競技上の避け難い特有なものであった。
落水者に対する後続艇の衝突は、以前から重大事故につながっており、競技運営上で大きな問題であり、後続ライダーの視認性の確保、落水者自身での防御等で事故防止が望まれる。
この対処で、落水者が取るべき安全対策の基本動作として「落水しても艇から離れないこと。また、ヘルメットのチンガードを持ち、水中に没し、直ちに頭を上げず、後続艇の通過を待つこと」とし、関係者間で指導を行っている。
ジェットスポーツ競技艇では、プロペラ等が船底に露出してないため、水面下に身体を低くして、後続艇の通過を待つのは必要な対処法である。
しかし、突発的な事故で落水し直ちにこの動作を取るのも容易でなく、また、落水時に潜る動作を行おうとしても、浮力の大きいライフジャケット、ヘルメットやウェットスーツを身に付けている状態では容易でない。今回の事故で選手が取った行動のように、手を上げ後続艇に存在をアピールすることも、ある意味で必要だったと思われるが、退避行動が十分でないためか選手の危険を増加させてしまった。
2)事業目的
ジェットスポーツ競技において、落水者に対する後続艇からの衝突事故の衝撃緩和を目的に、ヘルメットと防護型救命胴衣の間で、首部を保護するネックガードの調査、試作研究を行う。
後続艇から視認性の良い目立ち、落水者の首部を後続艇の衝撃から保護するもので、救命胴衣の衿廻りに衝撃吸収性の高いネックガードの装備を行ない、ライダーの安全確保を図る防護装備方法を研究する。また、合わせて他の防護方策も検討したい。