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島原の町家と町並み調査に寄せて
 今回、島原市が財団法人日本ナショナルトラストの観光資源保護調査の対象として選ばれたことについて、非常に喜ばしく思います。
 島原市は、人口4万人ほどの小都市でありますが、白亜の島原城と水路のある武家屋敷街、名水百選に選ばれるほどの豊富で清冽な湧水群など、見所のある城下町として、多くの観光客に親しまれています。しかしながら、平成2年から8年までの雲仙普賢岳噴火災害により、多くの人的物的被害を受けるとともに、一時期観光客も激減しました。現在、日本で一番新しい山「平成新山」を活かした観光のあり方を模索しており、平成14年夏の「雲仙岳災害記念館」落成が期待されています。
 このような中、調査していただいた島原の民家と町並みの中に、住んでいる私たちが気づかなかったような財産があることに驚きました。テーマに「キリシタン信仰の痕跡が残る民家と町並み」とあり、キリシタンは公式には島原の乱で全滅したはずで、どういうことだろうかと思いましたが、宮澤先生のお話をお聞きして、「自らがキリシタンでない」ということを建物や習俗に表していることがわかりました。一年中しているしめ縄、通りに面して突き出た仏間。これらは地元に住んでいる私たちには何でもないことだったのですが、もともとはきちんと意味のあることだったようです。
 全国的に見て、珍しいこれらの財産を今後、どのように活かすか。十分検討していきたいと思います。
 また、今回、文化財を活用するまちづくりについて3つのご提言をいただきました。歴史のまち島原を具現化するためにも、ご提言をよく検討し、今後のまちづくりに活かしてまいりたいと存じます。
 最後になりましたが、宮澤先生はじめ調査委員会の先生方、実際に調査に取り組まれた長岡造形大学等の関係者の方々、快く調査に応じてくださった市民の皆様にこの場をお借りして衷心より感謝申し上げます。
 
2002.2.22
島原市長 吉岡 庭二郎








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