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はじめに
 財団法人日本ナショナルトラストでは、昭和46年度より全国の貴重な自然や文化財などを対象に観光資源保護調査を行い、観光資源の保全・活用の提言を行っている。これまでに、その数は全国で約180件にのぼっており、「旧吉田宿の町並み」調査は、平成13年度の観光資源保護調査のひとつとして実施した。
 埼玉県吉田町は埼玉県秩父地方にあって、群馬県と接している。現在は谷あいの静かな町だが、かつては交通の要衝として、一時武蔵の国を治めた居館が置かれたこともあり、また秩父事件の舞台として歴史に登場してくる。明治年間に大火があり、明治時代以前の町並みの大部分は失われているが、有形文化財に登録されている旧武毛銀行本店や東亜酒造の建造物群など見るべきものもある。また中心となる商店街は、洋風の医院やなつかしい店構えの和菓子店や理髪店など、タイムスリップしたような感覚にとらわれる不思議な魅力を持った町並みであり、平行して流れる吉田川沿いの散策も含め、どこかほっとする空間をつくりあげている。吉田町では、これら中心市街地の活性化に向けて、歴史的建造物の活用も含めた整備計画を検討している。本調査は、歴史的建造物の基礎調査を実施し、その価値をあきらかにし、歴史的建造物の保存活用を中心とした計画を提案した。本調査を進めるにあたって構成した委員会では、具体的な活用提案も含めた活発な議論が行われ、町民の関心の高さが感じられた。吉田町が本調査の成果を活用していただければ幸いである。
 最後になりましたが、調査にあたっては、住民の皆さん、吉田町役場、関係者の皆さん、さらには調査に精力的に関わっていただいた株式会社都市建築研究所のみなさん、筑波大学の藤川昌樹先生、多くの方々のお世話になりました。記してお礼を申し上げます。
平成14年3月
 社団法人 日本観光協会








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