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2-7 答申第10号の総括と残された課題
(1) 整備目標に対する評価と課題
[1] 大規模プロジェクト等への対応
 
評価
・ 現在、工事中、施行認可済の路線も多く、これらの路線が順次供用開始されることにより、更なる連絡性、利便性の向上が図られるものと考えられる。
(ナショナルプロジェクト)
・ 関西国際空港連絡線の供用により、大阪、京都方面から直通運転が図られており、アクセス利便性は良好である。
・ 関西文化学術研究都市整備へ対応する京阪奈新線は、現在、工事中であり、供用されることにより大阪方面からの直通運転が計画されており、アクセス性が向上するものと考えられる。
(新しい再開発拠点)
・ 郊外部、臨海部における再開発拠点への対応として答申された路線は、開発計画の遅延等により一部未着手の路線もあるが、概ね整備された。これにより、沿線から都心部等へのアクセスが容易になり、例えば、臨海部においては南港テクノポート線や六甲アイランド線等が供用され、都心間とのネットワーク形成に寄与している。
(市街地再開発拠点)
・ ABランク路線は、ほぼ供用、もしくは事業に着手しており、開発拠点間の相互連絡、都心部の既存業務集積地との連絡性、速達性が確保されることによって、大きな効果がもたらされている。
 
課題
・ 答申第10号時に想定した開発計画の遅れなどにより、新規路線事業化の大幅な遅れ、また、計画需要量の減少に伴う経営状況の悪化など、鉄道事業に深刻な影響を与える場合がある。
・ そのため、今後の鉄道整備を考える上で、各種の沿線地域開発の遅延が鉄道経営に悪影響を及ぼさないよう地域開発と鉄道整備計画との調整を図る必要がある。
・ ABランクの未着手路線の事業化については、事業採算性の確保、既設路線への影響、他の事業計画との調整等、関係自治体の協力等を十分考慮する必要がある。
 
 
[2] 混雑の緩和
 
評価
・ 輸送力増強等の結果として、大阪圏主要20区間の平均混雑率は、187%(S60)→144%(H12)と大きく改善し、答申第10号の目標値である平均混雑率150%以内を達成している。
・ 個別の路線ごとに見た場合、ほとんどの路線において、減少傾向が続いている。
課題
・ ピーク時に優等列車への需要が集中し、混雑率150%以上を示している路線が一部で見られる。このような路線については、よりきめ細やかな輸送計画に基づく輸送サービスの改善が必要である。
・ 梅田、難波など都心部における大規模ターミナルでは、郊外路線から地下鉄等への乗り換え需要が多い。それに伴い、ターミナルにおける乗り換え流動による混雑の解消が必要である。
・ 未着手路線の中には、既に混雑緩和という当初の目的を達成している路線もあることから、こうした状況を踏まえた見直しが必要である。
 
 
[3] 鉄道サービスの高度化
 
評価
・ JR東西線の整備は、JR福知山線等の新たなネットワーク形成に伴うシームレス化を実現し、尼崎駅での乗り換え利便性向上により、サービス向上において顕著な効果があった。
・ 環状方向のネットワークを形成するモノレールの整備は、従来放射状であった大阪府域のネットワーク向上に寄与し、時間短縮などの効果をあげている。
・ このように整備された答申路線の多くは、都心部における路線間の強化、鉄道軸の形成に大きく寄与している。
 
課題
・ 大阪圏の鉄道路線は郊外部において枝線路線が多く、その路線の多くは本線への直通運転が行われていないことから、枝線一本線の乗り換えを要するなど、移動時間にロスが多くなっているなど利便性が低い。
・ また、東京圏に比べ相互直通運転の実施箇所も少ない。今後、更なる利便性の向上を図るため、自社線内での枝線一本線の直通運転、並びに相互直通運転区間等の検討が必要である。
・ 鉄道ターミナルにおける乗り継ぎ利便性、他交通機関との結節性(特にバスとの連絡)が弱い。このため、ソフト面も含めた圏域ネットワーク全体のシームレス化が求められる。








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