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小型舶用エンジン用メンテナンスモニターシステム
ヤマハ発動機株式会社
1.調査研究の目的
 小型舶用エンジンにおいて、故障を未然に防いで性能と寿命を維持するためには、適切な時期におけるメンテナンスが不可欠である。エンジンの高出力化が進み、より一層メンテナンスの重要度が増している反面、ユーザーの意識は低下傾向にあり、メンテナンス不足が原因と思われる不具合も増加している。
 本調査研究では、小型舶用エンジンの故障防止と性能・寿命維持に重要なメンテナンス項目について、適切な実施時期を自動的に管理・告知するシステムを開発する。 これによって適切な時期におけるメンテナンスの励行を推進、エンジンの総ライフサイクルコストを低減してユーザーの利益保護を図ることを目的に実施した。
2.実施経過
2.1 実施項目
 本調査研究では、小型舶用エンジンの故障防止と性能・寿命維持に対して重要なメンテナンス項目について、運転時間を計測・管理することで自動的に適切なメンテナンス次期を管理・告知する汎用性の高いデジタルモニターシステムを開発した。
 本調査研究の推進に当たっては社団法人日本舶用工業会・小型高速機関技術専門委員会のバックアップを得るとともに、専門事項の一部については日本精機株式会社の協力を得て実施した。
[1] メンテナンス管理項目の調査
[2] システム設計
[3] システム要素の設計・試作
[4] 台上試験装置の設計・製作
[5] 評価試験
[6] 評価結果の解析
[7] 改良検討
[8] とりまとめ及び報告書の作成
2.2 実施期間
開始 平成12年4月1日
終了 平成13年2月15日
2.3 実施場所
 ヤマハ発動機株式会社 舟艇事業部
〒431−0302 静岡県浜名郡新居町向島3380−67
 日本精機株式会社
〒940−8580 新潟県長岡市東蔵王2−2−34
3.実施内容
3.1 予備検討
 本調査研究をスタートするにあたり、開発目標を明確にするための予備検討を行った。ここでは目標機能の概要:基本機能とそれを具現化するときに要求される様々な要件を抽出するために図1に示す【パイロットランプ方式】を想定して検討を進めた。
図1 想定案(パイロットランプ方式)
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3.1.1 基本機能
 開発目標とした基本機能を以下に示す。
[1] エンジン運転時間を自動的にカウント・記憶。
[2] 様々なメンテナンス項目について、その実施スケジュールを記憶。
[3] 運転時間がメンテナンス実施時期に達すると自動的に告知。
[4] 告知リセットによりメンテナンス実施と判断、先回との間隔を記録する。
[5] すべてのメンテナンス・リセットの記録(履歴)を読み出すことができる。
 
3.1.2 想定システム
 開発要件抽出のために想定・立案した【パイロットランプ方式】の内容は次の通り。
[1] 制御装置
●運転時間をカウント・記憶、あらかじめ設定されたメンテナンス時期に達するとモニター装置へ告知信号を出力する。
●記憶素子には不揮発性メモリ(EEPROM)を使用、バッテリによるバックアップを不要とする。
●運転の判断には汎用性を重視してキースイッチ・オン信号を利用する。実運転時間との差が問題となる場合には、エンジン油圧スイッチ信号を併用する。
●リセットスイッチを内蔵、同スイッチ入力=メンテナンス実施としてその履歴データを記録する。
●インターフェイスを介して、メンテナンス履歴データをパソコンへ出力する。
[2] モニター装置
●合計10個のランプと1個のブザーを持つ。
●各ランプには1個ずつメンテナンス項目が割り振られ、制御装置からの信号によって点灯、メンテナンス時期に達したことを告知する。
●ブザーはランプによる告知を補助するモノとして使用する。
●金型費抑制のため、弊社の他製品のケース金型を流用する。
[3] インターフェイス
●制御装置に記憶されたメンテナンス履歴をパソコンへ出力する際に使用する。
●ケーブルと通信回路(ドライバ・レシーバ)から構成される。
●通信回路は制御部へ内蔵しても別体でも良い。
[4] 組合せパソコン
●普及度からウインドウズ系パソコンとの組合せ使用を前提とする。
 
3.1.3 基本環境条件
 最近の小型舶用エンジンでは使用期間の長期化が顕著になっており、従来の想定寿命期間では不足することが考えられる。この状況をふまえて基本的な環境条件を表1の様に設定した。
表1 基本環境条件
  項目 条件レベル 備考
1 設置場所 キャビン内 半開放式の場合あり。
2 保存温度 -30〜+80℃  
3 使用温度 -20〜+70℃  
4 振動 3G以下 最大100Hz
5 耐水 JIS S1 噴水レベル
6 防湿・耐蝕 塩水噴霧・高温高湿雰囲気  
7 使用期間 15年  
8 作動時間 30000時間 運転時間








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