IOCと覚書締結
IOCとIWGAは、2000年10月、モナコでの国際競技団体連合(GAISF)総会会期中に「相互協力に関する覚書」に調印し、一層の連携強化をアピールしました。
「相互協力に関する覚書」内容は以下のとおりです。
国際オリンピック委員会および国際ワールドゲームズ協会間の覚書
国際オリンピック委員会(IOC)および国際ワールドゲームズ協会(IWGA)は、社会におけるスポーツ活動の普及に共に努力する。
IOCは、国際総合競技大会としてのワールドゲームズの重要性を認識し、以下の指針に基づきIWGAを支援することに合意する。
・IOCは、IWGAに対し必要に応じて専門家を派遣するほか、IOCのスポーツ局、国際競技連盟(IF)対応渉外局を通じた協力を継続するなどオリンピック運動の一環としてIWGAの活動を支援する。
・IOCは、ワールドゲームズ組織委員会を後援し、技術的支援を行う。
・IWGAは、全ての競技の選手役員が国の代表としてワールドゲームズに参加することの重要性を認知し、今後のワールドゲームズにおいて新しい概念を実践していく。
・IOCは、各国オリンピック委員会が、ワールドゲームズに参加する各国代表選手団へ支援することを奨励する。
・IWGAは、IOCの支援、提言を得ながらワールドゲームズ競技を検討し、その普及に積極的に努める。
・IWGAは、オリンピック競技種目ではないものがワールドゲームズにおいて実施されうることを認める。
・IWGAは、IOC承認国際競技連盟【夏期オリンピック国際競技連盟協会(ASOIF)、冬季オリンピック国際競技連盟協会(AIOWF)、IOC認定国際競技連盟協会(ARISF)】、国際競技団(GAISF)加盟の全競技連盟、またはIWGA加盟の国際競技連盟の競技だけがワールドゲームズにおいて実施される対象となることを確認する。
・IWGAは、世界反ドーピング局(WADA)と引き続き緊密な協力関係を築いていく。
・IOCは、オリンピック運動反ドーピング規定に従い、ワールドゲームズ組織委員会に対し、ドーピングコントロール費用の援助をする。
2000年10月27日 モナコ、モンテカルロ市において、英語、仏語の文書に署名。
国際ワールドゲームズ協会 |
国際オリンピック委員会 |
会長 ロン・フローリック |
会長 アントニオ・サラマンチ |
IOC AND IWGA SlGN MEMORANDUM OF UNDERSTANDING
Monaco 27 October 2000
The International Olympic Committee (IOC) and the International World Games Assocation (IWGA) today signed the following document :
Memorandum of Understanding between the International Olympic Committee (IOC) and the International World Games Assocation (IWGA)
The International Olympic Committee (IOC) and the International World Games Assocation (IWGA) share the same value of promoting physical and sporting activities for the well-being of society.
The IOC recognises the importance of the World Games as a multi-sport event and agrees to support the IWGA and provide assistance based on the following principles :
-The IOC will provide its expertise when needed and will maintain its cooperation with the IWGA through its Department of Sports. Olympic Games Coordination and Relations with International Federations, and will help to promote IWGA's activities within the Olympic Movement.
-The IOC agrees to grant its patronage to Organising Committees of the World Games and to provide technical assistance through the transfer of knowledge programme.
-The IWGA recognises the importance for athletes and officials in all sports to participate as a national multi-sport delegation at the World Games, and will therefore implement this new concept in future World Games.
-The IOC will encourage the National Olympic Committees (NOCs) to supprt and assist their national multi-sport delegations taking part in the World Games.
-The IWGA is willing to review and further develop the sports programme of the World Games with the help and input of the IOC.
-The IWGA accepts that disciplines/events of sports that are not on the Olympic Games programme could be included on the programme of the World Games.
-The IWGA shall ensure that only sports whose International Sports Federations are recognised by the IOC (ASOIF, AIOWF, ARISF), or are full members of GAISF, or are existing members of the IWGA, will be included in the World Games programme.
-The IWGA shall continue to develop a close working relationship with the World Anti-Doping Agency (WADA).
-The IOC also agrees to grant funding to the Organising Committees of the World Games for doping control, according to the Olympic Movement Anti-Doping Code.
Done in Monte Carlo, Monaco, on this 27th day of October 2000, in two originals in the English and a French language.
Ron Froehlich |
Juan Antonio Samaranch |
President |
President |
International World Games Association |
International Olympic Committee |
第6回ワールドゲームズ(秋田大会)の評価
アンケートによるIF評価の中間報告
※この報告は2001年10月、シンガポールで開催されたIWGA総会において発表された内容をAOCの責任で翻訳したものである。
評価アンケートが全てのIWGA加盟IFへEメールで送付され、現在まで、24連盟中13連盟から回答があり、返送された全てのアンケートについて以下のとおり、まとめられた。評価は3部で構成される。
1 準備期間
2 アクレディテーション期間
3 ワールドゲームズ大会期間
1.準備期間
準備期間については過去のこれまでの大会より評価が高かった。IWGA、TD、日本連盟とのコミュニケーションについては、良および優秀という評価だった。中にはTDとのコミュニケーションで言葉の問題があった連盟もあったが、日本連盟の支援により大きな問題には至らなかった。AOCとのコミュニケーション、運営については、二つの問題点があった。AOCは非常に官僚的で、柔軟性に欠けたため合意に達するのが困難だった。情報提供は、多くの場合において遅すぎ、不明瞭で、また複雑だった。
2.アクレディテーション期間
アクレディテーションおよびトラベルプランの準備に関する評価は低かった。総体的には、アクレディテーションの手続きは非常に複雑で、不必要な時間および調整を費やした。申請書は、はるかに簡潔な書式で必要な情報を得ることが可能だった。トラベルプランの手配について、AOCとジェイティビー間の連携が不十分であった。特にジェイティビー海外支店との相互協力が不足していたため、渡航に必要な情報入手がほとんど不可能であった。旅行パック料金は、各国地元の旅行代理店が提供した料金よりはるかに高かった。
3.ワールドゲームズ大会期間
大会について特筆すべきことは、開会式とワールドゲームズパーティー、素晴らしいメダル、屋内施設の質および日本連盟の協力である。到着時のアクレディテーションおよびホテルまでの輸送については、例外を除き良い評価だった。
大会期間中の輸送についての評価は、宿泊および競技施設の場所により異なった。競技施設が宿泊施設の近くだった場合は問題なかったが、それ以外の場合は、座席数、運行回数に関して不十分だったという評価となった。宿泊施設に関しても評価にばらつきがあった。標準以下のホテルに滞在した参加者からは不満の声が出た。食事については、大きな問題はなかった。競技会場に準備された器具、機材が要請したものと異なったケースがあったが、概ね競技会場準備は順調に行われた。また、ある競技会場では、コミュニケーションツールが不足していたため、情報伝達を必ずしも十分に行うことができなかった。更衣室およびシャワー室には大きな問題なかったが、一部狭い施設がみられた。
リザルト(競技結果)の提供は、ホームページ上では良かったが、印刷物としては作成されなかった。宿泊施設、競技施設が広範囲に所在したため、競技終了後、他競技の参加者との交流および各種イベントへの参加が困難だった。国内放送は、遅い放送時間ではあったが、良い内容だった。一方、海外放送はほとんど行われなかったため、アンケートの中で最も低い評価を受けた。
秋田大会には大きな問題点はなく、IFは第6回ワールドゲームズ(秋田大会)は成功した、と捉えている。
第6回ワールドゲームズ視察報告
IOC競技運営部マネージャー キット・マッコーネル
総評
前大会にも参加した選手・役員、IFやIWGAの役員、そしてオブザーバーらは、第6回秋田大会がワールドゲームズ史上最高でしかも一気にレベルを上げた大会と認識しただろう。
とりわけその要因となったのは、選手・役員に対するスムーズな運営であり、会場周辺の見事な街並み装飾による演出であり地域住民挙げての参加だった。
ワールドゲームズに対する選手の認識
私が直接話した選手の中で、ワールドゲームズが現段階で彼らの競技で最も重要な大会と認識している選手は少数だったが、今後大会を重ねることによって彼らの認識も変わっていくだろう。トップアスリートが多数参加し、十分な支援もあると彼らが感じることによって初めて、こうした認識が変革していくことだろう。
私が会った多くのIFや選手は、ワールドゲームズをオリンピックへの布石と受けとめていた。これは悪いことではなく、重要な総合スポーツ大会と位置づけているわけで、今後も大会を支持していくだろう。しかしながら、ワールドゲームズは世界のスポーツ界における存在感をより明確にしていく必要があろう。
IOCによる認知
会場
全ての会場(競技会場以外も含む)でオリンピック旗が掲げられていた。
出版物
全ての公式出版物に、五輪のマークとともにIOC後援の記載があった。また、IOC会長のメッセージが、競技ガイドを含め、すべての出版物に掲載されていた。
選手の認識
私が話した選手のほとんどが、IOCがIWGAとの関係を深めサポートしていること、そしてそれが何を意味するかを分かっていた。しかしながら多くの選手は、ワールドゲームズがIOCが支援するにも拘わらず、彼らの国のオリンピック委員会(NOC)が十分な援助をしないことに対して疑念を抱いていた。
選手の経験
更なる発展への鍵
選手が大会に参加することがワールドゲームズの更なる発展への鍵である。選手が大会で経験したことを自国にもちかえり、同僚の競技選手や役員、あるいは中心となるスポーツ統括団体やNOCに伝えることで、次の大会への認知度を高めていく必要がある。選手はワールドゲームズの認知度を高め普及させることができる重要な役割を担っており、だからこそ彼ら自身が大会に参加しそれを伝えることが大切なのである。
総合競技大会へ参加する選手の3つのポイント:
1. 各競技の技術的運営(施設、サービス)
2. 複数の競技参加者から構成される自国代表団への帰属意識。他選手との交流や大規模大会への参加
3. 大会が自国及び国際メディアにとって重要なイベントであるという認識
秋田大会では、1に関しては十分な配慮がされていた。他の2点に関しては前回より向上していたが、今後一層の留意と計画が必要であろう。
各国代表団の経験
選手が自分以外の競技を観戦し、同国選手同士の交流の場を増やす必要がある。代表団内のコミュニケーションはNOCのサポートにより改善されたが、今後もNOCやそれに代わる各国のスポーツ推進団体がワールドゲームズに参加する自国選手(団)を援助し続けるかどうかは保証されていない。何らかの方策を講じる必要がある。
秋田では、開会式やワールドゲームズ・パーティーが選手同士の交流を深める重要なイベントだった。開会式が非常に素晴らしく、多くの選手はオリンピックの開会式のようだと思ったのではないか。
今後全ての参加者が国単位でまとめられるとは思われないが、国ごとに各競技団体の連絡先一覧を作り、配付する必要があるかもしれない。そうすることにより、各国選手団が組織化されない場合でも、同じ国の選手・役員同士の交流が深まるのではないか。秋田ではポルトガルがこのような仕組みをつくり、各競技団体のリーダーが連絡を取り合って交流機会を設けていた。
開会式での選手入場
秋田大会の、開会式では参加国の国旗が入場したが、選手は競技団体毎の入場だった。今後は、国の代表としての意識を高めるため、選手は国単位で入場行進すべきだろう。IF旗や各競技団体旗の行進は構わないが、国単位での入場行進は最も重視されなければならない点である。
宿泊期間
選手達には一定の宿泊が無償で提供されたが、逆にその期間設定が、他の競技を経験したりその選手達との交流を深めたりするための障害となった。多くの選手は競技開始日の2、3日前に秋田に到着し、競技後数日で帰路に着いた。これが選手同士の交流を制限する要因となり、開催地をもっと知ろうとする機会を逃す結果となった。これは特に秋田市以外の市町村に宿泊した選手において顕著であった。また、競技実施日の設定によっては開会式や閉会式に参加する機会も限られた。
こうした参加や交流の機会を増やすため、将来的には現在規定されている宿泊期間を延長するよう、IWGAは開催都市の同意を得るべきであろう。
NOCのサポート
秋田大会での経験
秋田大会では、およそ20のNOCが自国の選手団に組織的または財政的援助を行った。オランダは全選手が大会期間中ずっと秋田に滞在したほか、ベルギー、台湾、中国、コロンビアなどがその一例である。この数字は前回より大幅に増えており、2000年10月に取り交わされた「IOCとIWGAとの覚書」、そして2001年1月にIOCから各NOCに出された書簡が大きく貢献したものである。
2005年のデュイスブルク大会では、次の理由でNOCの参加はさらに増えるだろう。
1. 地理−欧州のNOCは支援に伴う費用負担が減る。
2. 前例−秋田大会でのNOC参加による成功が公式・非公式のうちに流布し、2005年大会への参加に対する刺激剤となる。
3. 情報−オリンピック・ムーブメントの一環としてのワールドゲームズ秋田大会の推進が短期間のうちに成果を上げたことで、今後2005年大会までの4年間でより戦略的な取組みが期待される。
世界規模の参加
多くのチームやNOCにとって日本への渡航費は明らかに大きな問題であった。デュイスブルクでは欧州チームには負担の軽減となるだろうが、アフリカやアジア(日本、韓国、中国、台湾以外)、オセアニア地域のチームにとっては楽ではないだろう。大会への参加意識や財政事情など様々な要因があるかもしれないが、将来に向けてワールドゲームズという名を冠する大会であるためには避けて通れない道である。
IOC公認のIFとNOC
IOC公認のIFに所属する国内競技団体(NF)が、その国のNOCと関係を深めるのは重要である。オリンピック憲章では、NOCはIOC公認IFに属する自国NFを加盟させる義務はない。もし、あるNOCがワールドゲームズ実施競技の国際連盟に加盟しているNFと関連が無い場合、そのNOCが(WGへの)参加チームを支援する可能性は薄いだろう。
全く逆の例は、ベルギーとオランダのNOCである。これらのNOCは、大部分の自国NFと関係があり、ワールドゲームズに参加するチームを非常に積極的に支援した。英国では、IOC公認IF所属のNFがBOA(英国オリンピック協会)の公認と加盟を求めて躍起になっている状況であり、そのため、秋田大会への参加に関してはまとまった支援を受けられなかった。
財政問題
ナショナルチームへの支援に関し、IOCあるいはIWGAからNOCへの直接的な財政援助がないことから、NOCはワールドゲームズのために別途資金を集めるか、さもなくばオリンピックへの参加準備のために用意していた資金を振り向けるかしなければならない。これでは、NOCからの支援拡大に直接影響を及ぼすことになる。
オリンピック・ムーブメントの一環としての今後のプロモーション
IWGAおよびIOCは、オリンピック・ムーブメントの一環としてのワールドゲームズの認知度を向上させるため、推進戦略を確立する必要がある。この戦略は、攻撃的であったり誇張であったりする必要はなく、秋田大会成功の経験を伝達することと、大会の国際的な認知度の向上に力を入れることに傾注すればよい。
IWGAは、この点について、代表者を大陸別NOC会議に出席させるという案や、2001年大会成功のプロモーション、NOC支援の重要性の説明(相互協力については検討が必要)などの実施計画を立て、すでに取り組みを始めている。
競技プログラム
競技プログラムの検討/2005年大会競技プログラム案
ワールドゲームズ2001年秋田大会で使用された競技プログラム、およびワールドゲームズ競技プログラムの原則について検討する必要がある(例えば、動力装置のついた乗り物を用いた競技の実施など)。
参加競技プログラムについて
現在の競技プログラムは、かなりヨーロッパ系に偏重している(下表参照)が、それは大会の発展過程の結果であり、今日の成功において重要な点である。これはまた、参加国の財政事情にも関係があるだろう。競技プログラムの見直しの際、この点は考慮されるべきであり、現在参加している各NOCの事情とも関わっているであろう。
大陸名 |
参加国数 |
競技数 |
アフリカ |
7 |
19 |
(南ア=10) |
アメリカ |
16 |
73 |
(北米+カナダ=32) |
アジア |
16 |
93 |
(日本=30) |
ヨーロッパ |
43 |
263 |
  |
オセアニア |
8 |
34 |
(豪州+ニュージーランド=27) |
競技日程
競技日程は、日毎の配分および競技時間の設定にいくらか不均衡があるので修正する必要があろう。放送、集客、輸送、会場への影響等を考慮し、日程を最大限有効とするためにも見直す必要があるのではないかと思われる。
競技の要素
競技形態
いくつかの競技においては、運営方法の見直しが必要がある。競技時間が非常に短く、金メダルを授与するに十分に値しない競技があるからである。例えば、空手競技では階級(体重)毎に6人の選手(3人ずつ2グループ)が対戦するが、これでは2試合勝つだけで決勝へ進出できる。
また、エアロビックでは、8選手/団体が1分30秒の規定の競技時間内で演技することになっているが、金メダル獲得までにこの1回、1分半の演技だけでよいことになる。
競技とIFとの集権化された統一性
ワールドゲームズの初期発展段階では、組織委員会の責務は競技レベルで良い大会を開催することであった。しかし、今日では様々な組織的要素の統合された形が要求されている(例えば、競技運営や演出、視覚的演出、競技の開始式、選手及び観客へのサービス、設備や競技運営上要求されるもの、など)。統一され集中されるべき組織的要素は慎重な検討が必要であり、各IFやIWGA、それに大会組織委員会に対し、過重な費用負担なしでどこまで実現できるかという視点が要求される。
広域開催
秋田では、競技会場が広範囲に分散した。それは政治的理由に加え、開催市町村が組織委員会に対し設備やサービスを無料で提供するなどの要因があったからである。それはまた、ワールドゲームズの「既存の施設を利用する」という理念を反映したものでもあった。しかし、移動時間の問題は、参加選手が他の競技を観戦する機会を妨げることになった感は否めず、今後のワールドゲームズにおいて検討されるべき点であろう。
競技開始式
各競技は会場毎それぞれに開始式を行った。これは各IFにとって独自の式典を自ら演出する良い機会であった。将来、総合開会式で競技団体毎ではなく国別に選手の入場行進が行われるようになった場合に、これは重要な経験となるからである。
屋外の競技会場の場合、IFは選手の要望をよく心に留めておく必要がある。例えば、開始式で、選手達を暑い屋外に立たせたままにしておくことの無いようにすべきである。スポールブールの開始式は炎天下で長時間にわたり、選手達には明らかに気の毒だった。
言語
競技会場内でどの言語を使用するかは、それぞれ競技に委ねられると思われる。大部分は英語を使用していたが、スポールブールの開始式では終始フランス語と日本語を使用していたため、選手の多くは何が話されているか良く分からない状態であった。これは(大会の)一貫性と各競技毎の伝統とのバランスを取ることの難しさを示した一例である。
演出/競技実施
競技の演出の基準や程度は競技間で様々であり、それは基本的に各IFの個性による。2005年デュイスブルク大会でのイメージや統一性を確立するためには、より一貫性のある取り組み方が必要であろう。
競技に関する技術的要素
いくつかの競技団体は、秋田の組織委員会からの強い要望で、通常このレベルの大会では受け入れがたい技術面での妥協を強いられたとコメントしていた。各IFから、どのような技術的情報の提供をいつ受けたか、関連するNFあるいはIFのTDがどのようにフォローしたか、という点の理解が必要ではないだろうか。
ユニホームの表出/統一性
選手のユニホームはバラバラで、必ずしもすべての選手が出身国を示すユニホームを着用しているわけでもなかった。将来のワールドゲームズにおいては、大会の視覚的な統一性をアピールするために、各参加選手のユニホームにワールドゲームズのロゴマークを一時的に付けるなどの措置を検討する余地がある。
表彰式
表彰式のリハーサルが不十分であっため、進行に遅れが出たり、時には出来栄えがあまり良くない場合もあった。すべての競技の表彰式において共通の演出様式を採用する(音楽、式次第、場内放送等)ことを検討すべきであろう。遠隔地会場で行われたいくつかの競技の表彰式会場としてワールドゲームズ・プラザを使用したことは、観衆を集め、他の競技の選手等も参加する機会を得たという点で非常に成功したものと言えよう。
競技会場の「装飾」
各競技会場の装飾は大変素晴らしいものであった。すべての競技会場ではその競技に参加する国々の旗が掲げられており、式典旗 (IWGA旗、日本国旗、IOC旗) も同様であった。
一点注目すべき事は、競技会場における看板である。メディアへの露出を増やす目的のためか、秋田で放映された映像において頻繁に放映されたのは競技会場内のスポンサー看板であった。大会への注目度を高めるとともに拡大するメディアへの露出度を利用するためには、今後、競技会場におけるIWGAロゴあるいは大会ロゴの使い方が重要になるであろう。
開催都市について
大会の装飾
市内の装飾は目を見張るほどであった。開催市町村と秋田県は街並み装飾に多額の費用を費やしていた。すべての幹線道路には旗が掲げられ、大会看板がいたるところに掲げられていた。
ワールドゲームズ・プラザ
ワールドゲームズ・プラザは秋田大会においてうまく機能した素晴らしい概念である。メイン・ホテルに隣接した市中心部に位置し、競技会場にも隣接している。プラザは、多目的広場として使用されるには最適である。大会に関係するグッズの販売、音楽、文化交流センター、表彰式会場、選手・役員やサポーターの交流の場所としても利用された。これは、選手達の交流の場でもある選手村がないため、特に重要なことである。運営時間は、この施設を最大限利用するためにも秋田大会より延長すべきと思われるが、ドイツでは問題ないであろう。
地域住民との交流
競技 (団体) と地域住民との交流事業は特筆すべきである。特に、団体競技の特定チームと小中学校の生徒との交流である。いくつかの競技の中からある学校が特定のチームを選び、その競技やその(チームの)国について学んだり、そのチームの出場する試合に観戦に行ったりする。反対に、いくつかのチームが学校を訪れ子供たちと交流する時間をもつことによって、子供達のワールドゲームズに関する経験を非常に高めることとなる。我々が話した多くの選手から聞かされた。
学校の生徒が観戦することが競技会場の雰囲気を盛り上げることになり (そうでなければ多くの場合盛り上がりに欠けるのだが)、地域住民に忘れられない印象を残すこととなった。これがワールドゲームズのこれから向かうべき方向の一つになり得るのではないだろうか。
ドーピング検査
WADA (世界アンチ・ドーピング機関) 視察者
WADAの大会視察担当者とIWGAの医事委員代表者との間で連絡調整に問題があった。特に、大会前とWADA視察者の秋田到着前における連絡に関してである。
より大きな問題として、WADAはIFとの連絡事項について回答しておらず、競技日外検査に関してIFとの書面での合意がまだなされていないように思われる、というコメントがかなりのIFから寄せられている。
ドーピング検査手続き
検査手続きはIOC公認の東京の検査機関で行われた。ドーピング検査で不正行為が発生したが、これについてはIWGAの医事委員会によってフォローアップされている。補足事項はIOCから提供されるであろう。
選手教育
選手に対する薬物防止教育、特にドーピング検査に関し良く理解していないように思われるいくつかの競技団体の若手選手への教育が必要であるという指摘がある。2005年大会に関しては、大会前に選手へ提供される情報について再検討されるべきであろう。
放送・メディア
放送権
AOCは放送権を所有し、その販売をTWIに委託した。NHKはAOCから国内放送権を購入し、AOCはNHKに対して番組製作費を支払った。全ての競技が収録され、NHKは毎夜約1時間のハイライト番組を放映した。内容は非常によかったが、放映時間帯が遅かった(およそ23時から1時の間)。
TWIは国際映像の販売で最良の結果を出すことはできなかった。ユーロスポーツはハイライト番組の放送権獲得を望んでいたが、TWIと他社との契約関係のため断念せざるを得ず、今後オリンピック関連プログラムの一部として以外には紹介することはできないだろう。
ワールドゲームズの認知度を向上させるためには、露出頻度を増すことが大切である。各国で自国の選手やチームを露出させることが宣伝となり、今後NOC支援の呼び水となるだろう。
広報運営
約100社のメディア関係者が資格審査されたが、その中で約20社が海外からの来訪社であった(移動距離や渡航費用が障害となり、数が少なかった)。国内の新聞や放送による報道はすばらしいものであった。欧州やアメリカでもそうした状況となることを期待している。メーンプレスセンターは24時間体制で運営され、各会場にもプレスセンターが設置された。
インターネット
大会用に詳細なサイトが設置され、毎日の競技結果やニュースを発信した。
大会後のレポート
第6回大会を評価するためには、各IFや参加チームの話を聞くのが重要であろう。次の大会では、参加各IFに対し所定の報告用紙で提出もらうほか、会場や宿泊施設に関して選手からも感想を提出してもらうための様式を作るのが良いだろう。
秋田大会組織委員会は2001年11月にシンガポールで開催されるGAISF総会の際、IWGA年次総会において最終報告を行う予定である。
(この報告書は2001年11月、シンガポールでのIWGA総会で行われた。訳責はAOCにある。なお報告者マッコーネルさんは8月15日から22日まで秋田大会を視察した)
財務報告
1.大会運営費
第6回ワールドゲームズの総事業費は、1996年10月の開催決定時点で招致委員会では11億円と試算していたが、1997年6月の組織委員会設立時に開催契約当事者である秋田県は15億円程度になるという見通しを示した。
1998年3月24日財団法人秋田ワールドゲームズ2001組織委員会(AOC)の設立を契機として、AOCは本格的な事業費の積算を行い、同年7月に策定した基本計画において大会運営費を15億円とした。
2.財政計画の策定
大会運営に必要な費用は、行政(秋田県及び開催市町村)からの負担金、各種団体からの助成金などのほか、入場券料、企業等からの協賛金、放映権料、商品化権料などによりまかなうこととし、行政負担金を7億5千万円、他の収入を民間分として7億5千万円を確保することが明記された。
3.財政計画の見直し
1999年度にAOCは詳細な実施計画策定作業に着手したが、総事業費が財政計画を大幅に上回る25億5千万円程度になることが明らかとなった。そのためAOCは開催当事者である秋田県と負担等について協議し、県に財政支援を要請するに至った。
県議会において総事業費の妥当性と負担のあり方について活発な議論が行われたが、総事業費を23億円、増額分8億円については県が負担することで決着した。
その後、民間と行政が一体となった大会運営を進め、協賛金収入の増加とこれに伴う経費の増加が明らかになったため、2000年度末に総事業費を23億5千万円に変更し、了承された。
大会総事業費決算見込額 単位:百万円
収入区分 |
1997年度 |
1998年度 |
1999年度 |
2000年度 |
2001年度 |
合計 |
備 考 |
行政負担金 |
79 |
104 |
132 |
269 |
965 |
1,549 |
県 1,371、市町村 178 |
協賛金収入 |
2 |
1 |
1 |
80 |
374 |
458 |
  |
入場券収入 |
  |
  |
  |
  |
133 |
133 |
  |
助成金収入 |
  |
  |
  |
97 |
80 |
177 |
  |
寄付金収入 |
5 |
29 |
74 |
20 |
14 |
142 |
  |
その他の収入 |
3 |
1 |
3 |
6 |
30 |
43 |
基本財産運用、事業収入、雑収入 |
収入合計 |
89 |
135 |
210 |
472 |
1,596 |
2,502 |
  |
単位:百万円
支出区分 |
1997年度 |
1998年度 |
1999年度 |
2000年度 |
2001年度 |
合計 |
備 考 |
組織委員会運営費 |
35 |
43 |
52 |
73 |
108 |
311 |
  |
宣伝広告費 |
27 |
36 |
37 |
55 |
30 |
185 |
  |
マーケティング費 |
0 |
0 |
6 |
49 |
199 |
254 |
  |
大会準備費 |
19 |
8 |
19 |
17 |
104 |
167 |
  |
大会運営費 |
0 |
0 |
0 |
82 |
1,153 |
1,235 |
  |
交通対策費 |
0 |
0 |
0 |
0 |
98 |
98 |
  |
支出合計 |
81 |
87 |
114 |
276 |
1,692 |
2,250 |
  |